法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

[アニメ]『電脳コイル』4話 大黒市黒客クラブ

〜女王様vs小さな魔女vsケツの青い男子〜
顔見せ話が前回で終わったので、いろいろな面で落ちるかと思えば、娯楽作品としては最もよく出来た回だった。


トリックスターたるイサコの目的が隠されていた1〜3話に対し、イジメと反撃、その戦いに乗じた情報獲得と、3勢力の目的が示されているので攻防の演出や作戦を純粋に楽しめる。ハッキングをモニターで表現し、細部は想像に任せる雰囲気は『新世紀エヴァンゲリオン』の磯光雄脚本回に似ているが、ミサイルの区別等で視覚的な表現が多く、より理解しやすく楽しい映像となっていた。
閉鎖された廊下から教室への突入、そして屋上へと徐々に移動する戦闘。屋上の机椅子*1を利用して作った物理的なバリケード*2、それを玉座のように見せる演出。……あざといといえばあざといが、色彩もレイアウトも一番良く、力を入れる配分は正しい。


ヤサコが隠していた引越しの真相は重いが、現状で友人ができているため後味が極端に悪くはならず、引きとして適度に作用していたと思う。これは後の展開待ち。

*1:少子化により、使わなくなった机を放置しているとか。

*2:イサコが物理攻撃に弱いことは、それより前に提示している。

『電脳コイル』を見続けるにあたって その2

教室内でのメール攻撃だが、そこにおける教師の立ち位置がわかりにくいという感想をそこかしこで見かけた。
要約すると、メガネを外せば被害を受けないだろう、それにメールを教師が見ているなら叱らないのは変、そもそも教室内では教師が絶対的な管理権限を持っているべきではないか、といった意見だ。
教師がイタズラに気づきつつ静観している様子はあるが、それは横に置いて補完してみる。


まずメガネを外したり機能を切るのは、ヤサコはとっさに思いつけない性格に見えるし、イサコはあえて受けて立っている様子が見える。理科室で示されたようにメガネを使う授業もあり、友人とのコミュニケーションにも必須で、ゆっくり解除する時間が取れないとも考えられる。何より、メガネの機能を切れば攻撃が無効化されるとは限らない*1
大量に表示されたメールを教師が見ていたかどうか、これは確定されてない*2。イサコが後半で透明化や分裂したように、個々のメガネで視覚化される情報そのものも操作が可能と描写されている。
最後に教室の管理権限だが、これは教師が持っていると考えるのが自然だろう。しかし、たとえば学校で契約しているのとは別の通信会社を通していると考えればどうだろう。教師に気づかれないように、無線ランをこっそり使って成年向けサイトにアクセスしているとか、現実にありそうな気がするが、どうだろうか(笑)。


徐々に補完に無理が出ているが、考証してみること自体が楽しいので問題なし。
少なくとも明言されている範囲の設定が明確に矛盾している箇所はないので、話を単純に追っても問題はないが、そこにあえて理屈をつけてみるというのも物語を楽しむ一つの方法だ。

*1:パソコンの電源を切っても、プロバイダ等と契約したメールボックスがスパムで一杯になったりする、そんな作品設定かもしれない。

*2:生徒の様子からメモを受け渡ししていることに気づいても、何が書かれているのかわからないなんてことは現実にもあるだろう。

模倣に始まる技術もある

日本テレビ系深夜の情報バラエティ『未来創造堂』で、自転車部品メーカーであるSHIMANOが世界に認知されていった流れが紹介されていた。
イタリアの有力自転車メーカー、カンパニョーロを模倣してツールドフランスに参入したが、技術力不足で失敗。改良した製品を作ったもののコピー製品と見られて自転車競技者からは敬遠。しかしマウンテンバイクの誕生に関わり、手元でギアチェンジする方式でオリジナリティを発揮。これがイギリスレースでの優勝につながり、自転車競技者に受け入れられてツールドフランスで勝利。模倣先だったカンパニョーロも手元ギアチェンジ方式を始めた……というのが、おおまかな流れ。


日本も昔は欧米のコピー国家と見られていて、今でも映画などではパクリが横行しているが、その具体例の一つとして書いておく。もちろん、模倣から独自性を発揮したという美談ではあるが、番組内でも真似と明言していた。
模倣を全否定はしないし、文化的な相互影響も当然と思う。しかし技術コピーを民族的特質と安易に結びつける考えには、正直いって辟易している*1

*1:法律や当局によって規制される程度、文化観やチェック体制、模倣先国家との交流具合……様々な原因で国ごとの違いがあるという意見は誤りではないが。