ENDING ENDLESS 雑記帖 @『ディズニーの隣の風景』 by 円堂都司昭

                    

2016-12-01

[]『君の名は。』の口噛み酒と真実の愛のキス

ディズニーアニメに代表されるように、主人公たちが危機的状況に陥るが、真実の愛のキスによって奇跡が起きるという物語の定番がある。死から蘇るというのが奇跡の典型であり、それはキスが息を吹き込む=命を吹き込むことを暗示する象徴的な行為だからだろう。逆に、命を吸いとるという意味で、キスが死と結びついている物語もある。『ウンディーネ』、『サロメ』、『エリザベート』などがそう。


『君の名は。』の場合、男女の心が入れ替わり、しかも二人がすれ違い続ける物語になっている。途中で対面する場面はあるものの、ほんのわずかな時間でしかない。また、最後に再会したとたん、物語は終わる。この映画にキス・シーンはない。

しかし、それに相当するシーンはある。瀧が三葉の口噛み酒を飲むシーンだ。その行為によって彼は、死んだはずの三葉と会うきっかけをうる。神事として三葉が作った口噛み酒は、物語展開における働きとして、真実の愛のキスを代替するものとなっている。

君の名は。 忘れたくない名台詞 31日万年日めくり 2017カレンダー 壁掛け


  • 最近の自分の仕事
    • 「夜明けの紅い音楽箱」(今回とりあげたのは鯨統一郎『ベルサイユの秘密 女子大生桜川東子の推理』) → 「ジャーロ」No.58

ジャーロ No. 58

    • 『バンド臨終図巻』の文庫版、刊行されました↓

2016-11-25

[]『シン・ゴジラ』とスクラップ&ビルド

『シン・ゴジラ』では、映画の終わり近くに「この国はスクラップ&ビルドでのし上がってきた」というセリフが出てくる。あのセリフは感慨深かった。昨年夏に刊行した『戦後サブカル年代記 日本人が愛した「終末」と「再生」』で「ゴジラ」シリーズにも言及したが、同書のキーワードの一つが「スクラップ&ビルド」だったからだ。

この本を出した翌月、『シン・ゴジラ』のエキストラ撮影に参加した。私は、ビルから怪獣上陸を見物しているサラリーマンたちの1人。その時は、みんながよく知っているフォルムのゴジラを見ているんだと思っていた。ところが、実際に映画を見たら、相手があんな姿をしている蒲田くんだったから、どえらく驚いた……。事前に知らされてたら、もっと大きなリアクションしてたよ。


  • 最近の自分の仕事
    • 同級生の死の分岐点を探る青春ミステリ『分かれ道ノストラダムス』深緑野分 http://www.bookbang.jp/review/article/520429 (「小説宝石」11月号掲載書評の転載)
    • 2016年総括 国内 → 「ハヤカワミステリマガジン」1月号 特集 ミステリが読みたい! 2017年版
    • 『シン・ゴジラ』の音楽 伊福部昭のモノラル音源と鷺巣詩郎の合唱曲  → 「ユリイカ」12月臨時増刊号 総特集Ω『シン・ゴジラ』とはなにか

ユリイカ 2016年12月臨時増刊号 総特集◎『シン・ゴジラ』とはなにか戦後サブカル年代記 -日本人が愛した「終末」と「再生」-

2016-11-15

[]『君の名は。』と村上春樹

君の名は。(通常盤)

離れている2人が超常的なシンクロ現象をみせ、世界の危機にかかわる――という大枠は、村上春樹が得意としたものでもあった。また、『君の名は。』では、少女の口噛み酒を少年が呑むことで奇跡を招き寄せるが、その種の少女の聖性という発想は、村上『1Q84』の「ふかえり」にもみられた。

筒井康隆時をかける少女』の時間跳躍、大林宣彦『転校生』の心の入れ替わり、そして村上春樹など、様々な作品に受け継がれてきたファンタジーの種々の要素を『君の名は。』も継承している。その意味で同映画には、伝統に沿って生まれた成果だという印象を持っている。

『君の名は。』は、もう一回、観に行こうと思っている。


  • 最近の自分の仕事
    • 曽根圭介著『TATSUMAKI 特命捜査対策室7係』の文庫解説

TATSUMAKI 特命捜査対策室7係 (講談社文庫)

2016-11-14

[]『君の名は。』と『シン・ゴジラ

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド

シン・ゴジラ音楽集

昨日、ようやく、『君の名は。』を観てきた。『シン・ゴジラ』と同じ年に公開された同作。『シン・ゴジラ』が東日本大震災&原発事故をあからさまに意識した映画だったのと同様に、『君の名は。』も「災後」を意識した映画だった。

いずれも後半では、危機回避のための政治的決断が焦点になる。『シン・ゴジラ』では国内政治に関しては手続きが、外交に関しては根回しと駆け引きが描かれる。なるべく現実をシミュレートしようとした内容だからそうなる。

これに対し、『君の名は。』で小さな地方自治体の長を動かすのは、超常現象の体験をもとにした娘による説得だ。しかも、長である父と娘が再度対面した瞬間に画面は切り替わり、彼女が具体的にどう説得したかは映されない。そのへんは、曖昧なままだ。

人間の知恵の勝利を語りつつ母国の内政と外交の危うい現状を反芻する『シン・ゴジラ』より、奇跡と情によって危機が回避される『君の名は。』のほうが、より広範な人気を得たのは当たり前。現実より夢のほうが、飲み込みやすいんだから。


  • 最近の自分の仕事
    • クイーンはなぜ定番ネタであり続ける? 今なお親しまれる“仮装”感覚を考察 http://realsound.jp/2016/09/post-9302.html
    • 塩田武士『罪の声』書評 → 「ハヤカワミステリマガジン」11月号
    • 新刊めったくたガイド(とりあげたのは法月綸太郎『挑戦者たち』、早坂吝『アリス・ザ・ワンダーキラー』、三津田信三『黒面の狐』、長江俊和『東京二十三区女』、連城三紀彦『わずか一しずくの血』) → 「本の雑誌」11月号
    • 坂本龍一のキャリアにおける映画音楽の重要性 『戦メリ』から『怒り』までの変化を追う http://realsound.jp/2016/10/post-9851.html
    • 深緑野分『分かれ道ノストラダムス』、さやわか『文学の読み方』の書評 → 「小説宝石」11月号
    • ソロ/サイド・ワークに見るクリス・スクワイアの音楽的背景と人脈、ディスク・レヴュー7本 → 『THE DIG イエス』

THE DIG Special Edition イエス (シンコー・ミュージックMOOK)

2016-09-15

[]「BABYMETAL楽曲の魅力を語ろう‐WORLD TOUR FINAL AT TOKYODOME version‐」

10月3日のB&Bのイベントに出演しますDEATH!

2016/10/03 Mon 

小中千昭×円堂都司昭

「BABYMETAL楽曲の魅力を語ろう‐WORLD TOUR FINAL AT TOKYODOME version‐」

『BABYMETAL試論』(アールズ出版)刊行記念

BABYMETAL試論

時間 20:00〜22:00(19:30開場)

入場料 1,500円+1drink order


ご予約はこちら → http://bookandbeer.com/event/20161003_bt/


  • 最近の自分の仕事
    • 新刊めったくたガイド(とりあげたのは、柚月裕子『あしたの君へ』、真梨幸子『私の失敗した理由は』、市川哲也『名探偵の証明 蜜柑花子の栄光』、鳥飼否宇『ブッポウソウは忘れない 翼の謎解きフィールドノート』、綾辻行人『深泥丘奇談・続々』 → 「本の雑誌」10月号
    • 誉田哲也スペシャル・インタビュー「人を幸せにする嘘」の物語 → 「IN★POCKET」9月号