本調子から上り調子に


おシゴトで首都圏まで出かけた翌日、最近ちょっと小耳にはさんだラッキーグッズを手に入れようと銚子まで足を延ばした。
そう、あの銚子電鉄のキップなのだ。

本銚子(もとちょうし)駅から銚子までの上り線切符が“本調子から上り調子”と読める縁起の良さが人気を呼んで話題になっているのね。
駅の売店では赤字脱出の切り札になった同電鉄名物「ヌレせんべい」も購入し、モクテキは無事達成されたのだ。

ついでに回った犬吠埼では灯台に上って円い地平線を確認、快晴の眺望は素晴らしく久しぶりに見た碧く美しい海の色が強く印象に残ってはいるが、お天気が良すぎて異常な暑さに訪れる誰しもがアセをフキフキの実態なのよ。
早々にメガーヌに戻りやれやれと落ち着きを取り戻すとやはりと云うべきかハラが空いてきた。
銚子漁港まではわずかな距離で移動できるので魚市場近くの料理屋で昼食を…とクルマを走らせるが、途中で“磯がき”という幟をいくつも目にして「もしかして…」との期待が胸を膨らませる。
新鮮な魚介の刺身や煮魚をセットした膳を注文し、オプションで“焼き磯がき”を欲張ってしまった。いわゆる岩牡蠣で夏場に食べられるカキとして市場では日本海産が高価な流通をしているが、ここ外房で出会うとは思ってもみなかった。
大人の掌ほどもある殻にプックリと海の滋味を蓄えた磯ガキ、バックリと食いつけば素晴らしい味と香りに無上の喜びを満喫する。あ〜クルマじゃなかったら冷酒も…などと限りないヨクボーも浮かび上がっては来てしまうが。
今が最盛期、しかも今年は特に生育がよいという幸運に恵まれ、ますます上り銚子じゃなくって上り調子に弾みがついた昨日なのである。

 イタリアン「OREAJI」


石窯焼のナポリピッツァを楽しめる、というコトで選んだお店「OREAJI」は大竹浩史氏がプロデュースする気鋭のイタリアンである。
ディナータイムは30種類以上のピッツァやユニークなパスタを楽しめるようであるが、ランチは絞り込んだメニューとアンティパストやドルチェのコンビネーションでバリュー感を打ち出し人気がある。
本当はマルゲリータを食してその実力のベースを感じ取りたかったのだが、今回はなぜか気になった『オイルサーディンとモツァレラチーズのピッツァ』を注文してしまった。
オーダー毎に生地を延ばし石窯で焼き上げる手順が守られ、ウッドボードに乗せられて客席まで運ばれる。そしてカメリエーレがその場で切り目をつけてテーブルに置いてゆく…というスタイルが新鮮だ。
そんなコトより、トマトソースを使わないこのピッツァの美味しさといったらもう!
フェンネルが切れ込みの良い香りと酸味を加え、サーディンとチーズがこんなに仲良く仕事をしてくれるとは思わなかった。
やっぱりワインが欲しいよね〜なのだ。

もう一つのメインディッシュは『鴨のローストと葱のパスタ・バルサミコソース』だが、何しろ驚いたのはスパゲッティーニというさほど細くもないロングパスタを使っているにも関わらず、冷製に仕立ててあるコトだ。
フツーはフェデリーニなどの極細を用いるが、セオリーに反してこの太さを使用するワケは食べてみて初めて解る。
しっかり濃厚な鴨肉の風味とスライスの厚み、そして葱のジャキッとした歯ごたえにフェデリーニでは負けてしまう。同時に口に入れ噛み味わうときのバランスはやはりこれくらいの太さとハリが必要で、並の料理人には思いもつかない至極のワザだろう。
カメリエーレに聞けば、真冬でもこの冷製パスタは人気があるという。ナルホド、このパスタなら料理人の熱意が“温度ではない温かさとエネルギー”で食す人の五感を満足させるのかもしれない。
バルサミコが主体のソースではあるが程よい酸味と蜂蜜のような甘みがわずかに見え隠れする微妙なセッティングに、ただただ驚嘆するばかりの一皿なのであった。


イタリアン・レストラン「OREAJI
http://www.oreaji.com/