『ガラスの仮面殺人事件』

ガラスの仮面殺人事件
辻 真先 橘 いさぎ

4592860012
白泉社 1991-07
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by G-Toolsisbn:4592860012
ガラスの仮面殺人事件』を読んだ。表紙のデザインを見せられないのが残念。まんま白泉社コミックスです。が、いちおうハードカバー。スーパーとポテトのシリーズ第X弾*1。あいかわらずふたりの仲は進展していないものの、ポテトが煙草を取り出すシーンがあって、衝撃。薩次、いつからそんな子になっちゃったの!
 えーとお話は、東西大学*2の演劇サークル劇団バブル座の公演「ブリキの仮面」を取材に来たキリコが、ポテトのところでその話をしてみると、タイミング良くポテトは白泉社から「ガラスの仮面殺人事件」というミステリーを書けと言われて困っていたところなので、取材がてら連れて行ってもらうという導入に始まり、バブル座の面々が「ブリキの仮面」の稽古中、次々死んでいくという「ブリキの仮面」のあらすじのとおりに死体役の女優が死んじゃっててさあ大変! というもの。正直、ガラスの仮面殺人事件というタイトルである必要がどこにあるのかと。
 Dr.スランプ(感想)のとき同様、このタイトルと内容で誰が喜ぶのかと疑問に思った。もっともこちらのリストhttp://www.hagimoto.com/tsuji/list90.htmlを見ると、この年は文庫落ち含めて18冊出版しているし、もしかするとスケジュール的に苦しかったか、断れない仕事だったのかもしれない。
 と、勘ぐってしまうのは、結局ポテトの書いたガラスの仮面殺人事件が出てこないからだ。おまけに天本英世を紹介して「仮面ライダーの地獄天使に扮した俳優」*3と書いてあったり、あとがきで自作を「課題・中学殺人事件」と書いてしまったりしているのも、時間がなかったかもと思わせる一因。またイラスト依存のヒントを出してるのに、イラストがその意図を理解してないんじゃないかというようなもので、せっかくのコンビネーションも機能してると言い難い。
 この作品で分かったのは、ヤマトテレビの社長の息子が佐倉正敏って名前であることと、91年当時、コードレスホンを携帯電話と呼んでいたこと*4
 気になったのは、鈴木刑部と水上刑事のコンビ。長友助教授とその友人である「パイレーツ」のバーテン。そして演劇会の女王、木下七重女史。彼らが他の作品に出てくるのかこないのか。もう作品自体よりそんなことの方が気になって気になって。
 ま、そんなわけでそれほど楽しめなかった。キリコとポテトが出てきたからまあ読めるというレベルかも。
 あ、表紙見つけた。http://images.google.com/images?q=%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%81%AE%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6&num=50&hl=ja&lr=lang_ja&sa=N&tab=wi

*1:分かりません。順番的には「殺人事件」殺人事件の次らしいので、合本・青春殺人事件のリストと照らし合わせると18作目くらいの見当になるようだ。

*2:他の作品にも出てくる大学です。学長の息子、東秀介を主役にした話もいくつかある。で、大学のあるところは経堂。

*3:地獄大使http://homepage1.nifty.com/knighto/Resources/jigoku.htmlまでだったら、死神博士と間違えたんだと理解できるんだが、なぜ天使になったのかが分からない。手書きなら天と大は読まれ間違う可能性はあるが、「ブーゲンビリア〜」の解説によれば、84年段階で辻真先はすでにワープロを導入しているわけで、天と大を取り違えるなんてあり得ないと思うんだが。

*4:もしかしたら読み間違え、あるいは辻真先のミスかも。

『ブーゲンビリアは死の香り シンガポール3泊4日死体つき』

ブーゲンビリアは死の香り―シンガポール3泊4日死体つき (新潮文庫)
辻 真先

4101355010
新潮社 1984-06
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by G-ToolsISBN:4101355010
ブーゲンビリアは死の香り』を読んだ。キリコの兄、克郎が主役級の扱いを受けるシリーズ。ヒロインは新人ツアーコンダクター萱場智佐子。シンガポールを舞台に繰り広げられる連続殺人。克郎は死体消失トリックを解けるのか? というようなお話。
 解説は赤川次郎赤川次郎のですます調のエッセイを昔何冊か読んだことがあったので、懐かしい気分になった。が、内容はところどころ外れている気がしなくもない。辻ミステリーに共通しているのが「爽やかさ」だとか、「ほのぼのとした後味を残す」とか。かなり嘘だ。それから辻真先の文章のどこにも苦労の跡が見られないというのは、本当でも「そこが辻ミステリーの魅力なのだ」というのは間違いで、それこそ辻真先の欠点だと思われる。
 例えば本作でもメインの事件とは別に、「登場人物が勝手に動き出す」という陳腐な格言を徹底させて、最後にキャラクターが作者を出し抜くという趣向が書かれているのだけれど、たとえばこちらの感想http://www1.kci.ne.jp/~nonoda/0210.html#bu-gennbiriahasinokaoriを見ても分かるように、ただの遊びとして流されてしまう。
 だから本来赤川次郎の作品とは方向性がまったく違うにも関わらず、「似ている」と思われ、辻作品を面白がれる読者に作品が届かなかった可能性は高いと思う。
 という話とは別にして、「ブルートレイン、北へ還る」の老夫婦が再登場していて元気そうだったのが嬉しかった。他に名前だけだけど那珂一平も登場するし、声だけだけどキリコも出てくるので、本作から辻作品を読み始めるのはちょっと損。普段三枚目な克郎に、事件が解けるのかよ? というのが最大の興味でもあるし、せめてスーパー・ポテトのシリーズと「ブルートレイン〜」を読んでから読むべき。って言ってもそもそも本作が新刊で手に入らないという悲しい現実があるわけなんだけど。
 それにしても克郎は新聞記者の割に、人の話を鵜呑みにしすぎである。ラストは読んでて悲しかったぞ。シリーズだと分かっていても。せめて確かめてあげなさいよ。

 あ、忘れてた。なぜか俺の読んだ本には目次が付いてなかった。シリーズの他の作品を調べてみたところ、他のには目次があった。ということはこれ、落丁本なんだろうか。それとアマゾンのデータが1984年1月発行になっているけど、実際には6月25日だった。ここら辺は自分用メモ。