エリートパニック

5月の最後の日、朝日新聞文化面「甲乙閑話」
『災害ユートピアが紹介された。


タイトルは、
パニックになるのは誰なのか

本書『災害ユートピア』に明記されている
「エリートパニック」について話を展開し
ている。


著者である、レベッカ・ソルニットさんは、
サンフランシスコ地震ハリファックス
爆発、メキシコシティ地震、ロンドン大
空襲、ハリケーンカトリーナ、スマイリー
原発事故、関東大震災、9.11など、
地震、大洪水、巨大なテロなどが起こっ
たときに、当事者である人々がどうような
行動をとったかを綿密に調べ上げ、その上
で、権力者、軍関係者、政治家、知識人な
どのエリートたちが
「住民がパニックを起こすのではないか」
という恐れから起こすパニック、つまり
「エリートパニック」についても解説して
いるのだ。

本書は、東日本大震災の3カ月前に発刊さ
れた。
正直に言うと、初版は3000部という少部数
からのスタートだった。
書評等にも取り上げられたが、前回のブロ
グで書いたように、それだけでは本は売れ
てはくれない。
その上、400ページを越える分量で、2500
円という値段設定。
はっきり言って、ごんごん売れる本ではな
い。

しかし震災のあと、さらに書評等が重なり
口コミで広がり、現在4刷とあいなった。
ツイッター等でも「エリートパニック」と
いう言葉が飛び交っている。

担当編集者に「売れてよかったですね」と
誰かが言った。
編集者は、丸い顔の中にある細い目で(失
礼)少し遠くを見て、
「微妙だよね。こんなことになるとは思っ
ていなかったもん。あんまり、うれしくな
いな」と。

この編集者、本書をはじめ亜紀書房の一連
翻訳ノンフィクションシリーズを一手に
手掛けている。

編集一筋、酒飲みらしいが、組織の役職と
か力関係とか、そのようなものには一切興
味がない。いい本を作りたい意欲だけがふ
つふつと沸き立っているのが、私からも見
える。

興味がある方は、亜紀書房HPの翻訳ノンフ
ィクションシリーズを見てみていただきた
い。

http://www.akishobo.com/blog/nonfiction/

装幀をみていただくだけでも、タイトルを
見ていただくだけでも、わかる人にはわか
る骨のある本ばかりである。


最近は、さらりと読める軽い、スカスカの
本が売れやすい。みな忙しいのだろう。つ
かまなければならない情報がたくさんある。
しかしながら、たまにはじっくり腰を据え
て読む本も選んでほしい、私は近頃、心か
らそう思う。

この編集者がこの秋、翻訳ノンフィクショ
ンの新刊をまたも手掛ける。この新刊の発
売時に、「亜紀書房 翻訳ノンフィクショ
ン フェア」
したい! その時期がきまし
たら、またお知らせします。