Hatena::ブログ(Diary)

メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

20140206(Thu)

[]超ハードSF小説『白熱光』をやっと…やっと読み終えた… 超ハードSF小説『白熱光』をやっと…やっと読み終えた…を含むブックマーク 超ハードSF小説『白熱光』をやっと…やっと読み終えた…のブックマークコメント

■白熱光 / グレッグ・イーガン

白熱光 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

はるかな未来、150万年のあいだ意思疎通を拒んでいた孤高世界から、融合世界に住むラケシュのもとに、使者ラールがやってきた。衝突事象によると思われる惑星地殻の破片が発見され、未知のDNA基盤の生命が存在する可能性があるというのだ。その生命体を探しだそうと考えたラケシュは、友人パランザムとともに銀河系中心部をめざす! 周囲を岩に囲まれ、〈白熱光〉からの熱く肥沃な風が吹きこむ世界〈スプリンター〉の農場で働くロイ--彼女は、トンネルで出会った老人ザックから奇妙な地図を見せられ、思いもよらない提案をもちかけられるが……現代SF界最高の作家による究極のハードSF。

最近巷のSFファンの間で「こりゃ難解だわ!」と話題になっているグレッグ・イーガンのハードSF、『白熱光』をやっと読み終えた。読み終えた、というよりも「とりあえず最後まで文字を追った」という状態なのであるが…。

お話はというと、広大な銀河を舞台に、2つの物語が進行する形になっている。

ひとつはDNA由来の知的生命とソフトウェア知性がデータとして生きる百万年後の未来が描かれる。銀河腕状部に存在する知的生命群によって形作られた「融合世界」から、銀河中心部に存在する「孤高世界」への、探求の旅を描いたパート。銀河の歴史上「孤高世界」は、「融合世界」に対して頑なにアクセスを拒んできたが、ある日「なんかうちらの領域に未知の生命の痕跡のある岩の破片があったんだけど、別に調べたかったら調べにきたっていいんだぜ?」とかいうかなりツンデレな知らせをもたらしたのだ。主人公ラケシュは人格をデータ化し、長きに渡る旅を経て「孤高世界」に辿り着き、そこで未知の生命の探査を始める。このパートでは、簡単に数万年単位の時間が経過し(イーガン世界では光速は決して超えない)、データ化された登場人物がその容器として入るのがいつも人間の形をしているわけではない、という部分がイーガンらしい。

もう一つのパートは「ハブ」と呼ばれる大質量天体を巡る小惑星「スプリンター」に住む体長数センチの昆虫に似た知的生命体が主人公。このパートこそが難物。「スプリンター」の中は多数の虫食い穴のようなトンネルが行きかっており、昆虫型生命体はこの穴の中に住んでいる。ここで登場するロイという女性とザックという老人が「スプリンター」内の重力偏移に興味を持ち、様々な実験を繰り返すうちに、この「スプリンター」の成り立ちと、「スプリンター」に待ち受ける危機に気付く、というもの。このパートでは危機を回避するために、単純な力学から(多分)相対性理論までの物理学を、ロイたちのたった一世代で検証し法則を見つけてゆく、という凄まじいスピード感が醍醐味。昆虫型とはいえキャラクターは人間らしく造形され、奇妙に感情移入しやすい。数センチの昆虫(型生命体)の死に心が痛む、というのもSFならではかもしれない。

この『白熱光』、何が難解なのかというと、「スプリンター」に住む知的生命体たちが、物語全体のほぼ半分のページを費やして物理法則の実験を行っているのだが、この実験についての記述が、そこそこの物理学・幾何学の知識がないと読み解けないであろうものなのである。この異星人たちは、物理・幾何の理論や知識がほぼゼロの段階から実験を始め、仮説を立て、検証し、推論を行い、法則を見出してゆく、ということを延々と繰り返し、それは徐々に複雑なものとなっていく。ただ、物語の中でそれらは、地球人ならよく知るような物理学・幾何学の用語を一切使わずに行われるのだ(異星人だからね)。

即ち、この物語のキモとなるもののひとつは、「さて、この異星人たちは、何を検証し、どんな法則を見つけたのでしょう?」という、パズルの如き謎かけを楽しむものとして成り立っているのである。だからもともとの理論や法則をきちんと知っている方には、この上なく知的興奮を与える作品となることではあろうが、そういう知識の足りないオレの如き者にとっては、どうにもこうにもチンプンカンプン、ということになってしまうのである。そういった部分において、難解だ、といわれる作品となっているのだ。そんな内容だったため、四苦八苦しながらの読書となり、読み終わるのに1ヶ月もかかってしまったオレなのであった…。

しかし、かといってこの小説がつまらなかったというと、実はそういうわけでもない。もとよりイーガンのSF小説は好きで、これでも一応全部読むことは読んでおり(ここだけちょっと自慢。他に自慢出来るところがないんだから許してやっておくれ…)、あまつさえかなり楽しんでいる。この『白熱光』はこれまでのイーガン小説と若干趣きは異なるが、しかしこれまでのイーガン小説の流れからすれば、必然的に辿り着いた内容だとも言える。

ところで蛇足だが、ある意味非常に難解なこのSF小説、ネットであれこれ探してみたらこの作品の科学的な側面を実に丁寧に解説してくれているサイトがあった(JGeek Log/白熱光メモ)。おお、なんと素晴らしい方が世の中にはいるのであろう…とよくよくサイトを見たらちょっとだけ面識のある方だったのでさらにびっくり…。

Connection: close