クロム(メッキじゃなくて)
登場人物紹介:
どらねこ:南千住研究所Z研究員、日本モフモフ療法学会認定ホノメカス
モニョ子:南千住研究所Zを牛耳るポニョ子の妹
ミツドン:お正月太りを解消するため、
人体実験ダイエットチャレンジ中の為監禁されており多忙につき登場しない。
粗筋:
食品標準成分表2010に新しく登場したミネラルを紹介するよ!と、謂ったきり放置していたコトに気がついたどらねこ。忘れてなかった風を装うべく演出を試みたどらねこであったが・・・
モニョ子:「どらねこさん、もういい加減待ちくたびれたのですけど・・・」
どらねこ:「モニョ子さん、ごめん。読者の声を代弁してもらって・・・。でも、そんなにこのシリーズに期待しているヒト居ないと思うから大ジョブだよ」
モ:「どらねこさん、怒りますよ!たとえ待っている人が本当におそらく一人ぐらいであろうとも、そのヒトの期待を裏切るような発言をするのは問題です。無理だったら無理と正直におはなしすれば良いのですから」
ど:「ごめんモニョ子さん、その通りだよね(ちょっと気になる箇所もあるけど)。早速取りかかるよ。じゃあ、今回はグダグダを省いて簡潔に説明しようかな。モニョ子さん、何から説明すればよい?」
モ:「えーとぉ、クロムからお願いしようかな。どらねこさんのお友達のお友達のブログにそんなタイトルありましたよね」
■クロム
クロムでおさえておきたいトコ
・ 毒性が強い印象があるけど、それは6価のクロム。食品に入っているのは主に3価クロムだから気にしないで良い
・ 日本人の食事摂取基準では1日推奨量は 成人男性で40μg 成人女性で30μg に設定されている
・ 体の中では、糖代謝・コレステロール代謝などにかかわり、欠乏症としては耐糖能異常や成長障害が示唆されている
・ 健康なヒトが不足することはほとんど無いと考えられる
モ:「すこし難しいですけど、ようするにあまり気にしなくても良いということですか?」
ど:「うん、クロムを摂取するために食生活を改善とか、サプリとかは考えなくて良いと思うよ!これを見ればなっとくできるかも」
ど:「魚や豆、海草に芋や穀類にまんべんなく入っているの。この食品が不足しないように気をつけないと・・・という必要性はあんましないよね」
モ:「なるほどー、そうなのですね。でも、欠乏症はあるのですよね?気をつけなくてもよいのですか?」
ど:「実はね、この欠乏症というのはクロムを含んでいない高カロリー輸液を投与されていた人にあらわれたもので、口から通常の食事をしている人では確認されていないんだ。だから、クロムを気にして食事をする必要はそれほど考えなくて良いとも謂えるモフ」
モ:「食事摂取基準に載っていても、気にしなければならない栄養素もあればそうでない栄養素もあるんですねー」
ど:「うん、実はそうなんだよね。でも、特定の病気を持つ人については病態を改善させる期待も実はあったりするんだ。その一つが糖尿病だね」
モ:「クロムで糖尿病が治る可能性があるのですか?」
ど:「まさか!でも、治りはしないと思うけど、糖尿病など一部の病気の人では体が必要とするクロムの量が増える事が知られて居るんだよ。対照を用いた試験でも、クロム補充によりインスリン抵抗性が改善されたという報告がいくつかあるんだ」
モ:「では、糖尿病の方に対してはクロムサプリメントが有効なのでしょうか?」
ど:「う〜ん、そんなに簡単な話じゃないと思う。有効といっても、インスリンが体内で上手く働かないひとに対して、それを改善する可能性があるという話で、実際にクロムが欠乏していなければ、何の効果も期待できないと思うんだ。早い話、糖尿病が悪化している→クロム欠乏?みたいな判断を素人*1が行うのは無理という事」
モ:「ふ〜ん。でも、予防的にはよさそうに見えなくもないですけど」
ど:「まぁ、お金に余裕があるのならまだしも、良質なサプリメントですよ、と効果を仄めかして高い値段をむしり取られかねないからそんな話はひろまって欲しくないと思ってる。今現在の知見では、病気で長い間点滴療法などの高カロリー輸液を行うときに、クロムを補ってあげることが大事だよね、くらいが確実に謂える事じゃないかな。それ以上を謳っている場合には要注意・・・と」
モ:「ふむふむ」
ど:「もう一つ、クロムは日本では食品添加物として認められていないと思うから、クロム酵母みたいな形で販売されていると思う。わざわざサプリメントを輸入するヒトもいると思うけど、基本的に金属元素は中毒の心配があるから信頼のおける商品じゃないとちょっと怖いなぁ、なんて思うよ。繰り返しになるけど、糖尿病に効果があるとは現時点でいえるような十分なデータは得られて居ないと考えてね。だから、糖尿病が治るクロムサプリ!なんて文字を見たらそれだけでダメと判断しても良いと思うよ」
モ:「健康情報が溢れかえっています。気をつけていないと溺れちゃいそうです」
ど:「じゃあ、今回はこれぐらいで・・・」
次回に続く
*1:だいたい糖尿病専門で研究を行っている医師以外のヒトという意味