しばらくR30さんのところにおじゃましてしまった

そして、ようやくこうして自分の家に帰ってきた。
とおりすがるつもりが居座り君となってしまったが、R30さんの頭ごしに議論を交わすのは滞在中から大変申し訳なく思っていた訳で、これで最後と宣言して帰ってきたものの、議論は続くよどこまでもということで、今後は自分なりの考えやコメントはここで表明してトラックバックすることにした。
それにしても、R30さん、留守中にもかかわらずご迷惑をおかけしました。
とここで、これ書いてて気づいたのだが、さすがR30さん、はてなダイアリーキーワード登録されているんですね。
えーと、しばらくお世話になった話題は、
出産育児手当は少子化対策になる…わけねーだろ: R30::マーケティング社会時評

天下の暴論的少子化対策のアイデア: R30::マーケティング社会時評
です。

 NILさんへのお返事

AERAが入手できない - お金について考えたことというお返事をいただいたようなので
R30さんのところの少子化議論の中で、本論からはずれるのだが、ひょんなことから、フランスの託児事情について議論になった。フランス在住の身としてはこの内容はちょっと譲れないので、反論(但し一部同意)を書こうと思うのだが、その前にもうひとつ話が残っていた。(詳しくは出産育児手当は少子化対策になる…わけねーだろ: R30::マーケティング社会時評のコメント欄をご覧ください。)
それは、

「飯詰籠児(いづめこ)っていつの時代の話ですか」というこちらからの質問に、
「あと「いづめこ」の話とかは、昭和30年代生まれの知人に聞いた話です。」とのお答えを頂いた件。

「いづめこ」調べましたよ、今はいづめこ人形という民芸品としてしか残っていないとか。山形の庄内地方の話で、何でも江戸時代に藁で編んだお椀型のご飯の保温用籠に幼児を入れて育てたのが始まりだとかで、それが幼児用のベッド(フランスの似たようなのというとクーハンかなぁ)として広まっていったらしいのだけど、大正時代には玩具として作られるようになったって話。大正時代には玩具ですよ、玩具。あと、庄内地方の人は「いづめこ」とは発音せずに、なんか方言があるらしい。(見たけど、コピるの忘れた。)
東北地方の厳しい冬の寒い時期に、今と違ってろくな暖房設備もないような時代、赤ちゃんを寒さから守る(保温の)ために籠にくるんで入れていたって話で、 「保育問題の発生しようがありません」というのとは次元の違う話のようですね。
これで一つ物知りになりましたってそういうことではなく、不確かな情報での反論はお互い極力避けましょう(笑)。

さて、本論。

フランス事情ですが、とりあえず、次の3種の資料をご参考にしてください。(1997年の本はいくらなんでもちと古すぎです。統計データはおそらく約10年前のものじゃないでしょうか。)
厚生労働省「2003〜2004 海外情勢報告」について
在仏日本大使館のこのページ(http://www.ambafrance-jp.org/japanese/info_generales_j/alacarte_j/info_france/index.html)の中で、フランスの家族政策を選んでください。ワード文書です。
もうひとつ、在仏日本大使館のこの資料(http://www.ambafrance-jp.org/japanese/info_generales_j/alacarte_j/statistique/tef2004kanseiban.pdf
それから以前に紹介した2つのサイトはフランス居住者の入門サイトというか最も頼りになる超有名サイトなのですよ。
ホームページ移転のお知らせ - Yahoo!ジオシティーズ
http://hiyokowine.hp.infoseek.co.jp/school.html

それでは説明します。
まず対象人数計算ですが、
2歳児の35%は幼稚園に、また、55%は専業もしくは休職中の主婦ですから、該当者は75万人×10%=75,000人。
1歳時では、60%が専業もしくは休職中の主婦ですので、
該当児童は75万人×40%=30万人
0歳時は、生まれて6ヶ月はほぼ100%休職し、残り6ヶ月も職業を持つ約半数が休職する。つまり、75万人×0.5×0.5=187,500人。
すると、合計は562,500人なんですね。
1995年当時のキャパでも 126800+60100+65300=252,200人のキャパがあった上に、聞くところによると現在はその2倍以上のキャパがあるそうなので、50万人以上とほぼ足りている状況です。
じゃあ何でフランス政府は、「2万ヶ所の託児所増設に向けて2億ユーロの「託児所計画」」に着手したかというと、
(1)今後の女性の就業率の上昇
(2)専業主婦のお子さんの保育
(3)特殊出生率2以上を目標とした誕生数の増加(15万-20万人の増加)
を見込んでいるのと、
現在の保育ママさんや幼稚園補助者さんたちの職業地位向上(職業資格の付与や新たな資格の創設)とニーズ増によるさらなる雇用創成(現在比75%増)を計算に入れているからだそうです。
(2万ヶ所といっても1ヶ所平均収容10人程度なので、20万人のキャパ増なんですよ。)
なので、最初のご指摘の

フランスには三歳未満児が対象となる保育施設はほとんどありません。認可保育ママも一握りです

というのは、ちょっとこれは極端すぎる言い方ですよねということと、実際こちらで入園待ちで仕事が出来ないなんていう社会問題は起こっていませんということをきちんとお伝えすればよかったですね。
私の表現もみんな託児所に入れるような表現になってしまっていたので、少々語弊があったかと反省しています。
ただ、不思議なことに、この認可保育ママさんの人気が高く、かなりすんなり希望通り託児所に皆さん入れてしまっていることも一方で事実としてあります。

それと、小学校までの保育制度ですが、5年ぐらい前まではNILさんが整理されたような体系だったのですが、現在はちょっと違ってきています。

  • 日本の幼稚園(その1)=ecole materenlle(3歳になる年の2歳−6歳対象)、公立は無料、時間が短い。水、土、日曜休み。専業主婦(夫)向き。給食は任意。
  • 日本の幼稚園(その2)=jardin d'enfants(2歳ー6歳)、無料、時間長い、共働き向き、水曜クラスあり。給食(有料)。午前だけ、午後だけも可。厚生省管轄。
  • 日本の小さい子保育園=creche(0−2歳)集団託児所、ミニ託児所、保育ママ預かりなど形態はいろいろ。共働き向き。
  • 日本の託児所=garderie(0−6歳)0−2歳は毎日クラスあり。3歳以上も水曜クラスや土曜クラス、不定期な一時預かりなど。有料。
  • 日本の保育園=多目的託児所creche+garderie(0−6歳)このタイプが1990年から急増、都市部に多い。共働き優先。
  • そして、最後に幼稚園の送り迎え+両親の帰宅までの面倒を見ているのが、いわゆる無認可ママ、もしくはベビーシッターさんで、夜間のコンサートや観劇、映画、食事に行ったりする場合の利用もこのタイプが多い。

(資料は住民配布用の地域の役所のパンフレットなので、提供できません、ごめんなさい。)

あと、気になったところをいくつか列挙。
1.医療については、発熱の場合など、1日24時間SOSコールをすれば、近隣の地域登録小児科専門医が往診に来てくれます。かなり悪い場合は医師つき救急車を呼ぶこともできます。なので、具合の悪いときにわざわざ病院に通う必要はありません。それと、どこでも大概予約制なので、診察で待たされることもありません。幼児で病院に行く場合は、予防接種や定期検診などの病気や怪我ではない場合、往診では持ち運べない医療器材を使用しなければならない(眼科や外科、歯科など)場合です。
2.父親に2週間の産休というのは、正確には父性休暇でして完全な有給休暇です。育児休業とは違います。その他、妻の介護休暇取得や只でさえ短い労働時間(1日拘束7時間)の短縮、無給休暇、職種によっては在宅勤務など、さまざまなオプションが用意されていますので、その点では比べ物になりません。それと日本と違って通勤時間が平均30分を切っていますので、その点も大きいです。
3.バカンスに子供を連れて行かないなんて誰が言ってるんですか。フランス人の多くは、車で実家に帰ったり、海辺のコテージを借りたりするケースが大半で、都市部はほんとに人がいなくなるんですよ。家族全員民族大移動です。リンク先のバカンスのところを見てみてください。
0−3歳児を預かってくれるところなんてありません。但し、教育の一環として、サマーキャンプやバカンスセンター(対象は4−6歳)に預ける場合もあります。これにはリゾート地のキッズプログラムも含まれます。
4.「育児や家事サービスのかなりは移民がやっているようだ。」というのも正確には間違いです。アフリカ系フランス人が従事しているケースが多いだけです。逆に永住権のみのケースが多い中国、ベトナム、アラブ系の人々がこれらの職業についているケースを知りません。言葉や生活習慣、宗教上の理由等育児や家事を行うにあたり難しいことが多いのですよ。また、名前で出身がわかってしまうため、彼らは就職にも別名を使うほど職業機会に厳しい状況です。

最後に「フランスの家族政策」の最後にある2003年家族政策に関する15の措置を読んで頂いたらわかるように、日本とは比べものにならないくらいの手当が支給されるのです、フランスでは。
税制や年金の超優遇に加え、最低でも3歳までは、最低160ユーロ(+職業中断の場合さらに340ユーロ加算)+選択した保育形式による付加給付(つまり、保育費用は無料に)の3点セットです。
さらに教育費は高等教育も含め無料ですから、親の負担は極めて低く、さらには、祖父母から孫への財産分与も親に分与するよりもかなりの優遇措置をしているのです。
その結果、早い時期からの親と別居を開始しやすくなり、20代の独身女性の一人住まいは70%を遙かに超えています。これはそれだけ消費活動を促進し、フランスの内需が活発な理由にもなっているのです。
ただ単純に「カネやるから子供産みなさい」という制度ではなく、
「生まれてくる子供が一人前になるまでの経費は、出来る限り責任を持って国(=国民全員)で負担する」
という制度なのです。
「だから、親も安心して子供がいないときと同様に自分の生活を楽しんでくださいよ」
という精神なのですよ、根底にあるのは。

 ぎょろさんのコメントへのお返事

同じくR30さんところでの
天下の暴論的少子化対策のアイデア: R30::マーケティング社会時評のコメント欄で暖かく突っ込まれていることについてレスをしよう思ったけど、さすがに力尽きた。
また、明日にでも書きます。

 暖かい一日です。

ここ数日とても暖かい日々が続いています。
おそらく東京よりも最高気温が高い日が続いているようです。
欧州は英国、北欧諸国などが、先週末の嵐でかなりの被害を受けているようです。
北欧の方はバカンスで訪れたインド洋方面で大津波に見舞われ、自国もあらしによる高波や浸水とまるで波に捉えられてしまったかのようで、神よなんという試練を我々に与えるのだと嘆いているようでもあります。
津波の原因となった地震のエネルギーは地球全体を2週間以上も揺り動かし続けたとのことで、改めて自然のエネルギーの大きさにただただ呆然と立ち尽くすのみです。
はてなも機能がいろいろ増えたというか変更があったみたいなので、設定をいじくってみようかと考えているところなのですが、未だ年末進行継続中ということで、心には余裕がありません。自業自得なところも多いのですが...。

 TBとコメント

最近の感想として、ブログで議論をする場合は、
・1対1の討論ならばトラックバックの応酬が機能として向いているようですし
・1対他、他対他のような対面会議で言えばラウンドテーブルのような議論の場合、コメント欄で行うと方が議論が円滑に進むようですね。
もちろんお前誰とかいう点はブログ対ブログで行った方がいろいろ付随情報もあったり、どんな感じの人からのTBなのかわかったりして、少し安心感があるのと、着実に相手にコメントを伝えることができるというメリットがあるようですが。
そういった意味で時間をかけてじっくりと議論をまわしていくならばTBなのかなぁ。
だけど、がーと熱いうちに議論をしてしまおうなんて時はコメント欄ですかね。
そのあたり、http://kiri.jblog.org/の姿が理想的なのかな、形態面で見れば。