ヒアアフター


パリのキャスターでジャーナリストのマリー(セシル・ドル・フランス)は、休暇中に訪れていたリゾート地で津波に飲まれて、臨死体験をすることになる。なんとか助かった彼女だが、自身が味わった体験の中で見たモノが忘れられず、それが何かを突き止めようとする。

かつて霊能者として仕事をしていたジョージ(マット・デイモン)は、自らの能力に疲れて普通の生活をしようと努めていた。ふと通いだした料理教室で出会った女性としだいにいい雰囲気になっていく。

ロンドンで双子の兄と暮らしていた少年マーカスは、兄に降りかかった運命に対して衝撃を受ける。その衝撃に執着し、一人で何とかしようと行動を始めるのだが…

観賞日

2011年2月17日


【75点】






老いて尚盛んな巨匠なイーストウッド監督による最新作。
ちなみにヒアアフターは「来世」という意味。







まず、序盤の津波シーンは圧巻。そういうパニックものなのかと思うくらいの気合の入りようは、スピルバーグがプロデューサーとして関わっていたからか。

この最初のシーン周辺だけでもまさに観る価値のある映画です。


















今作を宗教色を出さずに描き切ったイーストウッドには感服せざるを得ない。
敢えて死後の世界をあまり具体的に描写せず、死後の世界に触れた・意識を持った人々がどう生活していくかを丁寧に描写しようという姿勢はクリントイーストウッドならではだろう。







星条旗硫黄島からそうだったが、彼の思考のニュートラルさはまさに天才だ。キリスト教アメリカ人が神から切り離して死生観を描き出す事がどれだけ難しいかは、これまでの他の映画が証明してきた。
大体の作品はどーしても胡散臭くなってしまうし、あまりにも宗教的過ぎてコチラの頭に入っては来にくい。




だが彼はやはり人間の内面の苦悩を描くことに関しては、まさにプロ。「許されざる者」、「父親達の星条旗」などのように具体的な文字にはせずとも役者の表情・しぐさと状況が全てを物語る。























問題はやはり、予告編の期待のさせかたのベクトルと実際の映画のベクトルが違った点か。あとこっちは死後の世界への考え方・解答を求めてる訳なんだけど、映画はあくまでも死よりも人の生き方を描こうとした点か。


完全にこちらの意図をスカされました。








そこが原因で私の斜め前の兄ちゃんも「駄作だな」とか言ってたのだろう。
まぁだったらこのテーマをあなたなら扱いきれますか?って事な訳で。
…私にゃ無理です。3人の視点とその周りの人々の考えを重層的にして、苦悩を描くなんて。




そしてバラバラの3人のストーリーが見事に収束していく。え?な部分も終盤にあったが、概ね満足な終盤ですた。なにより最後まで「いつ終わるのかな」だとか「飽きたな」と思わなかったところが重要だ。














ここで、図書館・情報学的にはブックフェアが鍵になるのが面白い。しかも最初はGoogle検索やらなんだか現代的テクノロジーが用いられてるのに対して、最終的なキーが近代の本とはなかなか粋な演出だ。(狙った訳じゃ無いだろうけど 笑)