シリコンバレーに行きます

このたび思うところがあって、シリコンバレーに行く決意をした。12年前に IT 業界に飛び込んで以来、ずっと憧れであった土地・シリコンバレー。向こうの人たちの話を聞くたびにいてもたってもいられない気持ちになった。私がなぜそこまでシリコンバレーに行きたいか、その気持ちはこのブログの読者の方々なら、よくお分かりのことと思う。

海部美知さんはうまいことを言ったものだ。「パラダイス鎖国」。これぞまさに今の日本の姿そのものだ。日本人たちは、ますます外国に興味を持たなくなってきている。聞くところによれば、日本が「飯がうまく、安全で快適な国だから」という。(本当にそんなに快適かしら、と私はおもったりもするのだが)若い人たちは、外国に行く意味を見失い、日本に閉じこもるようになったと。

だが、日本は世界でもっとも閉鎖的な国ではない。日本の上を行く「パラダイス鎖国」がある。それがアメリカだ。アメリカ人の多くは、国外に興味をもたない。文化的に近いカナダや、ヨーロッパにさえ興味をもたない。ましてや、東洋の異質な国である日本なんて、地球のどこにあるのかさえ知らない人たちがたくさんいる。

ただ、日米で決定的に違う点がひとつある。それは、アメリカ人を英語を話し、日本人は日本語を話すということだ。アメリカの外に英語を解する人たちは大勢いる。そういう人たちが「勝手に」アメリカに渡ってきて、勉強をし、就職し、起業する。そうした外からの刺激を生かす仕掛けがアメリカにはある。つまり、生きのいい元気な外国人たちがガンガン働いて、アメリカ経済を潤してくれるので、アメリカ生まれのアメリカ人たちがぼんやりしていてもメシが食えるのだ。

そういう意味では全世界に広がる英語圏を作った大英帝国の遺産に、アメリカは大いなる恩恵をうけているともいえる。アメリカが鎖国していられるのには、ワケがあるのだ。そういう広大な日本語圏を海外に持たず、優秀な外国人をうまく登用できない日本の経済は、このままではジリ貧になっていくだろう。(そこで出てきたのがシリコンバレーをはるかに超える、世界一のイノベーション都市を、日本に作る方法 - 分裂勘違い君劇場というエントリだが、分裂君自身がよくわかっているように、いますぐにこの構想を日本で実現するのはほぼ無理だ)

とにかく、日本の中に閉じ込められたくないという気持ちが強い。ぬるま湯の中のゆでカエルになりたくないのだ。悲痛すぎて、やや滑稽であるくらいの危機感である。

私は、いままでもずっとシリコンバレーに行きたかった。90年代の終わりにすでに、日本の SIer の重層下請構造にうんざりして、クリエイティブに見えたシリコンバレーに行きたくなった。99年にカナダに渡り、英語を半年勉強してからシリコンバレーに向かうつもりが、つい居心地がよくなってカナダで永住権を取ってしまった。そうしているうちに IT バブルが弾け、9/11 が起きた。移民局の入国審査が厳格化した。アメリカのイラク攻撃が泥沼化していくのを見て、すっかり私はアメリカに幻滅してしまった。トロントには、あまり活きのよいスタートアップはなく、定型的な自分の仕事が嫌になって、一時は IT を捨てようと思った。韓国と中国に興味を持つようになり、カナダを出てこの2カ国に合計1年半ほど住んだ。そして日本に帰り、ふたたび IT 系の仕事に就いた。(といってもエンジニアではなくて、インド系の IT 企業でインド人エンジニアと日本人顧客の調整役であったけど)

さんざん悩んだ挙句の果て、シリコンバレーに行こうと決意した後、一番重要であるアメリカのビザについて調べてみた。一言でいうと現在は非常に厳しい。海部美知さんは、このまえの東京での講演会のとき、「シリコンバレーにいっちゃえば〜」とか気軽に言っていたけど、やれやれ、現実はそんなに甘くないですよ。でも、彼女の気持ちはよくわかる。彼女はおそらく永住権を持っていると思うけど、いちど安定したビザ・ステータスを得ると、その後、国の移民政策にはまったく興味がなくなってしまうのだ。私がカナダの永住権を取ったときもそうだった。のど元過ぎればなんとやら、だ。

ちょっと調べたかぎりでは、唯一可能性がありそうなのは、アメリカで会社を作り起業し、その投資家・事業家または駐在員として行く方法だけのようだ。私のようにシリコンバレーに行きたい人たちのために、アメリカ進出の方法について、いろいろ調べて、このブログにレポートしていきたいと思う。もし、情報をお持ちの方をぜひ教えてください。みなさまのご協力をお待ちしています。

時間を管理する

時間は限られている

最近、とみに感じるのは、時間というものの有限性についてである。

私は、いつか死ぬ。私は、ある種の人たちのように、能天気に「80歳まで生きるだろう」と勝手に推定して安心することはできない。私は、80歳まで生きるかもしれない。あるいは明日死ぬかもしれない。それは、神の決めることであって、われわれ人間が決めることではない。

10年はたった 3650 日程度でしかない。私がこれから30年生きたとしても、10000日をわずかに越える程度である。あっという間ではないか。われわれはみないつか死ぬこと、われわれに与えられている時間が有限でしかないことに直面するのがひどく不快である。だから、われわれは、あたかもこの命が永遠に続くように振る舞い、時間を湯水のように浪費する。

だが、それは事実ではないのだ。時間は有限だ。

いいこともある。時間には、貴賎の差がない。確かに金持ちのほうがいい医療が受けられるだろうから、長生きできる公算は高くなるだろうが、金持ちが貧乏人の10倍長生きできるわけではない。
成功した人たちが「他者との競争が問題なのではない。重要なのは自分自身との闘いだ」というとき、それはひょっとして、この誰にも与えられた平等な時間をいかに有効に使うべく自己節制できるかどうかが成功の鍵だ、ということを意味しているのかもしれない。

ピーター・ドラッガー「プロフェッショナルの条件」の Part 3 「3章 時間を管理する」が素晴らしい。とかく怠惰に時間にすごしてしまいがちな自分自身への戒めとして、写経したい。ドラッガーのメッセージは「無駄なことはするな」ということだ。「時間を有効活用する」というフレーズの響きは甘美だ。しかし、それだけでは何の役にも立たない美辞麗句に過ぎない。重要なのは、何かをやめることだ。悪習を断ち切り、いままでしてきたことの一部を放棄することだ。これは、かなり不愉快な作業だし、勇気がいる。しかし、それを始めない限り、本当に生産的な時間の使い方はできない。つまり「生活時間のリストラ」だ。

プロフェッショナルの条件 - 3章 時間を管理する

1.自分の時間をどのように使っているか

「私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。何に時間がとられているかを明らかにすることからスタートする。次に、時間を管理すべく、自分の時間を奪おうとする非生産的な要求を退ける。そして最後に、その結果得られた時間を大きくまとめる。すなわち、時間を記録し、管理し、まとめるという三つの段階が、成果をあげるための時間管理の基本となる」
「時間はあらゆることに必要となる。時間こそ真に普遍的な制約条件である。あらゆる仕事が時間の中で行われ、時間を費やす」
「われわれは、どのように時間をすごしたかを、記憶に頼って知ることはできない。」(記録重要!)

2.時間を無駄にする仕事

「時間を無駄に使わせる圧力は、常に働いている。なんの成果ももたらさない仕事が、時間の大半を奪っていく。ほとんどは無駄である」

3.時間をまとめる

「時間は、大きなまとまりにする必要がある。小さなまとまりでは、いかに合計が多くても役に立たない」
「人のために時間を数分使うことは、まったく非生産的である。何かを伝えるためには、まとまった時間が必要である」

4.時間の使い方を記録する

「継続して時間の記録をとり、その結果を毎月見ていかなければならない。最低でも年二回ほど、三・四週間記録をとるべきである。記録を見て、日々の日程を見直し、組み替えていかなければならない。半年も経てば、仕事に流されて、いかに些事に時間を浪費させられていたかを知る」

5.仕事を整理する

「時間の記録の次に来る一歩は、体系的な時間の管理である。時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除していくことである」
「第一に、する必要のまったくない仕事、すなわち、いかなる成果も生まない完全な時間の浪費であるような仕事を見つけ、捨てなければならない」
「第二に、『他の人間でもやれることは何か』を考えなければならない」
「第三に、自らがコントロールし、自らが取り除くことができる時間浪費の原因を排除しなければならない」
「不必要かつ非生産的な時間が多いことについては、誰もがよく知っている。しかし、時間を整理することは恐れる。間違って重要なことを整理してしまうのではないかと恐れる。だが、そのような間違いは、ただちに訂正できる。整理しすぎれば、すぐに分かる」

6.マネジメントの欠陥がもたらす時間の浪費

「第一に、システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費である」
「繰り返し起こる混乱は、ずさんさと怠慢の兆候である」(私が、かつて派遣されて働いた某 SIer には「徹夜休暇」という制度があった。この組織では、デスマーチが恒常化しているのだ。こういう組織からは逃げ出したほうがいい)
「第二に、人員の過剰からくる時間の浪費がある」
「人員過剰についても、かなり信頼できる兆候がある。もし、組織の上のほうの人たちが、時間をある程度以上おそらく一割以上を、人間関係、反目や摩擦、担当や協力に関わる問題に取られているならば、人が多すぎることはほとんど確実である。お互いが仕事を邪魔している」
「第三に、組織構造の欠陥からくる時間の浪費である。その兆候は、会議の過剰である」
「第四に、情報に関わる機能障害からくる時間の浪費である」(部門間の情報伝達に問題があるケース)

7.汝の時間を知れ

「実は、時間浪費の原因となっているものを容赦なく切り捨てていっても、自由になる大きな時間はさほど多くない」
「汝自身を知れという昔からの知恵ある処方は、悲しい性の人間にとっては、不可能なほどにむずかしい。しかしその気があれば、汝の時間を知れとの命題には、誰でも従えるはずである。その結果、誰でも成果と貢献への道を歩める」