大会テーマ 『妖怪談義』再考

開催の趣旨

  いまや何度目かの「妖怪ブーム」のただなかであるが、民俗学は、この「妖怪」を学問の対象として取り上げ、真摯な研究を続けてきたと目されている。その学父である柳田國男の『妖怪談義』は、民俗学の妖怪に対する考えを示したものとして、ある時は金科玉条のごとく受け入れられ、ある時は仮想敵のごとく批判の対象となってきた。その際、常に論点となったのが、「妖怪は零落した神である」という、いわゆる柳田の「零落説」である。しかし、この「零落説」があまりにもクローズアップされすぎていたために、賛否いずれの立場の者も、『妖怪談義』を今までちゃんと検証してはこなかったのではなかろうか。この研究会では、まずはこの『妖怪談義』を、それが書かれた歴史的文脈のなかに置き直し、また柳田が参照したデータに立ち返ることで、柳田がどのような考えのもとに妖怪の研究をおこなったのかを明らかにし、その「民俗学」がめざそうとしたものはなんだったのかについて考えてみたい。

司会:司会:飯倉義之(國學院大學
日時
2014年12月7日(日) 13:30〜17:30(13:00より受付)
会場
神戸女子大学教育センター(三宮キャンパス)5階特別講義室

-JR三ノ宮駅阪神阪急三宮駅から徒歩約15分
-アクセス・地図等はこちらを御参照ください。


発表1   「「妖怪名彙」の成立過程から妖怪を読み直す」

化野燐(あだしのりん)氏(作家)

[要旨]
 『妖怪談義』の巻末に収められた「妖怪名彙」は、民俗学的な妖怪の典型を集めた「事典」として理解され、通俗的な妖怪を生み出す源となったことからも一般にもよく知られている。しかしながら、どんな妖怪をどのように集めたのか、また収集の目的がどこにあったか等の問題は未だ充分に論じられていないようである。今回の発表では、「妖怪名彙」の成立過程をつぶさに追い、また類型論的に把握しなおした妖怪を現地の文脈にもどしてやるなどした上で、柳田たちの妖怪論を読み直してみたい。


発表2   「柳田國男の妖怪研究と『妖怪談義』」

香川雅信(かがわまさのぶ)氏(兵庫県立歴史博物館)

[要旨]
 柳田國男の『妖怪談義』は、これまでもっぱら「零落説」の書物として見られてきた。しかし、柳田の妖怪研究には、大きく分けて三つの時期があり、『妖怪談義』には異なる時期の論考が収録されている。とりわけその第3期において柳田が重視したのは「共同幻覚」である。本発表では、この「共同幻覚」という視点から、『妖怪談義』、そして柳田の妖怪研究を読み解いていきたいと思う。


コメント   小松和彦(こまつかずひこ)氏(国立国際日本文化研究センター所長)


※研究大会終了後に、三宮駅近辺にて懇親会を行う予定です。

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