アメ文中部支部大会

今回は名駅にある名城大学のサテライトキャンパスを使用。駅からすぐ近くで大変便利なのだが、今年いっぱいで使われなくなるのだとか。オフィス周辺には、受賞がらみのポスターが貼られていたり、パンフレットが置かれていたりする。午前は研究発表2件、昼の総会をはさんで、午後はカナダ文学についてのシンポジウムと野谷文昭氏による特別講演(プログラムはここ)。シンポジウムにはカナダ文学会会長の佐藤アヤ子先生も登壇してくださった。昨年のアメリカ文学会全国大会でのシンポ、中部支部でのマンローをめぐるワークショップと、このところカナダ文学について学ぶ機会が多い。今日もアトウッドの3部作について、多文化主義とは異なる立場を模索するマイノリティ作家たちについて、カナダの先住民文学についての話を聞くことができ有意義だった。野谷先生の基調講演は、ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』中の「読まれなかった手紙」に着目し、その作品とボルヘスの「裏切り者と暗殺のテーマ」およびシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』(およびプルターク)のつながりを指摘し、その中でもとりわけ、ガルシア=マルケスボルヘスとの関係について検討するという興味深いものだった。『予告された殺人の記録』の書評では、そのジャーナリスティックな性格に注目が集まり、作品の持つ仕掛けが見過ごされがちであったそうで、そのことに対する批判という意味合いもあり、また、ラテン・アメリカ文学のラテン・アメリカ以外の文学・文化とのつながりに光を当てる試みでもあるということだった。たまたま先日、授業でブルームの「影響の不安」説を扱ったこともあり、講演を拝聴しつつ、ボルヘスとガルシア=マルケスの関係にも「影響の不安」というようなものが考えられるのだろうかといったことを考えた。また、事前に、これもたまたま『予告された殺人の記録』を再読したが、実に見事な構成にあらためて感心するとともに(アンヘラとサン・ロマンの物語はそれを逸脱するわけだが——そしてそれには意味があることを講演で知ったが)、殺害されたサンティアゴ・ナサールがアラブ系であることにも興味をひかれた。あと、冒頭の描写にはアガメムノン(とエリオットの「ナイチンゲールに囲まれたスウィーニー」への言及があるのではという気もする。よい講演を拝聴することができてとてもよかった。どうもありがとうございました。

今回の大会のプログラムは、午前の発表がダンティカとベロー、シンポジウムがカナダ文学、特別講演がラテンアメリカ文学と、かつての大会のラインアップとはかなり異なっている。不満に思われた会員もいたかもしれないが、アメリカ文学と他の文学との接続性の高さを表すものと言えるようにも思う。

終了後、駅ビル12階のレストラン街にある店で懇親会。関東よりおいでの先生方も参加してくださり、和気藹々の会となった。(料理も悪くない。)2次会は少人数ですぐとなりの和食の店へ。皆さん、どうもお疲れ様でした。

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学会でまた残念な訃報を耳にした。ご冥福をお祈りする。