レス返し:二次創作とかゲームブックとか

http://d.hatena.ne.jp/chon/20060709/p1に、id:guldeenさんからコメントをいただいたのでレス返し。

guldeen 『二次創作って、10代のコがハマるのは分かる気がしますわ。ちなみに高校生の頃に、伝説のゲームブックである「火吹き山の魔法使い」が出版されて、その世界観やゲーム性に驚愕した自分がおります。』

二次創作小説*1の訴求ポイントは、『原作の不満点を直截的に解消』『オレ設定を無節操に追加』『バリエーションを作る楽しみ』といったところでしょうか。それだけに、『魅力的だけど脇が甘い』作品が主題として好まれる傾向が強いですね。
あと、今は書き手読み手とも10代に限らず30代くらいまで幅広く分布しているようです。(40代に突入した書き手もいらっしゃるそうで。)
二次創作文化自体の発祥は、私自身もよく知らないのですが、おそらくは"OUT""ファンロード"辺りの『アニパロ』文化に原点があると考えてよいかと思います。(70年代後半〜80年代前半ぐらいから?)
ネットで二次創作小説を読み書きする文化自体の源流はNIFTY SERVE*2かPC VANでしょうから、80年代末〜90年代初頭にかけて。
実際に、ネットでの二次創作小説文化が隆盛を迎えるのは、新世紀エヴァンゲリオン放送終了以降*3ですから、95〜97年くらいからでしょうか。
そう考えると、90年代末に多感な時期をネットとアニメ・マンガ・ラノベに触れながら過ごした世代は、今20代前半〜20台半ばなわけで、そこをメインボリュームとして下は現在思春期の10代前半、上は80年代に思春期だった40台前半くらいまでがネット二次創作小説文化="SS文化"の担い手と見るべきかと思います。
この辺の文化論は、もっと偉い人がもっと的確な批評をしていると思いますが、ひとまず思いついたところだけ。SSにハマるのはたぶんリアルタイム10代ですが、それに近い行動記憶(同人誌や後述するTTRPG)を持っている人間は、たとえ20代以上でもさしたる抵抗なく『感染』するのではないかと思います。
あと、"SS"を語る上でゲームブックTRPGの存在を抜きにして語ることは難しいでしょうね。
私自身も、中学生になりたてのころ"バルサスの要塞"でゲームブックに触れ、社会思想社から創元文庫、そして富士見書房や二見書房なんかを経由して、D&D赤本からTRPGに踏み込んで今に至っていたりします。
ゲームブックTRPGの恐ろしい点は、商業ベースの「ストーリー」が決して『プロが作った素人には真似のできないエンタテインメント』ではなく、自分で好きな展開を選んで話を組み立てることでより楽しむことができると教えてしまうことだと思います。
出来合いのストーリーに不満を覚えたとき、『別の商品を買う』『もう買わない』以外の選択肢として、『自分で好きなように改変する』『もっと面白い*4話を作る』という方向性を能動的に選ぶことは、作り手のスキル的な問題や流通手段などの点で通常難しいのですが、TRPGの様な『トークセッションでストーリーを共同して作り出す』といったやり方や、Web小説のようなコストの少ない流通手段が、能動的にストーリーを構築して楽しむことを可能にしてしまった面があります。
ストーリーをただ第三者として受動的に受け入れる楽しみ方と、より能動的にフィクションを楽しむやり方のパラダイムシフトは確実に存在している(存在していた)とおもうのですが、その経過の中でゲームブック*5が果たした役割は意外に大きいものではないかと思います。


なんか、非常にまとまりのない文章を書いてしまってアレですが。取り合えずレスってことで。

*1:="SS"。最近は二次創作に限らずWeb上で発表される小説はこう呼ばれる傾向が強いですが。

*2:アニメフォーラムとか

*3:正確にはThe End of Evangelion公開後かもしれません

*4:客観的・市場価値的に『面白い』ではなく、主観的な意味での『面白い』

*5:あるいは初期のコンピュータゲーム