竹中平蔵 動画インタビュー 「来年の日本はどうなるのか、国民・企業はどうするべきか」|2009年 日本の針路 国民・企業の選択肢|ダイヤモンド・オンライン
【竹中平蔵 ポリシー・ウオッチ】最も失われた1年
平成20年秋に始まった麻生政権下での政策混乱が来年秋まで続けば、日本は「最も失われた1年」を経験するかもしれない。
第1は、この政策のままでは経済が回復しないという点だ。
一部の企業は、金融経済危機をエクスキューズ(言い訳)にして、日本から海外に大幅に活動拠点を移すのではないか。本格的な空洞化だ。
第2は、財政再建が大きく遠のいた点だ。
たしかに経済は厳しい状況であり財政拡大による刺激策は必要な局面だ。しかし、目の前にあるのは危機をエクスキューズにした安易な財政拡大だ。
にもかかわらず今回、各国が財政拡大に踏み切ったのは、理由がある。それは、金融機関のバランスシートが傷んでおり金融政策が効かないことと、経済の悪化が極めて大きいことである。しかし日本の場合、金融機関のバランスシートは欧米ほどには傷んでおらず、金融政策の効果が相対的には期待できる状況にある。
第3は、増税を行うことだけが明確にされている点だ。
しかもこれが、経済財政諮問会議で決定された。そもそも諮問会議は、マクロ経済と財政の整合性を議論することが最大の役割であり、だからこそ財政審や税調とは違う重要な役割を担ってきた。
残念ながら現状は、何でもかんでも金融危機のせいにしてなし崩し的にロジックを無視した政策が行われている。結果的に、規模も内容も中途半端で安易な財政ばらまきだけが繰り広げられようとしている。このままでは、経済は改善せず、財政赤字のみが深刻化するという90年代の二の舞いになりかねない。そして国民には増税の負担感のみが残る。日本経済の「最も失われた1年」を回避する正しい政治的リーダーシップが求められる。