会議でどんな素敵な発言が飛び出すか知れたものではないので念のためにセーブをしておく。
セーブ部屋には当然大統領の人形はもういない。
その辺の人たちに話を聞いてみた。
○森のフクロウを始めたのはワッツとゾーンの父親である。
○とらえてはD地区収容所に叩き込むのでレジスタンス活動も下火になっている。
パルプンテサイファーの関係は森のフクロウの中ではタブー扱いになっている。
こんなことがわかった。
おそらくワッツやゾーンの父親はレジスタンス活動で殺されたかD地区収容所にいるのだろう。
明らかにレジスタンス活動が似合わないこの2人がそれに従事している意味がようやくわかった。
また、パルプンテサイファーの関係は思ったよりも深いようだ。
ゾーン、ワッツを含んだ友人というくらいならタブーにはならないだろう。
パルプンテ自身はサイファーを仲介者としてシド学園長に談判するなどもう屈託はないが
どろどろの恋愛模様なんかを繰り広げたのだろうか。
あるいはゾーンかワッツもからんできて、タブーにしているのはそいつらの手前なのかもしれない。
どうでもいいことだ。あきらめて作戦の説明を受けることにする。


作戦はこうだ。
放送局に行けば大統領がいるが、同時にテレビ放映の設備もある。
そこで大統領よりはやく画面に出てしまい、ティンバー独立宣言を放送する。
逃げる。
いろいろと突っ込みたいところはあるのだが、問題を挙げてみると
1.ワッツは放送局がどこにあるのか知らない。だから街で探すしかない。
2.放映する技術はスタッフにしかないだろう。どうやって彼らに放映してもらうのか。
3.実際に独立されていない状態での独立宣言に何の価値があるのか。
4.逃げられると思っているのか。
5.正気か。


正気じゃないんだろうな。
 

ティンバーに到着して駅に降り立ったらワッツが思い出した。
放送局へ行く道は、ティンバー・マニアックス社の近くにあるらしい。
ないよりはマシなヒントだ。とりあえずは街の様子を把握することにする。
ペットショップではペット通信を二冊手に入れることができた。
たまに『インビジブルムーン』を覚えさせる設定をする。
そして大統領の影武者から手に入れたゾンビパウダーで少し遊んでみるが
ゾンビパウダー×1→(ST薬精製)→聖水×3→(生命魔法精製)→ゾンビー×6
ゾンビパウダー×1→(生命魔法精製)→ゾンビー×20
大違いである。
駅にいる青年に話しかけたら、ゾーンを尊敬していると言っていた。
父親をガルバディアに殺され、弱冠にして武闘派組織『森のフクロウ』を率いる
エロ写真集が大好きな未成年である。
自分の身に危険が迫ると痛くなる腹センサーも完備しているよ。
なんで尊敬されるんだろう。イメージ戦略って重要なんだな。


ティンバー・マニアックスに到着した。
店の中では『となりのカノジョ』を発見する。ゾーンにあげることにしよう。
編集部に行くと、夢破れた編集長が延々とグチを語ってくれた。
一回グチを聞くと編集部から追い出されて「時間は大切に」といってくれるのだが
結局全種類のグチを聞いてしまった。どれか一つくらいは有意義なものがあるかと思ったが。
ただ、ティンバー・マニアックスはジャーナリストを目指す若者の投稿が多かったらしいから
ラグナもあるいは投稿したのかもしれない。


ティンバー・マニアックスの隣りの家で話を聞いたところ
その家の裏道から放送局にいけたらしいが、今ではパブがふさいでいるらしい。
パブの裏口から放送局に行けるというので早速向かってみる。
パブの前ではティンバー市民からカツアゲをしていたというガルバディア兵に発見されたが
蹴散らすとブエルのカードをくれた。
たつきち師匠がカードをアイテムに変化させる特技を覚えるまでは
これが価値のあるものかどうかわからない。とりあえずもっておこう。
パブに入ると酔っ払いが裏口へのドアをふさいでいる。
ドールからやってきた旅人らしい。
ガルバディアに攻められたドールから、支配されているティンバーへ。
よくよくガルバディア軍とは相性の悪い旅人だな。
その愛称のためか知らないが、兵隊にカードをカツアゲされたらしい。
これか、このブエルのカードか……。
展開的に返してあげれば一件落着なのだが酒で何とかすることにする。
この酔っ払いに話しかけると100ギルでお酒をおごることができるのだが
彼の好きな銘柄にしなければならない。
銘柄は六種類あり見分け方は他の客から聞くことができる。
ラベルは赤・緑・黄色でそれぞれ甘いものと苦いものがある。
『赤』『甘』ミメット
『赤』『苦』カラッカ
『緑』『甘』タンタル
『緑』『苦』レイゲン
『黄』『甘』クリーエ
『黄』『苦』シルキス
彼のところで様子を見ると、何色のラベルを飲んでいるかがわかる。彼がうまいと言ったら
同じ色のものをあげればいい。そうするとどいてくれる。
 

パブの裏口から放送局へと向かう階段を登っていくと
巨大なテレビ画面があった。
そこにはアルファベットが映し出されていて、同じものが全ての周波数帯で流されることで
電波障害がおきているという。
アルファベットはどうやら英文だった。
Bring me back there. I am alive here.
I will never let you for get about me.
二行目はちょっとわからないが、どこかから助けを求める言葉か
あるいは恋人へのメッセージかなという気がする。助けのほうか。aliveは強烈だもの。
電波障害になって17年、通信は他の手段を見つけたものの
こうやってテレビ画面を流し続けるように復旧への努力は続けられているのだろう。
そして、ガルバディア軍は止めることに成功したのだ。


それにしても全地表を覆う電波って大変なことじゃないか?
怪物たちは月から落ちてくるらしいが、この電波も月からだったりして。
とにかく、怪物を影武者として使うことができたり
長いことお手上げだった電波障害を克服することができたり
ガルバディアは大変な国であることは間違いないな。
 

電波の画面をぼーと眺めていたらワッツがやってきた。
既に大統領はスタジオ入りしており、警備の兵士たちでとても電波ジャックどころの騒ぎではないという。
そこで急遽パルプンテは方針を変更した。
大統領には好きなことを言わせましょう。でもそのあとでこっそりと乗り込んで独立宣言をしてしまおう。
17年ぶりの放送! というインパクトはないけれども
「まともに突入してもやられちゃうよね?」
その現実の前には仕方ないじゃん! という言い分らしい。
なに言ってんだお前。
そもそも独立の事実が伴っていない独立宣言に価値はなく
唯一認められるとしたら、ガルバディアの歴史的成功にケチをつけるというだけのものだろう。
危険を目の前にして避けるのは別に構わないさ。
でもそれなら完全にあきらめるべきだ。
モンテスキューも言ってるが
人間が失敗するのは本来の目的に加えてほんの少しの自尊心を満足させる成果を求めた時なんだぞ。
お前が言っているのはまさにそれだ。
得られるメリットはなにもなく、満たされるのは自尊心だけだ。
どうしてこんなに甘い考えでいられるんだろう。


しかしヒャダルコは拒否をしなかった。
「やられちゃうよね?」というパルプンテの問いを自分たちの損害は気にするなと切り捨てる。
「SeeDは依頼人の決定に従い、依頼人の敵を倒す」
それが契約だ。ヒャダルコは再度念を押した。
ゼルもそれに同意する。
「勝ち目のない戦場でも行けといわれれば行く」
ゼルは曲がったことが嫌いな奴に思えるから
パルプンテが三人の安全を言い訳にして出した逃げの策に反感を感じたのかもしれない。
「カッコわるぅ〜」
パルプンテががっかりした。
「決定に従う? それが仕事? 命令に従うだけなんて と〜っても楽な人生よね」
そもそもパルプンテは勘違いしているのだが
自分のしたいことを選んだらゼルもセルフィもヒャダルコもそもそもこの場所にいない。
命令に従うのが仕事だから座り込んで作戦会議し朝令暮改の作戦を立てる連中につきあっているのだ。
それをパルプンテはわかっていないのは、世界が狭く
さらにティンバー市民が虐げられすぎたのだろう。
世界中の全ての善人はティンバーのために義憤を感じるべきだ!
自然とそう思い込んでしまっている。


「なんとでも言えよ。あんたは俺たちを使って最高の結果をだしてくれればいい。
 あんたたちにできるとは思えないけどな」
ティンバーのために義憤を感じていないことでは最右翼に位置するヒャダルコ
いらいらと善意の要求を拒否した。
できるとは思えないたあどういうことよとパルプンテに問われて「言ってやる」と「やめておく」の選択肢が現れた。
ヒャダルコの性格なら当然後者なのだが
せっかく皮肉であろうとも彼が自発的に他人に対して関わったのだから
保護者としては応援してやりたい。あと、ちょっとパルプンテは痛い目にあうべきだ。
と思ったら、「やめておく」を選んでしまった。
急にやめられてさすがにひるんだのか
パルプンテはクライアントの命令として意見を続けるように求めた。
命令ならば、とヒャダルコは続ける。
「3人で床に座って作戦会議? その作戦もすぐに変更?」「さらにSeeDの意見がないと決められない」
これまでの鬱憤を吐き出すかのようなきつい言葉で、さすがにゼルにたしなめられた。


「な〜んか」
パルプンテは脱力したように自分が勘違いしていたと認めた。
SeeDが来てくれたらなにもかもうまくいくと思っていたそうだ
「でもそんなに簡単じゃないよね。雇われただけで、仲間ってわけじゃないよね」
その通りだ。最悪の事態になる前にわかってもらえてよかった。
「作戦は中止します。一事解散にしましょう」
すねているように思えるがこれはまともな判断だ。
おそらく姫さまはSeeDに「こうなってほしい未来図」を語れば
あとは全てやってくれるものと思っていたのだろう。
しかし、未来の設計図を書くのも材料を揃えるのもすべて自分たちで
SeeDはそのうち、常人ではできない部分をやるだけだ。
木を切り倒すのに使うチェーンソーみたいなもので
どの木を切り倒すか、切り倒した木をどうするか
そういうことは自分たちで考えなければならない。
その準備ができていないのだったら整うまで行動は延長するべきだ。
そう頭で考えての判断だったらいいのだけれど
失望してやけになっているだけかもしれない。
やけついでに契約も破棄してくれたらいいんだけど。
「子どもの遊びみたいに見えちゃう?」
「でも、本気なんだよ」
「痛いくらい本気なんだよ」
この子はまだ子どもなんだ。自分が本気ならば周りは協力してくれるべきだと思っている。
確かに必死に考えて努力している奴をみるとできるだけ救い上げたくなる。
しかしパルプンテたちがしてきたのは必死に願うことだけで
考え、行動し、反省する能力が欠けているのはこれまでの経緯からしてもわかる。
走って逃げていったパルプンテと入れ替わりにセルフィがやってきて
とうとう放送がはじまった。
 

17年ぶりに電波による放送が成功した。果たしてデリング終身大統領は何を言うつもりなのか。
大統領の提案は以下になる。
『世界中の争いを終わらせたい』
ここでセルフィが当たったと大喜びした。
なんだろう。他のゲームだとあきらかに鬱陶しいキャラなのに
セルフィには癒されっぱなしだ。
『しかしガルバディアと各国間には問題がある。
 そこで、各国指導者と対話をしたい。その大使を紹介する。
 大使は魔女――』
そう言ったと思ったら、見慣れた白いコートが乱入してきた。
サイファー! サイファーじゃないか!
そしてサイファーが兵士を蹴散らし大統領を確保すると
今度はキスティス先生が現れた。
な?
何が起こっているんだ。これはガーデンの作戦か? ヒャダルコたちは実は囮でこの2人が本命だったとか?
「動かないで。彼を刺激するだけなのがわからないの?」
おや。キスティス先生はサイファーとは別の意図で動いているらしい。
デリングへの攻撃を決意して出奔したサイファーを追う刺客だったのかな。
そっちのほうがそれぞれのキャラ(暴走、巻き込まれ)にあっているな。


仲間たちに意見を仰がれたが
ヒャダルコは、いまのクライアントはフクロウだと基本を指摘する。
まあ、一時解散中だから好きなことをしても大丈夫かもしれないが
何しろ相手は朝令暮改を絵に描いたような集団である。
この混乱でまたどんなトンデモ作戦を立てるか知れたものじゃない。
現場には近づかないが賢明だろう。
それにヒャダルコの好きなことは「係わり合いにならないこと」だからしょうがない。
それにしても目の前で知り合いがテレビに映ってえらいことしてるのに冷静だな、ヒャダルコ
「ティンバー班、みてる?」キスティス先生がテレビから声をかけた。
見てますよー。相変わらずおきれいですー。
ていうか先生、17年ぶりにテレビでしゃべった人の第四位じゃないですか?
入賞は逃したけど大したものです。
「ここへ来てちょうだい!」
先生の命令はすなわち学園の命令。
学園とクライアントの契約には常に学園の指示でSeeDの引き揚げができると書かれている。
サイファーのお陰で森のフクロウから解放されるかも知れない。
ありがとう、サイファー。
今とらえてやるぞ。
 

収録エリアにはサイファーとデリング大統領、そしてキスティス先生しかいなかった。
「彼の身柄を拘束します!」
えーと、せんせい?
『彼』はデリングなのか? サイファーなのか?
「なにしてるんだ、あんた」
ヒャダルコも呆れ顔だ。ということは番長は暴走しているのだろう。
「見りゃわかるだろうが! さあ、こいつをどうする計画なんだ!」
なるほど、サイファーはパルプンテの友人だったよな。そしてパルプンテとはパーティーの夜に会っている。
まるで緊張感のないパルプンテのことだ。それも相手が信頼しているサイファーであるなら
大統領誘拐の計画を教えていてもおかしくはない。
で、サイファーなりにパルプンテの役に立とうと無理を通そうとしたのだな。
サイファーは学園の見張りを何人も蹴散らして懲罰室を脱走し
テレビ局内の警備を何人も蹴散らしてデリング大統領をとらえてしまった。
すごい。さすが無理を通せば道理がひざまずく人だ。
ゼルが大声で叫んだ。
「この大バカ野郎をガーデンに連れ戻すんだな!」
ヒャダルコはとめようとしたのに。またチキン野郎って罵っちゃった。
「なるほど、君たちはガーデンの連中か」
それを聞き逃すようなデリング大統領じゃあないだろう。
20年間独裁者の椅子に座っていればこんな窮地は日常茶飯事かもしれない。
ヒャダルコたちと暴漢が同じくガーデンの出身だとばれてしまった。
今からでも遅くないから
「そうですトラビア・ガーデンです」と言いたいところだ。
「私の身に何かあったらガルバディア軍は総力を挙げてガーデンを潰しにかかるぞ」
ここでデリングが死んだらまず発生するのは後継者争いなのだが
その時に、実行犯であるガーデンを血祭りに挙げたらそいつは大きなアドバンテージだろう。
まず潰されるだろうな。
サイファー「面倒なことになっちまったぜ」
お前がそれを言うか。よりによってテレビの前で誘拐しておいて。
後始末は頼んだぜ! と言い残してサイファーはデリング大統領を連れて去ってしまった。
追うキスティス先生。大変ですねあなたも。
一応、使わないであろう魔法を全部あげておいた。
サンダーとかファイアーとかライブラだけどがんばって活用してほしい


サイファーを追うと、彼が困惑していた。
楽屋裏だろうか? 紫色の奇妙な煙に包まれている。
「可哀想な少年」
女性が登場する。この女性が魔女だろう。
「混乱している可哀想な少年。さあ、行くの? 退くの? お前は決めなくてはならない」
駆けつけたキスティス先生を魔女はたった一動作で行動不能にしてしまった。
やっぱりライブラやサンダーではダメだったか。
ていうか師匠つけてなかったよ。
「お前の中の少年は行けと命じている。お前の中の大人は退けと命じている。
 どちらが正しいのかお前にはわからない。
 助けが欲しいでしょう? この窮地から救い出して欲しいでしょう?」
「助けを求めることは恥ではありません。
 お前はただの少年なのだから」
魔女はサイファーを問答無用で始末するつもりはないようだった。
まがりなりにも警備兵を蹴散らした実力を惜しいと思ったのだろうか。
「俺を少年というな」
「もう少年ではいたくない?」
「俺は少年じゃない!」
「もう戻れない場所へ。さ、少年時代へ別れを」
その言葉に、サイファーはヒャダルコたちへ手を振り魔女についていってしまった。
お、おーい、サイファー?
 

その場にかけつけたパルプンテの先導にしたがって放送局を離れた。
聞けば森のフクロウのアジト列車も家捜しされてしまったらしい。
そしてパルプンテはしばらくティンバーを離れることに決めた。
「私を安全な場所まで連れ出して」
まだお前と一緒にいなけりゃいけないのか。頭を抱えるヒャダルコ
「これは命令で〜す。クライアントの依頼で〜す」
気圧されない女だな。たいしたもんだ。
ティンバーマニアックスの隣りの家の女性がかくまってくれた。
彼女は『森のキツネ』というレジスタンス組織の首領らしい。
なるほど
昼間は役に立たない『森のフクロウ』のほかにも
『キツネ』やらなにやらたくさんいるのだろうな。
『くまさん』もいるのだろう。物を拾うのが得意なのだ。
「この街じゃ、たいていの人がレジスタンス組織のメンバーなの」
しかし活動しているのは『森のフクロウ』くらいなものらしい。
呆れたな。力は結集させてくれよ。
ガルバディアからの間者がたくさんいて、たくさんレジスタンス組織をつくり
一つの規模を小さくさせることで急進的な動きを抑える。
そのシナリオでガルバディアに踊らされているんじゃないだろうか?


森のキツネ首領宅の二階でサイファーについて話したが
もっとも大勢的な意見はセルフィの
「わっかんないなあ。サイファーはなにしにきたの?」
というものだろう。
パルプンテが色々と相談しているからサイファーも面倒を見てやるつもりだったらしい。
自分は懲罰を受けているから仕方ないが、派遣された顔ぶれを見るとまさに新入りである。
あいつらにはパルプンテは任せていられない! 俺が行く!
それでホントに来たらしい。
キスティス先生はまさか本気だとは思わなかった、としみじみ述懐するが
レーニングだというのに額に傷までつけられたヒャダルコ
サイファーは常に本気の人間だと理解している。先生の甘さにも歯噛みしたくなるのだろう。
まあ、先生が本気にしていたとしても何人もの警備が蹴散らされるということを
想像なんかできなかっただろうからやはりサイファーは
テレビ放送三番目の発言者になる星の下に生まれてきたのだ。
サイファーはどうなるかな? というセルフィの疑問に
「もう殺されている可能性だってある」
と冷静に指摘するヒャダルコ。その冷たさにパルプンテが食ってかかった。
確かにデリカシーに欠ける行為である。
この場での想像がどういうものになっても事情は変わらないのだから
わざわざ不安をあおることは言うべきではない。
でもヒャダルコにも言い分はあった。
現実は優しくはない。思い通りになんかならない。
だから、常に最悪の事態を覚悟しておかないと
甘い見通しでいたらより悲しみが増すばかりなのだ。だから悪いことをこそ想像するべきだ。
言いたいことはわかるが、あくまで「最悪の事態を想定して計画を立て」「楽観的に結果を待つ」
のがいちばんの方法なんだけどまあ17歳には要求できまい。
それにしてもパルプンテヒャダルコの会話は興味深い。
パルプンテヒャダルコに詰め寄る時、「これこれこうだから殺されない可能性がある」
とは言えなかった。ただ『優しさ』を要求した。
それに対してヒャダルコは最悪の自分(と仲間が)傷つかないように最悪の心構えをさせようとし
それには状況を論理的に分析して見せるしかなかった。
なるほど「願望」「楽観」は単体で存在しうるけど
「絶望」「悲観」は理論武装が必要なんだな。
人間てのが生来「耳に心地よいことだけ知りたがる」生き物だってことがよくわかる。
 

とにかく街を出なければ。しかしガーデン所属であることがわかってしまっている以上
バラム・ガーデンに向かう海底トンネル列車を使うのはためらわれる。
迷うヒャダルコにキスティス先生がアドバイスをくれた。
バラムに帰還できない場合は、他のガーデンのうち最寄のもの、この状況ならばガルバディア・ガーデンに行くべし。
ガルバディアならば駅から列車が走っているそうだ。最悪の場合は歩いてもいけるらしい。
 

兵隊が撤収を開始したらしい。いまがチャンスということで家から出ると
挙動不審な兵隊がいた。騒ぎにならないように街を出ようとするが門番に止められた。
ワッツが変装セットを持ってヒャダルコたちを探してうろついているらしい。
って、あの兵隊がワッツかー! 情報収集も兵隊に成りすましてやったと言ってたものな。
戻ると怪しい兵隊がいた。声をかけてみたら案の定ワッツだった。
お前なあ。すぐに声をかけろよ。
ワッツの最後の情報は、もうすぐ学園東駅行きの最後の列車が出るという。他の列車は全てとめられたそうだ。
駅へ向かうと老人に変装したゾーンがいた。彼は人数分+自分の分の列車チケットを調達してくれていた。
が、こちらにはキスティス先生がいる。しばらくのにらみ合いのあとで
ワッツは彼のアビリティである『ふくつう』で行動不能になった。
アジト列車にガサ入れが入った以上ゾーンとワッツもこの街を離れるべきだ。
それなのに残ってくれる。たとえそれが、キスティス先生をか弱い女と読み違えたのだとしても。
さらば腹痛戦士ゾーン。俺たちは君の雄姿と腹痛を決して忘れない。


電車に間に合った。客室に向かう前に一息つこうとするヒャダルコだったが
電車好きのセルフィがドアを開けろ開けろとうるさかった。
ああ、癒されるなあこの生き物。もはや俺の中で仔猫仔犬のランクです。
仕方なく開けてやってから、ようやく人間と話をする。
キスティス先生はゾーンの安否を心配していた。
そうか。先生にとっての初ゾーンだったわけだから
これまでのあんまりなリーダーぶりを見ていないわけだ。
既にゾーンをしっているヒャダルコからすると不自然なくらいに感動している。
パルプンテから「ゾーンの好きなのはえっちぃ写真よ」と聞いて「覚えとく」と答えたのは
あるいは自分のでどうよと思っているのだろうか。
優等生でありながら秘密の場所の常連だったくらいだから
そりゃもう心得くらいはあるだろう。
金髪、メガネ、優等生。これに「夜の」とつけてみよう。
『夜の金髪』が『メガネの夜』に『夜の優等生』である姿をみせつけちゃうわよと。
そういうことだ。どういうことだ。
とにかく早くゆうざん師匠には「ぶんどる」を覚えていただかないといけないだろう。
ゾーンが先生のエロ写真を手に入れた直後の気の緩みを衝く!
 

最近列車に乗るといいことがなかったが、今回は無事に学園東についた。
そしてぐるりと見回すと、なるほど岩山に囲まれたちんまりとした森が見える。
視点の高さを変えたら確かにガーデンらしいキラキラも発見した。
勇躍して森に入り込む。
谷間の森に突入する。
ガーデンとは目と鼻の先で、さらに見つかりにくい森の中に入れた。
人心地がつけたのか、セルフィが問題を提起した。
「いまさらだけどさあ ガルバディア政府からよくない連絡が入ってるかもよ」
セルフィはなあ。こういうことを例えば列車の中などでは決して口にしないんだよな。
だからもしかした「ものを考えているんじゃないかこの小動物」と
思ってしまうんだ。
さて。確かにその可能性はある。
ゼルのファインプレーでガーデンのものだというのはバレたからな。


ゼルもその点は気にしていた。あの大統領、ガーデンに報復するかな?
でも、SeeDが大勢いるもんな? 負けたりしないよな?
「ガルバディア軍の戦力次第だ」
あくまで甘い状況判断を挟まないヒャダルコ
甘い状況判断だけで生きてきた女が食ってかかった。すばらしいリーダー様ねえ。
「いつでも冷静な判断で仲間の希望を否定して楽しい?」
おー、よく言ったパルプンテ。部外者だし世間知らずだからお前たまにいいこというよな。
ここはとにかく、いらない不安をかきたてるべきじゃない。
きっと大丈夫だから今は気にするな、と一言でいいのだ。
でもそれはヒャダルコにはできないことだ。
こんな重要な事で根拠のない慰めが言えるくらいなら秘密の場所でキスティス先生に怒鳴られなかった。
「ゼルはあなたの言葉がほしいのよ」
んなことはわかってるんだ、ヒャダルコも。それを言えば相手が安心できるということくらいは。
ただ、状況を変える力にはならないのに希望だけもたせることは
結局訪れる最悪の事態をより苦しいものにさせると考えているのだろう。
「そういう言葉が仲間の元気や勇気になる」
普通はそうだが、励まされて困難を乗り越えたという経験をしてこなかったら実感はできない。
ヒャダルコは何でも上手にこなせたから、励まされる力を知らないのではないだろうか。


するとふたたびラグナの夢がやってきた。
しかし今回は、セルフィ、ヒャダルコ、キスティスである。
やべーよ。キスティス先生ライブラとサンダーしか持ってないに等しい。
 

ふたたび森の中である。
ラグナが遠くを見ており、ウォードとキロスが何か調査をしているらしい。
前回の夢からどれくらい経ったのかな。
ラグナ「わりい。間違った。現場はここじゃねえ」
ラグナの方向音痴は相変わらずだ。
しかし今回は、そもそも目的地の地図自体が間違っていたので
マイナスとマイナスがぶつかりあってプラスになりましたー!
というような、ありえねえ!


装備を確認するためにステータスをみたところ
ここはセントラ・発掘現場というらしい。
セントラ。知らない単語である。とにかく進む。
敵と出会ったが、エスタ兵だった。
セントラはエスタの一部なのか。
もちろんエスタは前回の魔女戦争で魔女と組んだ悪者国だ。
戦況は最終段階で、いよいよエスタ領土にまで進行している状態なのだろう。
ジュリアとはどうなったんだろう。


適当に逃げ回っていたら海辺に追いつめられた。
エスタ兵の死に際のソウルクラッシュという技で
キロスとウォードの体力が1まで削られる。
そしてウォードが
「た……の……しか……った。……ラグ……ナと……キロ……スと
 楽……し……かった」
っておまえ死ぬ気かよ!
それにはさすがにHP残り1のキロスもぎょっとしたようで
「ウォード君、……減点……そういうこと……言うのは減点」
と彼なりの励ましを送る。面白いなキロス。
まったくだ。勘弁してくれ。まだ死ぬな。
眼下にはガルバディアの船が見えるじゃないか。
ここは崖だが。
その崖から、なんとラグナは
キロスとウォードを海に叩き込みやがった。
そして言うに事かいて
「おまえら、すげえ勇気だぜ。こんなとこから よく飛ぶよな」
アンタが! アンタが落とした今!
誰も見ていないのに、いつの間にかラグナの脳内では彼らの勇気をたたえるムードができていた。
ウソ診断機を通してもホントに自分が落としたと思っていないような気がする。


そしてラグナも転がり落ち、夢が醒めた。
それにしてもまったくわき道にそれずに崖まで来てしまったのだが
まさかここでしか発見できない師匠はいなかったろうな。
ヒャダルコたちの脳内ツッコミがまったく起きなかったのが
なんだかイベントを乗り過ごしような気がして怖い。
もしそうならやり直さないといけないのだが
前日終了時点からロードしなおしはさすがにいやだ。
 

夢から醒めた。
ゼル「またラグナか?」
セルフィ「ラグナさま、ピンチなんだよ どうなったのかな」
いや、ピンチはキロスとウォードだと思うぞ明らかに。
お前突き落とされたじゃないか。
キスティスが説明を求めるが答えられる者は当然いない。
「ここで考えてもきっと何もわからないさ。先を急ごう」
うなずいて、走り出すみんな。パルプンテだけがその場に残った。
さっき、言い過ぎた。ごめんね。
謝罪してくる。みんなが寝ている間、ゼルに何か言われたんだろうなあ。
ゼルは同級生だからヒャダルコのスタイルを知っている。
だから、彼から慰めが得られなくてもそれほど落胆したりはしないだろう。
それでも自分のために食ってかかってくれたパルプンテ
同調をするならわかるけど、もしもヒャダルコのフォローをしてくれたとしたら
ゼルはほんとにいい奴だと思う。何より特殊技が強い。


やっとの思いで到着したガルバディア・ガーデンでは一人用の機械が
空を飛び回っていた。すごい科学力じゃないか。
道行く生徒に話を聞いたが彼は当然ガルバディアに魔女が復活したことを知っていた。
また、魔女がガーデンを手に入れたがっているという噂があるらしい。
ガーデンとしても唯々として従いはしないだろう。
つまり、魔女とガーデンはいま敵対を開始している。
ヒャダルコたちは安全だと思われる。


学園長と会ったこともあるキスティスが事情を説明に行き、入り口付近で待つことにする。
パルプンテはガーデンが珍しいようだった。
ティンバー市民がどれだけ自由に移動できるか知らないが
確かに学校が一つの都市になっている場所は三つしかない。
珍しくもなるだろう。
2階応接室に来てくれというアナウンスがあった。従う。


キスティス先生が戻ってきて、事情を説明してくれた。
まず、バラム・ガーデンは無事だという。
あれはサイファーの単独行動であってバラム・ガーデンの責任は問わない
そういう公式な通達があったそうだ。
で、その単独犯はどうなっている?


サイファーは裁判が終わり、刑も執行されたらしい。


……そうか。空気が沈んでいく。
魔女の態度からして殺したとは信じられないし
実際あそこまでキャラ立った番長が死ぬとはおもえないのだが
とりあえず皆さんに話を聞いてみました。セルフィさんです。
彼女は特に意見はないそうです。女には手を出さないタイプだったのかな?
「ゼルは嫌ってたよね?」
ゼルは確かに嫌っていたが、しかしそれは同じ学生のうちのいけ好かない奴というレベルだろう。
実際に死なれたら悔しいし、悲しいという気持ちはよくわかりました。
ではより深い憎しみがあって当然なキスティス先生、どうぞ。
「手を焼いたなんてもんじゃない、かわいい生徒なんてもんじゃない。
 でもまあ、悪人じゃなかった」
精一杯の大人のコメントでした。そうとしか言えないしそれ以上きついこと言う必要ないよな。
もう死んだんだから。
では、その関係についてはタブーといわれたパルプンテ嬢はいかがですか。
パルプンテサイファーの自信たっぷりなところに惹かれたらしい。
「あいつの話を聞いているとなんでもできるような気持ちになった」
無理を通して生きてきた奴だからな。しかも自分に憧れている娘の前では
無理だけじゃ通らない経験の話なんかしないだろう。
日本語にすると経験の浅い女がころっとだまされたことになるのかな。


彼らの思い出話を黙って聞きながらヒャダルコは思う。あんな番長でも死んだら過去の人になるのだと。
彼らに好きにレッテルを貼られ、もう反論することもできない。
そして生きている人間たちのそれぞれの思い出の中、おさまりのいい場所に置き去りにされる。
「俺は過去形にされるのはごめんだからな!」
そう叫んで部屋から出ていった。
矛盾したことをいう子だ。自分では積極的に他人と関わることを避けながら
いざ思い出の中の存在になるか、と問われると全力で拒否する。
こっちからはてを差し伸べたくない。
でも誰か一緒にいて欲しい。
乳幼児期の親のスキンシップが足りない子は愛されているという自覚がもてないから
こういういびつな愛情の求め方に走ると本で読んだことがあるが
やっぱり生まれ育ちの問題なのだろうか。
 

応接室を出て一人でうろつきまわっていたら、なんと風神と雷神に声をかけられた。
正面から見た風神は眼帯をしている。でもきれいな顔立ちじゃないか。
彼らは学園長からの伝令でここにやってきたそうだ。
ティンバーに行けなくなってしまったから、同じく学園関係者の心得にしたがって
ガルバディア・ガーデンに避難したらしい。
それにしては命令書はこの学園のマスターに渡してしまったという。
そりゃ、ガルバディアとバラムは優先で連絡が取れるんだろうな。
で、風神たちがシド学園長に確認したら
ちょうどいいヒャダルコたちもそこに逗留していますよ。
じゃあマスターに命令書を渡してくださいと
そうなったのだろう。


この2人はサイファーのことを知らなかった。
サイファーは死んだらしいというヒャダルコの言葉に風神が驚く。
「ガルバディアで裁判にかけられて処刑されたって聞いてる」
しかし雷神は信じなかった。
「おとなしく裁判なんてうけないもんよ! 死刑なんてされないもんよ!」
やっぱり、この2人は子分じゃなくてサイファーの無理を通す意志力に憧れて
したがっているのだろう。我らが親分のムチャクチャさを舐めるな!
2人はサイファーを探しにガルバディアに行ってしまった。まあいいか。あの2人をあやしむ理由はガルバディアにはない。


SeeDたちはゲートに来てくれというアナウンスが入り、向かう。
ゲートの前で整列して待っていたら車が一台やってきた。
ここのマスターでドドンナという男らしい。
話をややこしくしないためにSeeDのふりをしているパルプンテがいちいち敬礼で遅れる。
芸が細かいな、このゲームは。
ドドンナは説明を始めた。
シド学園長がヒャダルコたちに下した命令について
ガルバディア・ガーデンは全面的に協力してくれることになったらしい。
彼らも以前から同じ目的のために作戦の準備を進めていたため渡りに船だったそうだ。


ドドンナは現状を確認する。
魔女がガルバディア政府の平和使節に任命されたが行われるのは会談ではなく脅迫だろう。
魔女は存在そのものが恐怖なのだから、話し合いなど不可能だ。
とびきりの恐怖をつかって有利な条約を結ぶのがガルバディアの本音である。
おそらく最終目的は世界支配だろう。もちろんガーデンも独立を保ってはいられない。
事実、ガーデンを接収すると魔女は言ってきている。
そこで下された指令の内容は暗殺指令だった。
そして方法は狙撃。
誰も狙撃の達者がいませんというヒャダルコの懸念の解決策が
ドドンナの言う「全面的な協力」なのだろう。
ガルバディアから最高の狙撃手を貸してくれるそうだ。
すみませんねえ。こっちは新入りSeeDと失格教師、そして一般人なのに。
ガルバディア・ガーデンの置かれている立場からし
ここでコマを惜しむとは思えないから
この彼、アーヴァイン・キニアスさんは本当にすごい狙撃手なのだろう。


それまで芝生の上でねっころがっていた、カウボーイハットの色男がやってきた。
全般的にイメージは西部劇であり、手に持っているのは旧式の鉄砲だ。種子島に近い。
そして彼の第一声は
「バラムのイナカ者諸君、よろしく」
やったーーーーーーーーーー!
「僕のサポート、大丈夫か?」
感じ悪いーーーーーーー!
このメンバーだとこれくらいでトントンなのは事実なのだが
そんなことこのアーヴァインは知らないだろう。
てことはこれがこのやさ男の基本姿勢ってことだ。
ほんとにアクのつよいひとたちだこと。
「それはあんたの態度次第だ」
さっそくヒャダルコが釘を刺すと
「僕の言うことって、人の反感を買うことが多いんだよね」
本人もわかっているようだった。
しかし甘いマスクだけではなく、なんとなく許される雰囲気があると思う。


ヒャダルコが仲間に命令書の内容を説明した。
次の仕事は魔女の暗殺であること。
第一のステップは遠距離からのアーヴァインの狙撃であり
失敗しても撤収ではなくバトルで倒すこと。
つまり、シド先生は殺る気充分だということだ。
誰からの依頼だろう? ドドンナの言うとおり魔女が政治的な力を振るったら
魔女戦争の再発もあるのかもしれない。
それでもまだまだ魔女の脅威は形になっていない。
それなのに、経験の浅いヒャダルコたちとはいえ魔女の徹底暗殺を命令するとは
よほど覚悟を決めた依頼主が現れたのだろう。
誰かはわからないが。


もちろんいちばん可能性が高いのは
ドドンナがシド学園長の命令を捏造したという仮説だ。
何しろガーデンの接収を命令されているのだ。
手の内に転がり込んできたSeeDという駒を使わない手はないだろう。
となると、ヒャダルコたちへの期待も「とにかくやらせてみよう。タダだし」くらいかもしれない。
するとアーヴァインもダメな子である可能性が出てくるのだが。
とにかく、アーヴァインにパーティー編成を任せてみたら
パルプンテとセルフィで両手の花を実現しやがった。
あ、キスティス先生がむっとしている。
ちょっと待て、班長は俺だとヒャダルコが異論を唱え
それでも両手に花は実現させてあげようと
パルプンテとキスティスをつけてやったら文句を言っています。
あ、キスティス先生がむっとしている。
まあ好都合だ。これでアーヴァインの真価がわかる。
キスティス先生の闇討ちを耐えて次回のプレイ時に生きていたら
彼を信頼することにしよう。