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ハイカロリー

Shin Yamagata

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2018-05-21

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4月1日

桜が咲くと同時に出はじめた柿の葉は日に日に大きくなっていて、すでに一番いいときを通り越しつつある。一番いいときというのは枝先に黄緑の新芽がちょぼちょぼと出てきて、例えるなら柿の木に大きめの緑のイボができました、くらいのときで、新芽が葉の形になりはじめるともう普通の木に見えてきて、あれよあれよという間に枝が隠れるほど葉が大きくなってきてしまい、葉も濃くなり、その辺の木の中に埋もれて、どれが柿の木なのかあまり気にならなくなってしまう。その一瞬のときを

2018-05-19

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4月20日

久しぶりに来た中原という集落に人の気配がない。ついに誰もいなくなったのかと思って、てっぺんまで上って少し休んでゆっくりと下っていると、上の方から何かを引きずる音が聞こえてくる。見上げると背中の曲がったおばあさんが竹を引きずりながら石を組んだ急な階段をおりてくる。おりてくるのを待って聞くと、もうおばあさん一人しかここにはいないということだった。昨年の七月に旦那さんが亡くなったらしい。数年前に来たときにその旦那さんと話をしてジュースをもらったことをおばあさんに話すと、

2018-05-17

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3月30日

駅を降りてまず耳に飛び込んできたのがツバメの鳴き声だった。駅舎は人通りが多く屋根もあるからツバメにとっては外敵の心配が少ない安全な場所だと聞いたことがある。ツバメが飛び交うロータリーに車を待つ女が一人立っている。じっとスマートフォンを見てその場を動かない。駅前にコンビニはない。チェーン店の類もない。床屋と飲み屋とお菓子などが少し置いてある小さな店があるだけだ。道沿いのブロック塀の脇につくしが生えている。脇には背の低いたんぽぽが花を咲かせている。少し先のピンクの花は桃の木だろうか。左へ折れて

2018-05-15

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4月8日

眼下を飛んでいるのはツバメだろうか。ときどき白い腹を見せながら行ったり来たりを繰り返し、2匹がじゃれ合うように急接近したりもしている。枯れ草が覆う斜面に座って、鳥やちらっと見えている川を眺め、背後から聞こえるカワラヒラの鈴が鳴るような声に耳を澄ます。道路脇の電光掲示板に表示されていた6℃という気温も、ようやく顔を出した太陽のおかげで少しは上がっただろうか。まだ寒い。

2018-05-13

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12月3日

落ち葉を踏みしめて歩く。ときどき落ち葉を蹴り上げる。乾いた音と落ち葉の香りが体を包む。夏の間は鬱蒼としていた場所に光が差し込み、斜めの明るさが目の前を横切っている。冬だ、と思う。

2018-05-11

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7月5日

ファイニンガーとラルティーグの写真集を古本屋で。最近は最近の写真に興味が湧かず、昔に撮られた写真ばかりがおもしろい。でもそれは今にはじまったことではない。写真は時間が経てばどの写真もある程度はおもしろくなる。でもファイニンガーもラルティーグもただ古いからという理由で写真がおもしろいわけではない。現在の写真と比較すればそこに決定的な違いが見出される。それは

2018-05-09

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11月30日

小さな窓から立ち上る煙の向こうでは、肌が黒く口元にたっぷりと髭をたくわえた男が串に刺した鶏肉を慌ただしくひっくり返している。黄色い看板には見慣れない文字。真っ白に照らし出されるショーケースの中にはスマートフォンがずらりと並び、店頭にしゃがみこむ男と女がスマートフォンを触りながら鶏肉をかじっている。スマートフォンから顔をあげてこちらをじっと見る男を見ないようにして、男の脇をすり抜け店のドアを開ける。カウンターの中にいる店員はこちらを一瞥しただけで、客らしい男と聞きなれない言葉を使って会話を続けている。店内には見慣れない商品が棚を埋め尽くし、

2018-05-07

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2月28日

明日はきっと冬眠からカエルが出てきて産卵する。天気予報がそうなる天気を伝えている。四日ほど前からそうなるんじゃないかと思っていたけど、いよいよ明日こそがその日なのではないかと思っている。もしかしたら出てこないかもしれない。でもたぶん出てくる。小さな声で鳴いて、オスはとりあえず動くものに飛びついて、運が良ければそれがメスで、そのまま重なったカエルは歩いて水辺を目指す。途中で別のオスがさらに飛び乗ってくる。すでにメスに乗っているオスは後ろ足で乗ろうとするオスを蹴っ飛ばす。オスの前足はメスをがっちり掴んで離さない。メスはオスを何匹も背中に乗せたまま、

2018-05-03

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1月1日

朝からよく晴れていた。環八から富士山がくっきりと見えていた。富士山の手前にいつもあって、富士山の下の方をいつも隠している山は丹沢山地だということをつい先日調べてわかっているのだけど、名前がわかったところでその丹沢山地が神奈川のどの辺にあるとか、実際にはどんな山で構成されているとか、どんな木がはえているとか、何もわからないし、近くで見たわけでもなく、ああ、あれが丹沢山地か、と思うだけで、何かの手応えを得られるというわけではなかった。ひとまず言葉だけが手に入ったと言う感じだ。道路は空いていて青梅街道へ入ってもガラガラ、吉祥寺を通りかかってもガラガラ。公園を横切って川上弘美の日記に出てきた今はもう閉店してしまったスーパーの前も人通りがほとんどない。郵便局を過ぎて、

2018-05-01