ミッドナイト・イン・パリ

面白いし、それ以上に素直に好きだなーと思える作品。
ウディ・アレンの映画ってこれが始めてなんだけど結構彼の映画には合う方かも。

何ていうんですかね、普段映画を見に行く時に期待する「全身が打ち震えるような感動!」は本作にはさほどないし、他愛ない話だとは思うんですよ。
言ってる事は「自分にとって本当に大切だと思える事、そこをこそ共有できる相手こそ素敵なパートナーというものでないかい?」というもの。
そこで主人公が思う大切な事を象徴しているのが、まあ…本当にロマンチックで美しくてですね…。
言葉にすると「そんな事?」っていうのを「そんな事?」と思わせない時点で相当に良い映画なんじゃないかと。


脚本良いなーと思う部分があって、作中主人公は二人の女性と別れるハメになるんだけど、そこの原因が主人公に鏡を突きつける形で描かれる所。ここはとっても面白いなーと思いました。
不倫もノスタルジーに囚われているのも主人公としては"お互い様"なんだよね。
(不倫といえばピアスをどこにやったっていうくだりがかなりサスペンスフルで面白かった。)
全体のルックがあまりにキレイキレイしてて反発持つかもなー、と思ってたけど話を追うにつれ苦味も帯びてくるので嫌な感じはしなかったなー。


不満な点もあって、パンフ買ってないから分からないんだけどブニュエルに「皆殺しの天使」のアイディアを教えるくだりはちょっとんーってなっちゃいました。
もしかしたら実際ブニュエルは誰かから着想を得たのかもしれないけど表面上は「えーちょっと敬意を欠いてないかなー」って思った。
…けど、よくよく考えたらウディ・アレンってブニュエルと同年代を生きてた人なんだよな。

あと、自分が未来から来たことをバラすタイミングにちょっとお話上の都合を感じてしまいました。
普通速攻でバラさないか?

多少不満が無いではないんだけど、絵は素敵で探偵がどうなったか、等の軽妙なユーモアも笑えるし、評判通り愛嬌のある良い映画だと思う。

リング

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あからさまに説明的な台詞やちょっと強引な話運び(実は超能力者で…って所)など怖さを減じている点はあるが、なるほどこれがJホラーの歴史を更新したんだなあ、と感心する所は多いです。

「呪いのビデオ」っていう仕掛けが相当に上手いと思いました。
基本的にビデオを見るっていうのは一人もしくは少人数でしかできないパーソナルな体験で、それが恐怖をかきたてるし、それゆえに起こす行動が本作のラストにある脚本のヒネリと一致しているっていう…。お見事!
ラストなんか松島奈々子が骸骨抱きしめる絵が良いものだからコロッとはまっちゃったよ。
先述の通り完璧に洗練されてるってわけじゃないけど脚本に光る所は結構ある。

あと、もう何度も色々な所でパロディにされちゃってる貞子がTVから出てくる所も怖い!もう本当怖い!
「観る者」と「観られる者」っていう僕たちをある種安全圏に置いている構造を破壊しやがるんですよ!
だからショッキングだし、本当に夜中に一人でトイレ行けなくなる!

貞子というキャラクターについても大変興味深かった。
バイオレンス描写で一番怖いのが傷だったり死体だったりするように、貞子もまた人間の業による被害者なんだよね。彼女自身多分悪い事は何にもしてないが、その怒りや怨念に共感や説得力が宿ってしまう分より怖くなる。
(バックボーンを一切描かないタイプの怪異もあるだろうけど…)

ただ、やっぱりこの貞子に関しては散々パロディのネタにされたり(「君に届け」とか)、おそらく続編等でその出生や人となりも明かされて恐怖の象徴としては解体されちゃってる気はする。
おまけにブラウン管TVが薄型液晶になったり、YouTubeニコニコ動画が出てきて、僕たちが映像を観る事に対する認識が少し変化して、そのパーソナル性が薄まっている分、やや怖さが減っているのかもしれない。


うーん、そこらへんを考えると、貞子3D…厳しくないかなあ。