epiが全射にならない例

ついに圏論ブームがやってきましたね。

epiが環準同型だと全射になるとは限らないのはなんでかと聞かれたので考えてみました。

参考圏論:モノかつエピな射 再び - 檜山正幸のキマイラ飼育記
abstract algebra - Showing two ring homomorphisms that agree on the integers must agree on the rationals - Mathematics Stack Exchange

環準同型とは
1 f(a + b) = f(a) + f(b)
2 f(ab) = f(a)f(b)
3 f(1) = 1.
が成り立つ関数のことを言います。以下では2だけを使います。

例として、整数環Zから有理数環Qへの埋め込みeを考えます。

これは明らかに全射ではないです。

さらに有理数環Qから実数環Rへの環準同型fとgを考えます。

さて、eがepiであることを示すには、

f,gの定義域が整数に限られた時にf=gであるならば、
有理数全体でもf=gであることが言えればよいです。

整数n mが与えられたときに
f(n) = g(n)
ならば、
f(n/m)=g(n/m)
が言えればよいです。

以下証明 zig-zag定理というらしいです。

 f(n/m)
=f((1/m)(n))
=f(1/m)f(n)
=f(1/m)g(n)
=f(1/m)g((nm)(1/m))
=f(1/m)g(nm)g(1/m)
=f(1/m)f(nm)g(1/m)
=f(n)g(1/m)
=g(n)g(1/m)
=g(n/m)

f(n/m)=g(n/m)
となり証明が終わります。

こうしてみると、環準同型の2番めの性質が強くて、整数領域で関数を定義しても、有理数全体に関数が定まってしまうんですね。