竹熊健太郎『篦棒な人々』(河出文庫、2007年12月)
ほんとうは、このブログは専門であるドイツ文学やドイツ児童文学について、読んだ本をメモしておこうというつもりで書き始めたのだけれど、今読んでいるのが大部でなかなか読み終わらない。しかも平行して読んでいると、なおさら進まない。それで、息抜きについ読んでしまう新書や文庫本のことばかりになっている。
今日は、竹熊健太郎が1998年に太田出版から出したインタビュー集の文庫化されたものである『篦棒な人々』を読んだ。もともとは雑誌「クイック・ジャパン」の創刊初期に連載されていたもの。「呼び屋」の大物として有名な康芳夫、挿絵画家の石原豪人、今年いわゆる「おふくろさん」騒動でワイドショーを賑わせた川内康範、そしてダダカンことハプニングの前衛芸術家、糸井貫二。名前くらいは聞いていたが、詳しい経歴などはほとんど知らなかった人々だ。
篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝 (河出文庫 た 24-1)
- 作者: 竹熊健太郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/12/04
- メディア: 文庫
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ダダカンっていう人は、大阪万博の太陽の塔、そこで立てこもり事件があって報道陣・機動隊・見物人が取り巻いているところにふらりと現れて、すっぱだかで走り始めた、というハプニング(?)をやった人物なのだと。インタビューには、その準備段階として豊島重之氏のインタビューがのっている。豊島氏は精神科医であり、かつ八戸で「モレキュラー・シアター」を主催する演出家、そのほかにも芸術に広く関わっている方だ。ダダカンこと糸井貫二とは、東北大学時代に仙台で接触があったという。ぼくは大学院の指導教官が演劇の専門家だった関係で、大学院時代に豊島氏の舞台やシンポジウムなどを観たことがある。当時「絶対演劇」というスローガンを掲げて活動していたが、その理論的背景はだいぶ難解で、当時のぼくの力ではよく理解できなかった記憶があった。だがこの本のインタビューの中で、自分のめざす演劇のあり方はダダカンの存在のあり方に影響を受けていると語りつつ、「芸術」に対するダダカンの立ち位置と絡めて自分の実践(「絶対」演劇、「パラサイト」など)を説明されれば、なるほど、と思う。理解へむかう種となりそうな予感がする。
竹熊健太郎氏は、脳梗塞でたいへんなことになっていたようだが、復活した。連載が始まった相原コージとの『サルマン2.0』、これもつい雑誌を買って、読んでる。