富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陽春麺

fookpaktsuen2018-07-24

農暦六月十二日。曇。陋宅のバスルームにTOTOのウォシュレット入る。経緯は六月二日に綴つた通り(こちら)。この間、バスルームのトイレ使へず狭い洗面所のトイレ使つてゐたが携帯用のウォシュレット重宝。早晩に尖沙咀世界の山ちゃん。銅羅湾は三度ほど訪れたが尖沙咀は初めて。今日はご一緒したお相手がお相手だつたので手羽先の骨で井形の構築はせず(といつても前回ほどの力作はそれ以上のものはアタシの力量では無理)。バーBに一盞。氷なしのハイボールバーテンダーY君にお願ひしたら「冷凍のウヰスキーの方がいゝですね、ライかブラックニッカのいずれか」でブラックニッカ。山ちゃんでは手羽先しか食べてゐなかつたので小腹減り帰宅前に北京水餃店に寄り陽春麺。具なしの麺(日本でいへばかけそば)をなぜ陽春麺と呼ぶのか、ふと気になり調べると深秋の少し気温の穏やかな日を陽春と呼び(日本でいへば小春日和)陰暦十月なので陽春は「十」の掛詞。具なしの汁麺の価格が昔も安く十分銭だつたので、それを陽春麺と呼ぶやうになつた*1、と実に奥ゆかしいこと。北京水餃店の陽春麺は餃子茹でてほんの少し餃子の出汁が出た白湯に塩を少し加へただけのスープに麺と茹で野菜でとてもシンプルだが、これが美味。
▼脚本家・橋本忍追悼で山田洋次監督(朝日新聞)が橋本忍先生に「男はつらいよ」のモチーフを相談したときのこと。

東京の下町に、頭も顔もまずい男がいましてね、美しい娘に恋をするんだけど、当然振られる。男は悄然と去っていきます」。すると橋本さんは「それから?」と聞くんです。「それだけです」と答えたら「君、それは前段だろ。ここからが面白いんだよ。その娘が殺されて江戸川に浮いたり……」と言う。傷つきました(笑)。そして傷つきながらも気づきました。橋本さんと僕とでは、資質が違うんだ、前段だけでも映画は作れるんじゃないか、と。

忍先生の提案に沿つてゐたら「男はつらいよ」は寅さんがふらりと現れるところ必ずや妙齢の女性の他殺体、その事件に巻き込まれる寅さんとなつてゐたのか……。

⇧リクライニングシート。昔はこれがあれば倒すのが当然だったが最近は飛行機の狭いエコノミークラスでも、わざわざシート倒さない人が増えてゐるのではないかしら。

*1:「陽春」一詞的由來,據《辞海》釋:「農曆十月為小陽春,市井隱語逐以陽春代表十。」明人所著《五雜俎‧天》中云:「即天地之光,四月多寒,而十月多暖,有桃李生華者,俗謂之小陽春。」據此可見,農曆十月的別稱為小陽春,故又更進一步地引申陽春為十數之意。而陽春麵剛上市之時,價格正好是十分錢一碗,好事者遂將這十分錢一碗的光麵冠以陽春麵美名,取其十分錢與農曆十月皆為十數之故。