東北大学に着任してから1年。初年度が今日で終わります。あっという間すぎる! 来年はもう少しこのブログも更新できると良いですね。
東北大学は、研究するにはとても良い環境で、いくつもの新しいプロジェクトを始めることができました。どれもここから5年、10年と長い見通しで発展させていく企画です。そのうちの一つは、東北大学のSOKAP-seeds研究課題に採択されました。
全く新しいメンバーでの共同研究です。海のものとも山のものともつかない、未知数の研究ですが、楽しくやっていきたいと思っています。
ほかにも色々と気の長い企画をスタートしました。こういう企画は、期間雇用でいつ研究を辞めざるを得ないかわからないなかではできなかったので、テニュアに就いて水を得た魚のような気持ちです。*1今やっていることが成果に繋がるまで時間はかかりますし、自分が何をしているのかもよくわかっていませんが、楽しく新しいことに挑戦してきたいと思っています。
教育については模索中です。学生はとてもモチベーションが高く、若い人の話を聞くのはいつも面白いです。ただ、「すぐに結果を出さなければならない」「正解を探さないといけない」という切迫感もあって、そのへんをもう少し楽になってもらえる方法はないかな、と。私の教えている倫理学なんて、90分の授業中に一つの答えが出るわけはなく、何年も何十年も抱えて、ちょっとだけわかるような学問です。なので、少なくとも学部では倫理学の入り口に立って、自分の中の問いに気づいてもらうだけでいいと思っています。そういう意味では、私は自分が思っているより、のん気で気が長いところがあるんでしょうね。ゆるい感じで息切れせずに長く学ぶことを続ける良さをお伝えできればなあと考えているところです。
大変だったことはいろいろありますが、まだ秘密。古くて伝統ある場所に飛び込んでいて、どう関わるのかは難しいところがあります。それと同時に、国際卓越大になったこともあり、外からの改革路線も流れ込んでいます。カオス。でも、私は安定的な場所よりも、こういう流動的・過渡的な場所の方があっていたかな、と思います。変わって行かざるを得ない組織の中で、いろいろと経験していきたいと思います。
「意外と自分はタフだった」というのが感想です。でもそんなナルシシズムに浸っていたら、ひどい風邪(たぶんマイコプラズマ)にかかって、寝込んだので油断は禁物だなあ、と。来年度も頑張っていきたいと思います。
学会に出たり、論文を書いたりもしていました。そのへんも告知できればいいんですが、なにもかも後追い……。例年、9月にヨーロッパ犯罪学会に主席するのですが、今回はパスして、英国日本学会に出ることにしました。英国のカーディフ大学で開催予定です。
初めてのウェールズ! 共同研究のパネル発表で、ウェールズ研究が専門の方と一緒に行きます。とても楽しみ。
研究は領域横断型・学際型の最たる形になっており、今後はどういう学会で報告するのか悩ましいのですが、水俣などの日本の事例は(国際的な)「日本学」に身を寄せてやっていこうかと思っています。文系だけではなく理系の研究者とも共同研究しているので、発信媒体は今後も模索していきます。*2
東北に移ってからは、少しずつこちらの歴史や文化についても勉強を始めています。一番励まされるのは、赤坂憲雄さんの著作です。赤坂さんは山形の東北芸術大学に着任してから、独学で民俗学をはじめ、あちこちを旅するスタイルで研究を進めました。赤坂さんの残してくれた足跡をもとに、自分もほそぼそと学んでいきたいと思っています。なお、一番励まされた点は、40手前に東北に来たことをきっかけに免許をとって運転を始めたことです。私は20年以上のペーパードライバーですが、赤坂さんを見習って車の運転をできるようになるのが一番の目標です。東北には車があればいける素敵な場所がたくさんあるので……
*1:同時に、期間雇用は本当に良くない。私は非常勤の頃は、スケールの大きい研究なんて思いつきようもなかったです。研究者の雇用の安定化を望むし、自分もできる範囲で貢献したいと思っています
*2:なお、国内の哲学・倫理学の学会はすべて辞めました。1年経ってみたけど、何も困らなかった。就職すると運営委員などで貢献を求められますし、女性の場合は特に役職者としてのニーズがあるのは知っていますが、自分が今までされてきたこと、言われてきたことを考えると、この身から怨念が吹き出してとても残る気にはなれなかったです。「多様である」という演出に利用されたくもないし。若手の女性研究者には申し訳ないけど……(でも、特に女性研究者は無理して哲学・倫理学の国内学会にいる必要ないですよ、と声を大きくして言いたい)