ENDING ENDLESS 雑記帖 @『ディズニーの隣の風景』 by 円堂都司昭

                    

2016-06-25

[][]壁、イギリスのEU離脱

ピンク・フロイドは1979年に『ザ・ウォール』を発表し、ライヴ中のステージにパフォーマーと観客を隔てる壁を築き、最後にそれを崩すという大がかりな演出を行った。米ソの東西冷戦構造の最中であり、ベルリンの壁が崩れることなど想像できなかった時代のことである。

同アルバムの制作を主導したロジャー・ウォーターズは、冷戦が終結へとむかうなか、89年にベルリンの壁が実際に崩壊したその翌年に、ベルリンで『ザ・ウォール』再現ライヴを実施した。その最後には、新曲“流れが変わる時〜ライヴ・エイドが終わって〜 The Tide Is Turning”を演奏した。

ウォーターズは2010年以降、同時代の世界情勢も演出にとりこみつつ、『ザ・ウォール』再現ツアーを敢行した。

しかし、世界の流れはまた変わりつつある。

イギリスがEUからの離脱を国民投票で決定した。この件には、ベルリンの壁が崩壊した時のような、ショックを受けた。移民の流入に反発した民衆は、外部と線を引いて独立性を高めることを望んだのだ。アメリカでは、移民の流入を止めるためメキシコとの国境に壁を作ると放言するドナルド・トランプが人気を得ている。安倍政権下の日本では自国礼賛ムード、嫌韓嫌中ムードが漂っている。

ならば今、ウォーターズは再び『ザ・ウォール』再現ライヴを実施し、最後の壁を崩すべき場面で崩さない演出をしたらどうか。そして、イギリス公演ではEU離脱派の中心人物ボリス・ジョンソン、アメリカ公演ではトランプの被り物をして“流れが変わる時”の替え歌でも歌えばいい。ベタな風刺だが、話題にはなるだろう。

――てなことを、昨日から夢想している。


  • 最近自分が書いたもの
    • 新刊めったくたガイド(とりあげたのは、長浦京『リボルバー・リリー』、菅原和也『ブラッド・アンド・チョコレート』、北山猛邦『先生、大事なものが盗まれました』、秋吉理香子『自殺予定日』、原進一『アムステルダムの詭計』 → 「本の雑誌」7月号
  • 島田荘司『屋上の道化たち』、増井修ロッキング・オン天国』の書評 → 「小説宝石」7月号
  • 森岡賢は、新たな化学反応を求めていたーーSOFT BALLETからminus(-)までを改めて振り返る http://realsound.jp/2016/06/post-7977.html
  • 「夜明けの紅い音楽箱」(今回とりあげたのは青崎有吾『ノッキンオン・ロックドドア』 → 「ジャーロ」No.57

2016-05-27

[]オバマの広島訪問と水俣病公式確認60年

来日したオバマ大統領が本日夕、被爆地・広島を訪問する。

また、今年は水俣病が公式に確認されてから60年にあたる。

原爆や原発の放射能、水俣病に代表される公害・環境汚染が、日本の戦後の“危機”をめぐるイメージにどのような影響を与えたか、それらについては昨年刊行したこの本に記したのだった。というわけで昨今の報道に接し、再び、あれこれ考えている。


  • 最近書いたもの
    • 深水黎一郎『倒叙の四季 破られたトリック』書評 → 「ハヤカワミステリマガジン」7月号

2016-05-17

[]三島賞

ハスミンのボンジュール重彦の会見。

蓮實重彦」なる物語の表層で戯れ続ける凡庸さでお話させていただきます、て感じか。

そこに嫌味はあっても事件や不意打ちはなく。

伯爵夫人

伯爵夫人


  • 最近自分が書いたもの
    • 新刊めったくたガイド(とりあげたのは、谺健二『ケムール・ミステリー』、吉田恭教『背律』、織守きょうや『301号室の聖者』、柴田哲孝『砂丘の蛙』、長沢樹『武蔵野アンダーワールド・セブン 意地悪な幽霊』) → 「本の雑誌」6月号

2016-05-11

[]デヴィッド・ボウイマイルス・デイヴィス

まだCDが存在しなかった1970年代。金銭的余裕のない中学生だった私は、市立図書館のレコードをよく借りた。

NHKで『ヒーローズ』発表時のデヴィッド・ボウイの来日公演を観て衝撃を受けた際には『アラジン・セイン』を借り、FM放送でマイルス・デイヴィス「死刑台のエレベーター」を聴いてカッコいいと思った後には『ダーク・メイガス』を借りた。図書館のレコードの数は少なかったので、気になったアーティストのたまたま所蔵されていたものに手をのばしたのだ。

で、それぞれの作品がテレビやラジオで接した曲調とかなり違っていたから、あっけにとられた。音楽家の振り幅の大きさに驚いたのは、この2人が最初だった。

Stageアラジン・セイン  <FOREVER YOUNG CAMPAIGN 2015>対象商品

死刑台のエレベーター(完全版)ダーク・メイガス

  • 最近の自分の原稿
    • 日本推理作家協会編『驚愕遊園地 日本ベストミステリー選集』の解説(同名単行本の文庫化による解説文の再録)

驚愕遊園地: 日本ベストミステリー選集 (光文社文庫)

2016-05-06

[]『ズートピア』と『動物農場』

ジョージ・オーウェル『動物農場』は、平等になったはずの動物たちが支配層と被支配層へと分化が強化されていく話だった(そのヴァリエーションであるピンク・フロイド『アニマルズ』も支配/被支配の話)。

一方、『ズートピア』は、平等なはずの場所で種々の偏見、差別がくすぶっており、それが吹き上がりつつ差別と被差別が必ずしも固定化されず、逆転も起きる物語だった。

大きな東西対立が固定化する冷戦構造への入口の頃に生きたオーウェルと、冷戦以後の世界中に種々の対立が偏在する今に作られた映画との時代の差を感じた。

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)

動物農場―おとぎばなし (岩波文庫)