最後の忠臣蔵


吉良亭討ち入りの後に、大石内蔵助から「生き延びて討ち入りの真実を赤穂の遺族たちに伝え、彼らの生活を助けよ」という命を受けた寺坂吉右衛門佐藤浩一)。
赤穂浪士の討ち入りから16年後、彼は最後の遺族を訪ね歩き、使命を果たした。

その後京都を訪れた寺坂は、討ち入りの前日に逃亡した瀬尾孫左衛門(役所広司)の姿を見かける。実は瀬尾も、大石から密命を与えられていて、生き延びていたのだった。
その密命とは、大石の隠し子を育て上げることだった…



観賞日


2010年12月18日

【75点】





日本映画業界全体をあげておこなわれてきた、
一連の大作時代劇映画の流れ。

最後を飾るのが、今作『最後の忠臣蔵』。

自分はこれまでの人生で時代劇に対して余り関心はなかったけれど、
今回をきっかけとして時代劇にも興味を持つようになってしまった訳です。

















日本人に愛されて、幾度も映像化されてきた「忠臣蔵」。

しかし、今回は今までの忠臣蔵とは一味違ったスタンスからの映画作品だ。



討ち入りそのものではなく、生き延びた男達の物語。

討ち入り後に切腹した者達は、そこで武士として全てを終えた。

しかし、「赤穂浪士の討ち入り」は生き残ったものたちに重くのしかかる。





遺族を尋ねまわる男、隠し子をひたすら育て上げた男。

16年。なんて長さだろう。

先に切腹し散っていった者たちと想いは同じにもかかわらず、
生き続け"なければならない"という苦しみと辛抱、後ろめたさ。














最後のラストには納得の出来ない方もいるだろう。
(出来とか物語とかじゃなくて、登場人物の選択が)

でも、それこそが武士か?忠義か?

主君への忠義という古くからの日本人の美徳センス。

この映画を観る上ではそのセンスに対しての、自分のスタンスを問われている気持ちになる。


「古臭い」。そう切り捨てるのは簡単だけど、それで良いのだろうか?

「コレこそ日本人だ!天晴れ!」そう心酔するのも簡単。でもそれは余りにも凝り固まっていないだろうか。

自分への自問自答が出来る、その意味で素晴らしい映画になったと思う。

















時代劇独特の美しさも今作の魅力。


まず、ところどころに挿入される人形浄瑠璃が心情を表現する。
見事な人形の動きと、独特の言い回し。
正直聞き取れないところもあったが、そこは何となくで乗り切れる(笑)。



だから、人物達は心情をむやみには口に出さない。
表情やしぐさ、背中で表現される。こちら(観客)は行間を読んで、想像しなければならない。いやむしろ、その作業が楽しいわけだが。

優しさや決意、悲しさなど様々な感情が滲み出て見えてくる。



行間を読ませる時間の長さや、回想シーンの使い回しが1回あったりと、
若干「んー」とは思った。そこで、ちょっと減点しました。



にしても役所広司の顔力には引くぐらいだった。

彼は仕える者として弱音を吐かず、忠義を尽くす真っ直ぐさを体現した。









風景もヤバイ。

一瞬一瞬が画のような美しさ。
全てが画になる「画」だ。

ロケはほとんど京都ロケらしいのだが、
こういったロケーションを持つ日本は凄いなぁとあらためて実感させられる。















個人的には、
ワーナーブラザーズからこの映画が生まれたことに対しての評価をすべきだと思う。
(偉そうでスイマセン)

製作総指揮がワーナーエンタテインメントジャパンの取締役のウィリアム・アイアトンで、世界に配給しようとしているらしい。

下記の動画リンク先コメントで、外国会社が忠臣蔵に触れるなみたいなコメントがあるが、
作っているのは角川映画で、あくまで日本映画だ。

時代の流れとしては当然の流れではあるが、ただただ世界へとバンバン配信するべきではない。垂れ流しにすれば、日本のコンテンツ力を見下げてみられてしまうだろうし、クオリティも下がっていく。






しかし、今回の映画から始まるのは大歓迎だ。

なぜなら今回の映画は、日本の時代劇の本懐ともいうべき、「忍耐」の物語で、
誇れるものだから。

是非、外国の方の反応をきいてみたい作品だ。

予告編はこちら