スターシップ・オペレーターズ〈1〉 (電撃文庫)

 読んだ。いやー、色々感慨深い。あとがきを読むと、娯楽小説と考えてくれとの記述があるので、そう考えると目的通りなんだろうなと思う。自分が手に入れたのは初版本なのだが、①とあるからには企画としてそもそも続刊前提だったのっだろう。最初は章ごとに感想でも書こうかと思っていたけど、無理っ。
 自分がスペオペが好きであるというのもあるんだが、なんつーか、冷静に考えると趣味全開のラノベでありながら、結構ワクワクさせられた。まだ第1巻ということで、人物の掘り下げなんかは不十分というか、できないんだけど、動機みたいなのがかいま見えて、それが若者特有の前向きなところも併さって、自分が若返ったような気になるのだ。
 さて、感慨深いのはやはり時代の流れだ。この作品の初刊が2001年なので、もう10年も前になる。アニメ化が5〜6年前だ。自分がアニメを視聴した時に頭に浮かんだのが、前途多難な若者たちへのエールだろうということだったが、やはりこの原作を読んだ今でもそうなんだろうと思う。2001年頃といえば、日本では失われた10年と言われていた頃だ。就職氷河期なんてものもあって、アジア通貨危機頃に日本企業も倒産件数最多を記録しており、就職難の時代が全国的に確認もされ、どうやら慢性的になっているということが共通理解として認識された時代だ。しかし、現在は内定取り消しという現象まで起こっており、非正規雇用があたりまえの時代になった。そこそこの大学でも正規雇用は難しく、しかも優秀な学生は外資を志向したものゝ就職しても安定からは遠い状況。大学生は就職活動を優先させるあまり、学業が疎かになるという大学もあって、そのような大学のあり方に誰もが首をかしげるような状況になってきている。企業の望む実学重視だと就職前提になり学業が二の次になるか、学問重視だと就職がないというディレンマ。
 あとは国際情勢だ。現実だと大国が小国を圧迫するという構造はむしろ10年前よりあからさまになっている。で、エジプトやチュニジアの例のように中東の春を世界が経験することになった。大国に従属する政府にNOを突きつける構造は小説とはちょっと違うが、若者が搾取され、革命のメインになるというところは似ていると思う。
 他国を軍事力で圧迫する政治、グローバル企業を主体として発展?する経済、そして扇動の主体である情報産業の三者を軸に展開される世界観も結構苦労して作り上げていると感じた。ちょっとメディアに向ける目が善意的過ぎるようなきらいはあるが、そうでもしないと物語が成り立たないんだろう。
 で、アニメで憶えていることもあるんだが、小説を読んで思い出すこともあったり、忘れてしまっていて新鮮な気持ちで楽しんだ部分もあった。で、アニメがけなされていたというのも無理はないという感じがする。今読み終わってみて改めて考えてみると、これをアニメ化するのは結構難しいんじゃないのか?という思いを強くした。戦闘はどう考えてもハードSF寄りであって、宇宙戦艦ヤマトだのガンダムだのといった、ビルドゥングス・ロマンからの発展系とは違った印象を受ける。'80年代のどこかのんびりとした国産ライトSFに、谷甲州の一発芸的なSF設定、そして銀英伝を軽く拝借したような国際設定をまとめるとこうなるんかな?という印象だ。ハードSFの部分は見映えがしないだろうし、正直作者が述べているところの美少女という華がないと、アニメにしたところで全く見向きも作品になっていたんだと思う。後半にいくにつれ、色気の描写に肩肘張らなくなっていくところに妙な安堵感があった。
 なんか勢いで一巻を読み終わったが、次ぎどうなるんだろう?。あんまり感想を書くモチベーションが続くとも思えないんだが。。