津波被災の記録111

東日本大震災から2年、疑問符だらけの東北の復興 消えた震災がれきの謎

震災がれき発生量が当初推計されたほど多くなく、処理が予定より早く終わる見込みとなったのは良いことだと思うかもしれない。だが、過大な推計に基づいて過大な施設を建設し、過剰な人員を雇用したことは税金のムダ遣いである。

最大の震災がれきが発生した宮城県は、県下の12市町からの震災がれき処理受託量を1107万tと見積もって、県下を4ブロック8処理区に分け、処理をゼネコンなどで構成されるジョイントベンチャーにプロポーザル(企画提案型入札)で発注し、仮設焼却炉29基(焼却能力1日4495t)、破砕・選別施設12カ所を建設した。言葉は悪いが、いわゆる丸投げである。ところが、今年1月の見直しでは受託処理量が582万tに下方修正され、減少率は47%にもなってしまった。つまり、単純計算で仮設処理施設の能力は半分でよく、予算も半分で足りたことになるのである。

それにしても仮設処理施設を着工する前に震災がれきの発生量を見直すチャンスはなかったのだろうか。需要の変化を検証せず、オーバースペックの無用な施設を既定方針どおりに建設して税金をムダ遣いしたというのは、どこかで聞いた話である。一度計上した予算は減額せず、ムダとわかっても予算を使い切るのが仕事だと勘違いしている職員は国にも自治体にも少なくない。予算をチェックすべき財務官僚も、一度付けた予算は減額しようとしない。それどころか、予算を余らせることを厳しくとがめる。予算を減額補正したり、不用額や事故繰越を発生させたりすることは、予算査定が甘かったことになり、財務省の無謬(むびゅう)主義に傷がつくからだ。この無謬主義という幻想を守るために、どれほどの予算がムダになったことだろう。

 災害廃棄物処理事業と同じような過大見積もりによる復興予算の暴走は、今後の復興工事でも起こるに違いない。それを事前にチェックする機能は行政にはないのである。

 被災地からすると結論として、「行政の無能」を意識されることを主たる目的として書いていると感じます。環境省が実需官庁ではない部分の指摘であれば、それほど的を外れているとは思えませんが、意図的なまでにずらしているのは如何なものだろう。
 この記事が、単に行政だけを叩くだけが目的だとは思われないのは、石巻広域処理事業が様々な省庁の予算が組みあがっているとともに、電力不足への対応や林業対策事業(バイオマス)も絡まっていることがすっぽり抜け落ちているのは不自然です。無駄の象徴として、仮設焼却炉を上げていますが、どうなんでしょう。
 つまり電力不足解消と逆再分配を抑止する部分への批判が本音なのではないかと、被災地からは見えてしまいます。しかも請負ではなく業務委託である「がれき処理」は、予算を確保しても実績査定でしかお金が支払われている事実は伝えていないのは何故でしょう。課題と見られる予算は確保はしましたが、税金を効率的かつ適切に支払うため、業者が融資を受けて支払が先行するのです。なんでそういう実務が抜け落ちてしまうのか分りません。
 発災により喪失した雇用を埋めることは認めない厳しい姿勢に加え、土地の所有権確定手続きが軽んじるているのが感じられます。東京にいると、財産権を一切無視する強制執行がいとも簡単に考えられるようです。当初は、浸水地域すべての家屋等を対象としていたわけですから、修繕した家屋等が算定されれば、がれきの量は減るでしょうし、復興が進んでいることになります。
 また、がれき処理を行いながら東京を含む地域への電力を供給するのがムダと断じられたり、チェックが無く税金が支出されているような印象を与える書き方で、今後もムダな公共投資がある印象を植えつける締め括りは、大都市圏の震災復興に対する拒絶反応と見るべきなのでしょうか。


釜石モデル(案)つづき

③処理施設について、焼却施設は釜石市清掃工場(栗林町地内)を廃止せずに利用することが決定済み。また、沿岸広域クリーンセンター、新日鐵バイオマス(火力発電所)での焼却も可能です。宮城県石巻広域処理事業約2400億の場合、仮設の焼却施設(バイオマス系)を意図的に造る事を前提としているような場合は、処理総額が跳ね上がることは確実ですね。
 宮城県が、瓦礫処理を奇貨として、恒常的な県営発電所(バイオマス)を瓦礫処理の国の予算で、コンセンサスを省略して遣る可能性は無いわけではないのでしょう。勘ぐりもすぎますが。


津波被災の記録50

 編集委員・田村秀男 増税は再生の道閉ざす 2011.8.23 03:08

 独立自尊の精神に燃える彼ら被災地住民を唖然(あぜん)とさせているのは、何とも不透明ながれき処理である。

 東日本大震災で生じたがれきの処理は被災自治体の要請に応じて国が代行する特別措置法が12日、成立した。最終的に費用は全額国負担となる。処理を急ぐ菅直人政権が、地元の見積もりを丸のみした。事業を管轄する環境省には処理コスト・方法を精査した形跡がみられない。民主党政権関係者も「がれき処理をこれ以上遅らせるようだと、地元や世論からたたかれる」と処理計画を査定する気がなかった。

※でも増税と結びつけるのは些か強引のような気がする。
 東京等の大都市に本社地を有することは納税地も同じなわけです。被災地の公共事業によって、完成工事高と利益を伸ばせば、消費税と法人税等を東京等で納めることは自明のことです。で、それを回収して別の地方等に配分し直すために税金の回収効率を高める増税が何で悪いのかわかりません。皆様の税金を投資し運用し国債の利息を支払いながら、回収もすばやくというのは、投資効率からすれば凄く良いように感じますけど、民間なら褒められるような投資スキームが何で官はダメなのかよくわかりません。
 資金を回収させず、別の投資に流用したいというなら、その民間投資スキームのプロセスを開示するのも同様に必要なんではないでしょうか?
 
 確かに、現政権の政治手法が異常と感じるのは、意図的に遅くすることで、資本の論理による回復に格差をつけ、内需の在り様を改変したいというのが見え隠れするからです。
 時間を資本力によってカバーできない中小零細企業にとって、国の支援なしには時間を買えないのです。多くの中小零細企業の経営者が公務員叩き「霞が関」「地方公共団体」「関連団体」を叩くことは、自分達の復興の最大の障壁です。「古い公共」でしか、弱者は救済されない事を今一度確認し直す機会と私などは感じます。


日本製紙、被災の石巻工場でがれき受け入れ 発電用燃料に利用20110822SankeiBiz

 日本製紙グループ本社は22日、東日本大震災で発生した廃木材などのがれき受け入れを開始したと発表した。石巻工場(宮城県石巻市)の自家発電用ボイラーの燃料として利用する。今後、宮城県と正式に契約を締結し、年間12万トンのがれきを燃料として活用する。
 がれきは、石巻市のほか、東松島市と女川町の宮城県2市1町から受け入れる。がれきは破砕処理して燃料とし、石巻工場内のボイラーで燃やす。
 石巻工場は現在、津波被害で操業を停止しているが、自家発電設備は復旧している。20日にボイラーの連続運転を開始、21日からボイラーの蒸気を使った発電を始めている。発電した電力の一部は東北電力に供給することにしており、一般家庭約10万世帯に相当する最大4万キロワットを供給することにしている。

がれき処理 一気に加速/石巻地域 3年で2000億超/東北3県20110726建設通信

震災復旧・復興に向け、大きな障害となっていた「災害廃棄物(がれき)」の処理が、被災地域で一気に進み始めた。東北3県で発生した総がれき量の4分の1が集中する宮城・石巻市地域で、3年間に2000億円(委託見込み額)を超える大規模処理事業の委託先が8月末には決まるほか、岩手県も7市町村の処理業務代行分約386万tの処理計画策定を応用地質に委託した。今後、価格と地元雇用・地元企業連携を評価対象にした、全国ゼネコンの提案競争が過熱するのは確実だ。
 復旧の障害になっている、がれき処理で、価格だけでなく地元企業との連携や地元雇用を重視した枠組みを採用する動きが被災地で広がっている。


約1924億で鹿島JVと契約へ/石巻ブロック災害廃棄物処理業務/宮城県20110908建設通信

宮城県は、災害廃棄物処理業務(石巻ブロック)の委託契約締結案件を2011年度9月県議会に提出する。契約予定者は鹿島・清水建設西松建設佐藤工業飛島建設・竹中土木・若築建設・橋本店・遠藤興業JVで、委託予定金額は1923億6000万円。工期は2014年3月25日まで。
 参考業務規模は2289億6010万9000円に設定していた。
 東日本大震災に伴う石巻ブロック2市1町の災害廃棄物処理業務を委託する。推定処理量は石巻市が約628万t、東松島市は約156万t、女川町は約51万t。また、石巻市約200万m3と東松島市は約180万m3の津波堆積物の処理も含む。


宮城県、石巻ブロック災害廃棄物処理の鹿島JV/工期4ヵ月以上短縮20110916建設通信

県内経済への波及効果では、収集運搬14社、中間処理13社、建設関連42社の地元企業計69社への再委託を予定。重機(1日当たり150台)やダンプトラック(420台)、船舶(49隻)などの資機材も地元を中心に調達する計画だ。
 地元雇用者数は延べ67万4000人で、1日当たり1250人を採用。通勤手段の提供や技能・重機操作の定期講習会開催、生活必需品の販売所、保育所の設置など地元企業との連携による働きやすい職場環境づくりを目指す。


石巻地区がれき処理加速化/放射能基準の見直し要望/自民、週内に政府へ提出20120412建設通信

東日本大震災で発生した『災害がれき』の処理について、自民党の「がれき処理加速化プロジェクトチーム」(PT、小里泰弘座長)は11日、「がれき処理加速化提言」をまとめた。党内手続きを経て今週内にも自民党として政府に提出する。処分計画が大幅に遅れている「石巻ブロック」の処理を、広域処理や域内処理だけに任せず、県内他ブロックの処理を加速させ、その余力を使って焼却を引き受ける打開策とともに、再利用や広域処理が進まない最大の理由である、放射能風評を払しょくするための国の役割を一層押し出すことを求めているのが最大の特徴だ。