ゴフマンのアイデンティティ管理の戦略

「脱アイデンティティ」を読み出す。
私が、あほなため、意味不明な箇所も多いがなかなか面白い。


序章で引用された、ゴフマンの「スティグマ社会学」で論じられた「傷つけられたアイデンティティ stigmatized identity」(直訳すれば、レッテル貼りされたアイデンティティ?、すなわち社会的マイノリティ)の持ち主が行う、アイデンティティ管理の戦略が興味深い。


(1)印象操作
社会的アイデンティティの加工や擬装工作。
「なりすましpassing」という隠蔽が含まれる。
外見からはわからないユダヤ人、在日の人々、ゲイやレズビアンには適用されるが黒人や女性には採用が難しい戦略。


(2)補償努力
ひとつの社会的アイデンティティにおけるマイナスを他の社会的アイデンティティにおいて補償する戦略。
「黒人なのに教養がある」「男社会で名誉男性扱いされるエリート女性」、など。
帰属集団から自分だけ一抜けするための戦略。
準拠集団からも疎外され帰属集団からも排除されて、孤立を味わう結果になる。


(3)開き直り
「ブラック・イズ・ビューティフル」「無力な自己を受け入れるAA」など。
カテゴリーの定義を受け入れたうえでそのまま価値を反転する戦略である。
カテゴリーの政治に陥る限界も持っている。


(4)価値剥奪
より相対的に弱者である社会的カテゴリーの人々の価値を奪うことによって自らの社会的アイデンティティを高める「差別」化戦略。

脱アイデンティティ

脱アイデンティティ

スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ

スティグマの社会学―烙印を押されたアイデンティティ

放送の甲子園、10年ぶりに出場 城陽高校放送部

http://www.rakutai.co.jp/news/0614/001.html
2006年6月14日洛南タイムス


放送の甲子園、10年ぶりに出場
城陽高校放送部
顧問の胸の内、ラジオ番組に


 府立城陽高校の放送部(村田香菜部長、8人)が性同一性障害をテーマにしたラジオドキュメントで「放送の甲子園」ともいえる第53回NHK杯全国高校放送コンテストに出場することになった。制作したドキュメント番組は性別を超えて生きる人――を総称する「トランスジェンダー」を告白した放送部顧問の土肥(どひ)いつき教諭の胸の内に迫ったもので、生徒と教師との構えず飾らない会話が聞く者の心に迫る。

 同校放送部は創作ドラマ1996年に全国大会に出場しており、放送の甲子園は10年ぶりの出場となる。
 顧問の土肥先生(44)は同志社大学を卒業し、高校の数学の先生として同校に勤務。放送部の顧問は今年で22年目という。
 8年前までヒゲをたくわえた「男」の先生だった土肥先生が、自らの存在を正面から受け止め、医学用語の「性同一性障害」よりもはるかに違和感なく名乗れるという「トランスジェンダーとしての自分」を肯定できるようになったのは7年前のこと。
 こうした心の葛藤にさほど違和感なく接してきたのが他ならぬ放送部の部員たち。毎年恒例の放送部の合宿には現役とOBが相集い、顧問の土肥先生を囲んで時に朝まで話し合うというよき伝統がある。
 裁判所の審理を経て名前も改名し、自らのありようと正面から向き合う先生と「彼女」を支える生徒については昨年に婦人月刊誌も取材に訪れて特集で紹介した。
 「顧問をネタ」にした番組制作はコンテストのひと月前に急浮上した。昨年はギリギリまでテーマが決まらず、コンテストにエントリーできずという苦杯をなめただけに、「とりあえず作ろう」と、松村優子さん(3年)らが中心に台本制作から着手した。
 ランニングを日課にする土肥先生だが、女性更衣室で着替えるには周囲への遠慮があり、ランニング前の着替えは放送室が長年の定番。
 「何で放送室で着替えるの?」「男が女になるとはどういうこと?」で始まる番組では「女装」にあこがれた子どもの頃からの悩み、心の転機、生物学的な性と異なる性へ向き合うなかで待ち構えていた周囲の反応、興味本位に見られることへの怒り、何よりも支えとなった家族の理解…などについて生徒と土肥先生との会話が続き、フィナーレは「けれども私たちの“どっひー”(土肥先生の愛称)は“どっひー”だ」という生徒の言葉で締めくくっている。
 テレビドラマの影響もあり、性同一性障害という言葉が少しは市民権を得て来たとはいえ、自らの性のありようをテーマに番組をつくるにはまだまだハードルは高い。
 教え子の質問に対し、自分の心の軌跡を淡々と語った土肥さんは「ここ(放送部)は私のありようを卒業生も含めて自然に受け止めてくれる」と話し、生徒との共作ともいえる異色の作品の誕生にしみじみ。
 東京で開く全国コンテストは7月24日〜27日まで。2年生部長の村田さんや松村さんは「全国の空気に触れるのが今から楽しみ」と意気軒高だ。【岡本幸一】