2016年冬TVアニメ各作品の序盤について簡単な感想 - 法華狼の日記で書かなかった作品をいくつか五十音順で。
『蒼の彼方のフォーリズム』
競技の重要度や人物配置で『ワルキューレ ロマンツェ』を思い出す。よく似た面白さがあるだけに、競技描写の説得力で劣っているのがつらい。逃げながらブイをタッチしていく速度勝負だけで勝てそうだし、事実その戦略が勝ちつづけている。ブイより背中のタッチでポイントが高くなるようにしたり、背中から長くのびるリボンをタッチするようにしたり、あえて相手を先行させて戦えるルールにするべきでは。
『おしえて!ギャル子ちゃん』
原作の濃い絵を上手にアニメナイズしている。しかし女子は意外と下ネタ好きという、それはそれでありがちなネタをそのままならべるだけ。第3話も簡単にまとめすぎ。少ない頁数を活かしている原作を7分間のアニメにするなら、あわせて構成も大きく変えてほしい。
『紅殻のパンドラ』
原案だけなのに、レズビアニズムや弱者への酷薄さなど、かなり士郎正宗作品っぽい。しかし実質より作画がへたれて感じるのが難。淡い色に細い線、フリルや模様のついた服、簡略作画の多用といった原作絵の再現が半端なためか。いっそアニメらしく原色を多用して硬質な描線で映像化しても良かった。
『石膏ボーイズ』
安定しているが、7分間はちょっと長い。石膏像が男性アイドルとして芸能活動するというネタは、アニメより実写が向いているんじゃないかな……
『ノルン+ノネット』
一昔前ならスタジオディーンあたりが手がけそうなところ、キネマシトラスとORANGEの制作によって格調すら感じる映像となった。対立が予告された呉越同舟ぶりや、敵味方に謎がある緊張感もドラマチックで、息抜き場面も散りばめられ、期待以上に物語も先が気になる。ただ女子3人はそれぞれ魅力的だが、男子9人以上は多すぎるかな。
『灰と幻想のグリムガル』
この作品のジャンルは、シリアス世界を進んでいく地味ファンタジーではなく、ゲーム世界で生きぬく異世界サバイバルだろう。たいていチーム分裂やリーダー独裁でドラマを動かすジャンルだが、この作品は序盤を性問題によるチーム衝突だけで引っぱったのがつらい*1。淡い背景を立体的に構築する技術や、日常や戦闘のアニメーションはすばらしいが、アニメと原作の志向性にずれがあるのでは。
『ファンタシースターオンライン2 ジ アニメーション』
進研ゼミ漫画のようにオンラインゲームを楽しむ作品。しかし真面目な主人公に意外と嫌味がなく、わりと勘がするどいため物語の進みもよどみなく、ネカマやリアルバレといったネタも重すぎない。ロールプレイをめぐるエピソードで、荒らしも日常から逃れたいのではと推測したり、けっこう物語の視野も広い。ゲーム内は3DCGでキャラクターを表現しつつ頭部だけ手描き作画する方針も、単純ながら効果的。
『僕だけがいない街』
うだつのあがらない青年が特殊能力と知識をもって人生をやりなおすという、いかにも現実逃避と非難されそう*2な要素ばかりの物語。しかしシネマスコープサイズ*3で表現された過去パートの上下マスクと、雪深い北海道の薄暗い情景のため、映像の黒味が強くて、印象は静謐。伏線配置もたくみだし、いまのところ映像作品としては一級。
『魔法つかいプリキュア!』
メインキャラクターのデザインと3DCGのEDをのぞいて、全体的にシリーズ初代へと先祖返りしたかのよう。ただ古臭いというより、あえてシンプルにリセットして、シリーズの進化をやりなおそうとしている気もする。
『霊剣山 星屑たちの宴』
モンスーノ枠。
*1:ちゃんと原作はチーム結成までの紆余曲折も長いらしい。ライトノベルコラム ラノベ漂流20年!「前島賢の本棚晒し」 - 電子書籍はeBookJapan