琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ドラことば〜心に響くドラえもん名言集 ☆☆☆☆

ドラことば心に響くドラえもん名言集

ドラことば心に響くドラえもん名言集

 この年になって「ドラえもん」なんて……という時期は、僕にも20歳くらいから10年間くらいあったのですけど、最近あらためて、「僕はドラえもんが好きなのだなあ」と思い知らされています。吉本ばななさんの『デッドエンドの思い出』(僕はばななさんの近著のなかでは、この本がいちばん好きです)、とか、この『ドラことば』にも寄稿されている辻村深月さんの『凍りのくじら』とか、「子どもの頃に『ドラえもん』を観て、読んで育ってきた人たち」が、『ドラえもん』をモチーフに新しい物語を創造していっているのを見ると、なんだかすごく嬉しくなってしまうんですよね。ああ、でも今の子どもたちにとっては、『ドラえもん』も僕が子どもの頃に観た『サザエさん』みたいな、レトロ趣味の物語になってしまっているのかなあ。
 しかし、この本を読んでいて思ったのですけど、子どもの頃に読んだ本って、けっこうずっと心に残っているものですね。僕は、毎年六月がやってくると、

 ぼくのいちばんきらいな六月!
 一年をつうじてもっともふゆかいな六月!

 という、のび太が「祝日もなく、夏休み、冬休み、春休みにも関係ない六月」を嘆く言葉(このあと、祝日をつくる「ひみつ道具」が登場します)がなぜか心にずっと刻まれていて、毎年六月になると、「一年でもっともふゆかいな六月!」って心のなかで呟いてしまうんですよね。この話って、そんなに「歴史的名作」ってわけでもなくて、話そのものはほとんど記憶にないのだけれど、この「六月は悲しい月」っていうイメージだけは、ずっと僕も抜けないのです。春休みや夏休みが無くなってしまった今でも。
 この本では、ほんの1コマや2コマしか引用されていないのですけど、それでも、「ああ、こんな話あったよなあ」と、すごく鮮明に思い出せるんですよね。本当に、僕は『ドラえもん』と一緒に生きてきたんだなあ。
 それにしても、「さようなら、ドラえもん」は、何コマか見ただけでもいまだに泣けてしまいますね……
 とりあえず、僕にとってはものすごく大事な本です。

デッドエンドの思い出 (文春文庫)

デッドエンドの思い出 (文春文庫)

凍りのくじら (講談社ノベルス)

凍りのくじら (講談社ノベルス)

藤子・F・不二雄先生の「人気まんがのかきかた」

 ↑のエントリで紹介している『ドラことば』という本のなかに、藤子・F・不二雄先生のこんな言葉が載っていました。

 人気まんがを、どうやってかいたらいいか。そんなことが一言で言えたら苦労はしないのですが、ただひとつ言えるのは、
普通の人であるべきだ。
ということです。(中略)かたよったものの見方や考え方をする人は、大勢の共感を得ることはできない。だから、まず最初に普通の人であれ、というのはそういう意味なのです。
 そのうえで、ただ本当に普通の人であったのでは、まんがなんてものはかけません。プラスアルファ――なにか自分だけの世界を、ひとつは持っているべきである。それは、必ずしもまんがに直結したものでなくてもいいのです。釣りが上手であるとか、模型作りに熱中するとか、SF小説を読みあさるとか。そういったことが、その人の奥行きになって、しごくありふれたものにプラスして、何か個性みたいなものが生まれてくるんじゃないか、と思うのです。 (『藤子・F・不二雄自選集 ドラえもん』上巻(小学館))

 いや、僕は「突き抜けてアブノーマルな天才的な表現者」っていると思うんですよ。思いのままに書いたものが、多くの人に受け入れられるような人も。でも、「普通であること」は、けっしてマイナス面ばかりではない、ということなのでしょう。「特別な人間じゃないから」「自分には才能がないから」と言ってあきらめてしまうのは簡単だけれども、実際は「普通の人」でも、ちょっとしたプラスアルファを身につけることによって、十分に成功できる「可能性」はあるのだ、ということなのですね。これって、「人気ブログの作り方」でも同じなのかもしれません。

ドラえもん・のび太の恐竜2006 ☆☆☆☆

映画ドラえもん のび太の恐竜 2006 [DVD]

映画ドラえもん のび太の恐竜 2006 [DVD]

 実は『ドラえもん映画』を観たのはかなり久しぶりだったので、やっぱり最初は声に戸惑いました。それと、絵の雰囲気もけっこう違いますよね。より「動きの面白さを追求した」ということなのでしょうけど、正直最初は「なんだか『ドラえもん』らしくないなあ」と思いながら観ていました。
 この『のび太の恐竜』のオリジナル版って、僕の記憶のなかでは「最初に自発的に映画館で観た映画」だったので、よく覚えているのです。このリメイク版を観ながら、歴代の『映画・大長編ドラえもん』はタイムマシンのシーンがけっこう話題になっていて、「CGが使われている!!」なんて今となっては当たり前のことで大騒ぎしていたな、というようなことを思い出しました。あのときは、虹色の光の渦みたいなのでタイムマシンの航路が描かれていたんですよね。
 このリメイク版は、やっぱり30男の僕にとっては「マンガだしな」と思うところもあったんですけど、逆に「マンガだからこそ」の素晴らしさもありました。映画版は、個々のキャラクターのカッコいいところが見られるのですけど、この作品のMVPは、やはりジャイアンでしょう。小学生がこんなこと言うのかよ!とツッコミたくもなるのですが、ジャイアンは、本当に不器用で困った男なんだけれども、受けた借りは必ず返すし、どんなに苦境に陥って、自分が生命の危機にさらされても「仲間」を見捨てない。なんで僕はジャイアンなんかに感動させられてるんだ?と不思議な気分になりつつも、僕はジャイアンを尊敬してしまいました。ほんと、バカだなあジャイアン
 あと、オリジナル版は「結局最後はタイムパトロールかよ!」と子供心に腑に落ちない感じだったので、それについては今作のほうが言い感じでした。主題歌の『ボクノート』も良い曲です。スキマスイッチいいですよね。

 ところで、神木隆之介のセリフが本当に「ピューイ」だけだったのは、この映画の声の収録の光景を想像すると、正直かなり笑えます。誰でもいいとは言わんが、わざわざ神木くんを使わなくても……なんて強引な声優の人選なんだ……

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