悪党!悪党!悪党!/ニンジャスレイヤーの敵キャラを語る

ニンジャスレイヤー 聖なるヌンチャク 【ドラマCD付特装版】 (キョート殺伐都市)

ニンジャスレイヤー 聖なるヌンチャク 【ドラマCD付特装版】 (キョート殺伐都市)

「えー、ここ数日は冬も本気出してきやがったなって感じの厳しい寒さで、貼るカイロがないと駅までたどり着くことも困難なほどですが、さてそんな本日のテーマは話題のTwitter小説『ニンジャスレイヤー』の敵キャラクターです。他作品のキャラとかにたとえながら説明するんで」
「キミたとえ話すきだよね」
「脳がそういう構造になってるんだと思います。じゃあはじめますね」
「どうぞどうぞ」

ソウカイヤとシックスゲイツのゆかいなクズたち

「ニンジャスレイヤーって作品は基本的には、孤独なヒーローが悪の巨大組織と戦う特撮ドラマ的な話なんですよ。んで、現在第3部が連載中なので当然ながら絶賛抗争中の悪の巨大組織も3つ目に突入してる」
「ほほう」
「第一部ネオサイタマ炎上の主要な敵組織はソウカイ・シンジケート、通称ソウカイヤでした。ここはカリスマ的ワンマン経営者ラオモト・カンに率いられたネオサイタマ裏社会で最大の犯罪組織で、ネコソギ・ファンド社を表看板として使いながらヨロシサン製薬やオムラ・インダストリといった暗黒メガコーポレーションと癒着しネオサイタマ経済を牛耳っていました」
ネコソギ・ファンドの社主にしてソウカイヤの首領ラオモト・カンは物欲・名誉欲・権勢欲にあふれた俗物極まりない50代くらいの雰囲気の禿げたオッサンで、ビジネス第一ですが本人のカラテもすごい」
「カラテのすごいハゲ…平八?」
「どっちかと言うと餓狼伝説ギース・ハワードですかね?」
「あー」
「七種類のニンジャソウルをその身に宿した巨魁ラオモト・カンとの最終決戦はめちゃくちゃ盛り上がります」
「能力バトルの強敵の王道だよね、複数能力者」
「そうそう。そのラオモト・カンの懐刀がニンジャスレイヤーの仇敵ダークニンジャことフジオ・カタクラで、こいつは第2部・第3部にも出てきます。こいつはこいつでいろいろ出生の秘密とかを抱えてて、もうひとりの主人公として物語を牽引するようになります。ええと、セフィロスだと思ってください」
「ええ、セフィロス?FF7?」
「ええ。まあ、ダークニンジャが己の対決すべき宿命を自覚するのは第2部中盤になってからで、第1部時点では単なる敵側の強力なエージェントって以上の存在ではないですけど。その分、ラオモト・カンとダークニンジャをのぞく第1部のメイン敵となっているのがソウカイ・シンジケートの威力部門シックスゲイツに所属するニンジャ達です。で、こいつらが!実に!素晴らしい!」
「力説だね」
「ソウカイ・シックスゲイツってなんなのかっていうと要するにるろうに剣心十本刀みたいなエリート戦士団です。トライガンのGUNG-HO-GUNSでもいいですけど。でもボスとの距離の近さを考えると十本刀の方がより近いですかね。で、僕が十本刀で一番好きなのは飛翔の蝙也なんですよ。さらに言うとトライガンガンホーガンズで一番好きなのはマイン・ザ・EGマイン」
「EGマインてあの瞬殺されたやつ?」
「そうそう」
「ちなみに俺はナインライヴズが好きかな」
「ああナインライヴズもいいですよね。あれが出てくる内藤泰弘はどうかしててすごい」
「うん。ああごめんね続けてください」
「シックスゲイツのどこがいいってまず構成メンバーのみながみな、揃って人格が最低なんですよ。安心のクオリティ。少年マンガの第一話に出てくるチンピラなみにシンプルなクズです。一般人を見れば拷問しようとするし仲間を見れば陥れようとする。でも1エピソード使いきりの悪役はそのくらいわかりやすいほうがいいと思うんですよ。わかりやすくて、しかも面白いってのが理想」
「まあGUNG-HO-GUNSはわりとまともな奴が多いよね」
「しかもそんなに強くないんですよねシックスゲイツ。そのへんも十本刀やGUNG-HO-GUNSっぽい。シックスゲイツのニンジャは、強さはまあまあ程度だし人格的にはクズです。でもラオモト=サンには忠実で、任務にはプライドをもって臨んでいますし、それぞれに戦闘スタイルが特徴的で面白いし、カラテの鍛錬をよく積んでいることは疑いない。残念ながらニンジャスレイヤーがバカ強いので正面から戦うと歯が立たないことも多いですが、プロの戦闘者として意地を見せる奴もいる。プロフェッショナルの意地という点ではジョジョ5部の暗殺チームも連想させます」
「ああプロシュートの兄貴」
「いやイルーゾォとかホルマジオとか」
「マン・イン・ザ・ミラーとリトルフィートか。地味だなァ」
「そのくらいのキャラ格の連中なんですよ。そういうのがずらずら出てくる。構成メンバーは6人なんですが負けて死ぬと下位構成員から補充されるのでぜんぶで20人くらい出てきます」
「シックスゲイツのもう一つの特徴としてだんだん弱くなるんですよね。ニンジャスレイヤーにどんどん殺されてくもんだから、ソウカイヤ本拠地での最終決戦の際のシックスゲイツは半数以上がサイボーグ手術で下駄をはいた中堅下位程度のニンジャで、古参メンバーがそれを嘆きつつ奮起したりします。ニンジャスレイヤーは時系列シャッフルで語られる作品ですけど、第1部の全貌がわかってくるとシックスゲイツという組織がたどった歴史がおぼろげに浮かんできて、これも非常に味わい深い。シックスゲイツがニンジャスレイヤー第1部の真の主役だったと言っても言いすぎじゃないと思います」

ザイバツグランドマスターのみなさん

「ええと、次は第2部の敵組織の話をします。第2部キョート殺伐都市でニンジャスレイヤーと争うのはザイバツ・シャドーギルド。漢字で罪罰影業組合。あの、こんな風な」
「罪・罰・影と。ダジャレなのね」
「シャレてるんですよー。単純な規模ではソウカイヤをはるかに上回る巨大組織で、表の顔は持たない完全な秘密結社。キョート共和国を裏から支配しています。ちなみに忍殺のキョートは日本から独立した国家になってんですよね」
「組織の首領はロード・オブ・ザイバツですが、第2部を通じて主要な敵としてニンジャスレイヤーの前に立ちはだかるのはその下の大幹部、グランドマスターです。グラマスはね、ちょっとすごいですよ」
「ふんふん」
「9人が登場するザイバツグランドマスターのうち大参謀パラゴンと市場操作&ネットセキュリティ担当のヴィジランスを除く武闘派7名は全員がラオモト・カンに比肩する強大なニンジャでして、ただならぬオーラと洗練されたニンジャ装束をまとったナイスミドル達、まあつまり十傑集なんだと思ってください」
「おお出た。十傑集」
「どいつもこいつもすさまじく強いですし、最後の最後までキャラ格が落ちる奴がいませんでした。ほんとみんな強いし怖いし悪いしカッコいいんですよ。ヴァニラ・アイスみたいな消滅系即死能力者とかガリアンソード使いの戦闘狂とかカラテ・ミサイルを極めてる奴とか」
「カラテ・ミサイル?」
「あ、ニンジャスレイヤーでは波動拳かめはめ波みたいな飛び道具を総称してカラテ・ミサイルと呼んでます。威力も利便性も高いけど基本的に燃費が悪いのがカラテ・ミサイルの欠点とされてるんですけど、グランドマスター・パーガトリーは血中カラテ…つまりMPが突出して高いのでいくらでも撃てるんですよ」
(また謎なワードが…)
「ワンマン社長のラオモト・カンのもとで基本的には一致団結していたソウカイヤと違って、ザイバツではグランドマスターたちが派閥を作って暗闘を繰り広げています。グランドマスターの下でザイバツの階層的位階制度を構成している、それぞれなりの野心や頑張りや悲喜こもごもを抱えたマスター位階のニンジャやその他の一般ニンジャたちが、みんな結局はより上位のニンジャによるママゴトめいた政治闘争の駒に過ぎないというのが、ザイバツニンジャ全員に共通する悲劇性でありニンジャスレイヤー第2部の物語の特色となっています」
「なお十傑集を率いてたのはバビル2世でしたけど、ザイバツの首領ロード・オブ・ザイバツは部分的に一般に開放されて観光名所にもなっているキョート城の本丸に住んでいる老人で、古き歴史を誇るザイバツの支配者にしてショーグン・オーヴァーロードの末裔、ザイバツにおける権威であり象徴なんですが…」
「…それってなんかあれっぽくない?千代田区の…」
「ビジュアルがともだちです。20世紀少年の」
厄いな!それなんかあるでしょ!?あえて聞かないけど!」
「まあザイバツってのはそんなとこなんですが、第2部にはもう一人紹介しなけりゃならない悪役がいまして、それが死刑囚に強力なニンジャソウルが憑依した無軌道大量虐殺ニンジャ・デスドレインです。『ダ―クナイト』のジョーカーと『ブロブ』の人食いアメーバが合体したような奴ですね」
「なにそれ怖い」
「さすがに単独ではバットマンシリーズにおけるジョーカーのキャラ格には及ばないですけど、キョートという都市の生んだ悪の精粋・混沌の体現としてザイバツ支配にケンカを売ったこと、それからこいつ邪悪なわりに妙にさびしがりで無軌道大量破壊ニンジャ・ランペイジという相棒やストックホルム症候群めいて付き従う無表情少女アズールを道連れとして得たこと、これらによってぐんとセクシーな魅力を放つキャラになってるんですよねー。悪役が属するコミュニティがまるごとコンテンツとして面白いのは忍殺の売りだと思いますね」

オシャレ悪の組織アマクダリ

「最後に第3部不滅のニンジャソウル。敵はアマクダリ・セクト、漢字で天下って書きます、はい。まだまだ連載途中で明らかになっていない点も多いですが、ここは既存の犯罪組織に代紋を貸してどんどん取り込んでいくフランチャイズ型の悪の組織であり、またその中核であるアマクダリ・アクシスとその幹部アクシスの十二人もネオサイタマの主要な陰謀屋たちの寄り合いのようなものであるようで、ソウカイヤやザイバツよりもずっとファジーな組織となっています。アクシスの十二人については要はゼーレだと思ってください」
エヴァの?」
「はい。ただしこのゼーレは最終的な決定権がネルフの方にあって、かつネルフの司令官がゲンドウじゃなくて碇シンジです」
「ああシンジ君パイロットじゃなくて司令なんだ?」
「まあ性格はシンジ君とはまた違いますけどね。ラオモト・カンの遺児ラオモト・チバを旗印としてソウカイヤの残存勢力を結集し、そこから勢力を伸長させたのがアマクダリでして、ラオモト・チバは帝王学を修めたオカッパあたまの美少年、まだまだ幼くて作戦が失敗するとキレてわめき散らしますけど、時には王者の器の片鱗を見せることもあります。チバ君の傍らにはアガメムノンっていう美形のキール・ローレンツみたいなやつが補佐について実権を握っており、この辺の組織内の権力争いも今後どうなるのか期待されます」
「アマクダリの面白いところは2つあって、まずソウカイヤやザイバツよりもさらに人間社会との癒着が進んでます。そもそもトップのラオモト・チバはニンジャじゃないんですよね。また、アクシスの十二人にはネオサイタマ知事の秘書や軍の顧問、宗教界の実力者といった表の世界での影響力を持つ人物が多く含まれてます。その象徴的な事例として、現在アマクダリの主導によってネオサイタマとキョート共和国は戦争をしてるんですよ。現在のニンジャスレイヤーは戦時下のネオサイタマを描いてるんです」
「へえ!そいつはすごいね」
「戦争の危機からそのまま開戦したときはちょっとびっくりしました。でも原作者のボンドとモーゼズは日和ったりしないのです。んで、アマクダリの2つ目の特徴がその設定のオシャレさ」
「オシャレっていうと?」
「そもそもアマクダリってネーミングが、合法・非合法問わずネオサイタマのさまざまな組織にエージェントを派遣…つまり天下らせて影響力を拡大していくセクトの基本方針と、アマクダリ・アクシスを漢字表記すると天下中枢になるって点、そして少年君主ラオモト・チバに雷撃の使い手アガメムノンが付き従う構図がニニギとタケミカヅチに重なるという天孫降臨神話のモチーフとのトリプル・ミーニングになってるんですよね!これはオシャレだ」
「ほほう。それはカッコいい
「チバがニニギとすれば、ニンジャスレイヤーの身に宿るナラク・ニンジャはスサノオに相当するのではないかとか、愚連隊サークル・シマナガシの連中はヒルコにあたるのではないかとか、今後この日本神話モチーフがどう展開していくのか目が離せないのです」

まとめ

「この辺がニンジャスレイヤーの現状ですね。ちなみにニンジャスレイヤーは第4部の存在が明らかにされておりまして、ニンジャ名鑑っていうニンジャ紹介コーナーによって先んじて紹介されている第4部登場ニンジャから推察するに第4部の敵はリアルニンジャと呼ばれる人知を超えた怪物たちと、彼らによって構成された組織ダーク・カラテ・エンパイア、そしてニンジャにとってのニンジャ存在…すなわちヌンジャであるニンジャの祖カツ・ワンソーなのではないだろうかと予想されます」
「なんかもうわけわかんないなそれ」
「まあ、まだなんもわかんないですけどねー」
「ふーむ。ちなみにベスト悪役は誰だと思うの?」
「あー、いい悪役いっぱいいますから決めづらいですけどねー。でもあえて決めるならクローンヤクザかなー」
「クローンヤクザ?」
「暗黒メガコーポのヨロシサン製薬が伝説的ヤクザの遺伝子をもとに開発したバイオ兵器という設定で忍殺の1〜3部を通して登場するんですけど、ビジュアルはアクション映画とかにおける黒服、立ち位置はショッカーの戦闘員、設定はスターウォーズクローントルーパーというまれにみる傑作ザコ敵です」
「おお…。いや、じゃあニンジャの中だとどうなの?」
「うーん、シックスゲイツの空を飛ぶ陰険野郎ヘルカイトか、狂人にして侠客であるベトコンニンジャのフォレスト・サワタリか、けなげビッチのパープルタコ姉さんか、最初にして最強のグラマスだったイグゾーションか…。あ、ちなみに忍殺は出し惜しみしないので最強の敵が最初に出てきます」
「それはそれは」
「でもいちばん好きなのはバイセクターかなあ。過去に出てきたとあるニンジャが8割サイバネ化して復活した再生怪人で、こいつが登場する第3部の“サツバツ・ナイト・バイ・ナイト”は忍殺におけるベストエピソードだと思います。うーん、それにワイルドハントとかボーツカイとかアースクエイクとかモスキートとかも…」
「なるほどねえ。ちなみに主人公を例えて説明するとどんなやつなの?」
「ああ、暴走するエヴァ初号機パイロットがアメコミのパニッシャー、みたいな感じです」
「怖いなそれ!」


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