不完全な世界の完全なシステム、そして王のUTSUWA/実ミリとガチャクラとアイカツと忍殺とオーフェンとログホラを比較してみる
発表時期が近くて構造が似てる作品を表にまとめてみた。発表年(書籍の発売年)順。ついでにARMSとエヴァとウォッチメンも表に当てはめてみた。
実在性ミリオンアーサー | ガッチャマンクラウズ | アイカツ! | ニンジャスレイヤー | 魔術士オーフェン原大陸編 | ログ・ホライズン | ARMS | 新世紀エヴァンゲリオン | ウォッチメン | |
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都市 | キャメロット | 立川市 | スターライト学園 | ネオサイタマ | ラポワント市 | アキバ | ニューヨーク | 第三新東京市 | ニューヨーク |
拡散したもの | アーサー | ハンドレッド | アイドル | ニンジャ | 魔術士 | 冒険者 | キースシリーズ | ||
聖剣 | エクスカリバー | NOTE | おしゃもじ&マイク | グンバイ | オーロラサークル | ARMS | エヴァンゲリオン | コスチューム | |
宰相、システムの管理者 | マーリン | 爾乃美家累 | 光石織姫 | アガメムノン | オーフェン | シロエ | キース・ブラック | 碇ゲンドウ | オジマンディアス |
擬人化したシステム | ニムエ | 総裁X | アルゴス | マルカジット | 黒いアリス | MAGI&赤木リツコ | |||
若王 | 剣サー、技ーサー、魔ーサー | 一ノ瀬はじめほか | 星宮いちごほか | マヨール、ヴィクトール、ラチェット | ログホラ年少組 | 高槻涼 | 碇シンジ | 2代目ナイトオウル | |
幼王 | コンスタンティン | ラオモト・チバ | 赤木カツミ | ||||||
騎士 | ランスロット | ジョニー別府 | ネヴァーモア | イシリーン&エッジ | 直継 | 葛城ミサト | |||
先王 | ウーサー | 神崎美月 | ラオモト・カン | チャイルドマン | 碇ユイ | コメディアン | |||
幕臣 | スターライト学園教師陣 | アクシスの十二人 | 魔術学校&戦術騎士団 | 円卓会議 | NERV | ||||
諸侯 | 11人の支配者 | 立川市長ほか | トップデザイナー | 暗黒メガコーポ | サルア市長ほか | 大地人諸侯 | |||
魔女、もうひとつのシステム | モルゴース | ベルク・カッツェ | 夢咲ティアラ | ドラゴン・ゲンドーソー、ロード・オブ・ザイバツ | カーロッタ・マウセン | 濡羽 | キース・ブルー | キール・ローレンツ | |
魔女の末娘 | モルガン | 音城セイラ | ドラゴン・ユカノ | 白いアリス&久留間恵 | 渚カヲル | 2代目シルクスペクター | |||
暗殺者、王国の審判役 | モードレッド | ベルク・カッツェ(スカーフ) | 涼川直人 | ニンジャスレイヤー | ベイジット・パッキンガム | ブリガンティア組 | 新宮隼人 | 加地リョウジ | ロールシャッハ |
暴徒の王 | リエンス王 | 梅田さん | 三ノ輪ヒカリ | デスドレイン | ボニー・マギー | ウィリアム・マサチューセッツ | モーロック | ||
探索者 | ダークニンジャ | カナミ | 高槻巌 | ||||||
音楽担当 | ほぼ全員 | ほぼ全員 | DJタニグチ父子 | 五十鈴 | |||||
先住民 | 妖精 | 宇宙人 | リアルニンジャ | ドラゴン種族 | 古代種 | ||||
超越者/来訪者 | J・J・ロビンソン | カツ・ワンソー/ザ・ヴァーティゴ | 神人/魔王 | 典災/航海種 | アザゼル | 使徒/アダム&リリス | Dr.マンハッタン | ||
発端 | 第一次〜第三次戴冠作戦 | マスカレードの活躍 | Y2K | アイルマンカー結界の消失 | 大災害 | アザゼルとアリスの融合 | セカンドインパクト | キーン条例の制定 | |
戦争相手 | 外敵 | キョート共和国 | 革命闘士/リベレーター | ゴブリン | 使徒 | ソ連 |
・なにかしらの力の拡散・流出が起きている。拡散した力は一概に劣化品とは言えないものの、本来あった唯一性は損なわれてしまっている。ミリオン化。
・社会を運営し人びとの生存を支えていくためには優れたシステムが必要なんだけど、システムは本質的に非人間的なものなのでいずれどこかで無理が出てひとを殺すことになる。それをやむおえない犠牲と割り切って善意でもってシステムによる支配を推し進めるのがシステムの管理者である宰相。
・宰相のそばにはシステムの一部が人格を持って具現化した存在が控えていることが多い。
・夢と可能性をもった若き王。システムがひとを犠牲にすることを否定するが、システムが必要なこと自体は自明であるため、その理想の及ぶ範囲は存在は限定的・例外的なものにとどまらざるを得ない。逆に言えば理想を奉じてどこまでゆけるか、どれだけの人々・物事を背負えるかという射程範囲がすなわち王のUTSUWA。
・王のUTSUWAの範囲を決めるのが暗殺者=王国の審判役。王国の審判役の存在は王の将来における限界を証明するとともに、逆説的に今現在の王の正しさを保証するもの。
・いずれ必ず人を殺すシステムを用いながら完全性を求める宰相はいずれ必ず人を殺すし、人を殺さないためには完全性を捨てて限界を受け入れなければならない。アーサーの王国はいつか必ず滅ぶ。
・宰相も若王も体制側の陣営を同じくする人間であるが、若王はいずれ宰相と対決する必要がある。
・若王は宰相に反抗してゆくことになるが、幼王は宰相の秘蔵っ子であり、宰相の計画の鍵である。
・王の証が聖剣。
・若王・幼王ともに今で未熟であるためとくに戦闘力面でのサポートを行う騎士が側に付く。
・先王と諸侯(と宰相)は若き王との対比としての大人世代であり、乗り越えるべき障害として立ちふさがる。ロングスパンの物語だと彼らはかつての主人公たちだったりする。
・未熟かつ限定的な存在である若王に対する存在として、先王はひとりで万能な存在として描かれるが、しかしひとりで全てを背負うことは不可能であり先王の治世はどこかで破綻している。すでに故人であることも多い。
・諸侯は一定の支配領域を持つ地元の有力者で、実力はあるがちょっと考え方が古い。こいつらに認められることが若王の当面の目標になる。
・若王が複数存在する場合もあるが、その場合もその中での首位となる人物は存在する。
・システムの管理者である宰相への対抗者として、代替システムの管理者である魔女が存在する。もともと宰相が状況に応じて味方になったり敵になったりする存在なので、魔女もまた状況に応じて敵になったり味方になったりする。宰相のシステムが現在の世界を基本的に支配しており、魔女の管理するシステムは代替的・副次的なものに留まる。かつて宰相と争って負けてたりとかする。魔女の勢力にも秘蔵っ子はおり強大な力を持つがこれも敵になったり味方になったり。
・暗殺者は魔女の勢力によって生み出され、宰相および若王の所属する体制側のシステムに潜り込んだ存在。しかし独自の意思を持って動くようになり、自分自身で認めた王である若王を支持、また若王が道を誤った時にそれを正す役割につくことに。
・暗殺者は宰相と魔女の両方のシステムを裏切っているので孤独な存在と言える。
・暗殺者は仮面ライダー型のヒーローの変形である。またブギーポップのような世界の機能の一部としてのヒーローであるとも言える。
・基本的に完全な悪役のいない話、それぞれの正義のある話であり、そのぶん正義を奉じない人々、悪漢・パンクス・アナーキストなんかの受け皿として暴徒の王が存在する。そりゃ土地の豪族である11人の支配者からすればリエンスは受け入れられんよ。
・システムは超常の技術が根幹にあるのでそれをもたらした超越者や先住種族が存在することになるし、またそうした世界の謎を探求する人物が配置されることもある。
・ある種の閉鎖世界SFであることも多く、であるがゆえに世界を渡りあるく存在が登場することも多い。
・都市が舞台であり、背景で戦争をしていることが多く、音楽家が重要な地位を占めることもある。
・以上がミリオンアーサーの構造になるんだけど、ミリアサの整理のされっぷりって半端ないので同系統の作品にもこの構造を適用していくことができる。
おそらくまず力の拡散と宰相、それに若王と暗殺者あたりが重要であり、他のポジションはそれらとの対比で自然と定まってくるものなんだと思う。
・ガチャクラは宰相と魔女が同じシステムとそれに関わる人間たちへの解釈を巡って綱引きをする話だけど、ほかの作品と比べると最少の力がかなり弱く、若王と同じ位置にある。
・アイカツは別に活劇でも政治劇でもないけど、アイカツシステムとスターライト学園という体制の存在感が非常に強いのでミリアサ的な構造が発生している。星宮いちごの登場を契機にストイックで頂きには一人しか立つことができない美月的な孤高のアイカツから、多くの有力アイドルが並立する中での要の位置にトップアイドルが存在するいちご的なアイカツへのシフトが起こっていると理解できるし、涼川さんや三ノ輪ヒカリの存在感の強さも納得できる。リエンス王も地下アイドルを目指すべきだった。
・ニンジャスレイヤーは暗殺者が主人公であり、宰相はストレートに悪役なんだけど、そのぶん幼王であるチバが非ニンジャでありニンジャスレイヤーによって殺害されることのない位置にある。たぶんチバは最後まで死ぬことなくシステムの肯定的な側面を背負わされることになると思う。あるいはそれが罰の代わりということになるのではないか。
・オーフェンでは、若王と暗殺者をマヨールとベイジットとすることもできるが、同時にオーフェンとマヨール、あるいはサルアとマジクと考えることも出来る。またオーフェンを宰相とすると魔女に当たるのはカーロッタもしくはレティシャだが、オーフェン(とその娘の三姉妹)を魔女として大統領邸を体制側のシステムと見ることも可能。これは作中の時間軸にそって登場人物の立ち位置が変化していくため。
・ログホラの場合シロエは宰相か若王か微妙な位置にいるんだけどどっちかってーと宰相の方に近いと思う。んで宰相の立ち位置はヘイトを集めやすいのでシロエ君は早めに若王ないしは真の黒幕を見つけたほうがいいと思う。でないとヘイトが集中して死ぬ。
ログホラは他の作品より閉鎖世界性が高いので航海種周りのネタがどう展開するのか興味深い。
・比較にとARMSとエヴァとウォッチメンも各要素に分類してみた。ただ、根本的なところで黒幕が企んでいる計画が、人類社会を存続させ運営していくためのものではなくて人類をいっぺんに浄化するためのものであるという点で大きな違いがあり、それゆえ発生するドラマも違うものとなる。またARMSやエヴァは作品を構成する要素が非常に多いためミリアサ構造に当てはめてみることもできるが、ARMSの巴武士のように表の中に当てはめる先がない主要キャラクターもいるし、エヴァの登場人物たちは割と無理して表に分類してるので作中での役割は表の要素のみに回収しきれないことが多い。ウォッチメンは王や暗殺者の力が弱くてとりあえずシステムの管理者が勝利しちゃう。
とはいえ、表にしてみるとARMSは主人公チームの各人に立場・役割の違いとか、シンジとカヲルのエヴァ13号機は2wingSだったんやなとかそういうことがわかり面白い。
・というよな与太をtwitterで飛ばしていましたら、構造が似てるんじゃないかという作品として『プリンセスチュチュ』と『Ruina 廃都の物語』の名前が挙がりました。あはとブギーポップや禁書目録がミリアサ構造に当てはまりそうかどうかが気になるです。
・ごく最近だと、『夜ノヤッターマン』はミリアサ構造っぽいですね。主人公は魔女の陣営。ミリオン化してるのはヤッター兵。若王が頼りないのが特徴ですが今後どう発展するのかしらん。
・気になったら見よう。一話で困惑、二話で笑顔になり、三話で真顔になる傑作。
内戦と外敵の襲来によって混迷を窮めていた大地ブリテン。王の器を計る剣、エクスカリバーに選ばれた者こそが、ブリテンを救う真のアーサー(国王)のはずだった、が・・・なんと、選ばれし者は100万にも及んだ。しかし、それこそはアーサー同士を競わせることで不要な人材を淘汰し、本当の意味で国を治める真のアーサーを選ぶため、ブリテンの魔法使いマーリンの立てた計画だったのだ。アーサーをサポートするために創られた騎士ランスロット、妖精フェイとの協力のもと、「アーサー-剣術の城-」の戦いが始まる…。