SFマガジン考課表4月号

神林長平「ジャムになった男」……評価不能
 《戦闘妖精・雪風》シリーズ第三部開幕編。第二部を読んでいないから、いまいち理解しがたいところがあってどうにも。評価不能
森岡浩之「変転」……-2
 《星界の断章》。-1に近い-2。葛藤も文章も浅さが目立つ。90年代のSF復興に多大な功績があったシリーズだけに正直辛い。
菅浩江「天つ風」……0
 《博物館惑星》。ウェルメイドな作品だが、余話の域を越えることができていない。
北野勇作「カメリ、テレビに出る」……+1
 《カメリ》もの。ほのぼのとしつつ異様な風景を描写する力はさすが。
野尻抱介「大風呂敷と蜘蛛の糸」……+3
 日本編唯一の非シリーズもの作品。的確な描写力を十分に生かし、半歩前に実現するかもしれないアイディアを淡々とかつ丹念に描きながら、それに満足せず最後により高いヴィジョンを見せてくれた傑作。おれもエンジニアとしてもうちと頑張ろうという気になったですよ。
飛浩隆「クローゼット」……+2
 《廃園の天使》もの。「ラギッド・ガール」に続く〈数値海岸〉前史とでも言うべきか。こちらはねちっこく華麗な描写で生理的イヤ感を刺激するSFミステリ・ホラー(なんだそりゃ)。普通なら年間ベスト級。

コニー・ウィリス「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」……+1
 +2に近い+1。ウィリスのコメディ作品の持つ独特のリズムがいいですね。いや、さすがにあの男キャラはどうよと思ったが
R・A・ラファティ1873年のテレビドラマ」……0
 タイトル通りの作品。ラファティとしては意外とおとなしい、ふつうの奇想作品でやや拍子抜けか。
テリー・ビッスン「オールモスト・ホーム」……+1
ジョージ・R・R・マーティン「グラス・フラワー」……+1
 「クローゼット」と微妙にネタが被っていて、古び方とかそういった点で比較してしまうとやや見劣りがするのは事実。でも、マーティン(と酒井昭伸の翻訳)の格好良さは十分出ているのでこの点数。
グレッグ・イーガンプランク・ダイヴ」……+2
 イーガンならではのスーパー・ハードSF。ファインマン・ダイアグラムやらの説明はいまいちよくわからないが、なんとなく圧倒させるパワーはさすが。あとトンデモが入った人(ではないか)を描かせるとなんでこんなに上手いんだろう > イーガン