ローマ亡き後の地中海世界(長文)


古代ローマ滅亡後の地中海世界キリスト教イスラム教の対立軸を中心に描いた歴史小説です。

西洋史のあやふやだった部分がスカッと整理されます。

また、ローマ人の物語ほどではありませんが、リーダーシップや会社経営において気づきを与えてもらえます。

例をあげてみます。

(以下、【ローマ亡き後の地中海世界・下】より引用)

「トルコ帝国は、莫大な富はあっても海運国であった伝統はない。伝統とは、あらゆる面でストックがある、ということでる。それがないトルコが海軍が必要となったときに考えついたのが必要なときにだけ海賊をリクルートする、というアイディアであった。

必要になったとき、とは、攻略を目的とした地に兵や功城器を運送する必要が出たとき、か、その地への補給を断つ必要が出たとき、である。この時期はまだなかったが、しばらく後にはキリスト教海軍とイスラム海軍が、海上で衝突する会戦も起る。これらが「必要になったとき」なのだが、それ以外のときは、海賊をしてもらってけっこうなのである。公式の海軍ならば平時でも維持に費用がかかるが、一時期だけリクルートするだけなのだからその心配もなかった。つまり、圧倒的に安あがりだったのだ。それに、海賊としての実績しだいでは、トルコ海軍総司令官という、公式な道まで前途には開いていると示したことで、さらに海賊たちにやる気を起こさせたのだから、人材活用の策としては、これ以降も有効であることを示しつづけるのである。キリスト教世界も、やっかいな敵を持ってしまったものであった。」

(注.時期は16世紀初頭。やっかいな敵とは当時のイスラム界トップのスルタン・セリムを指す)

ここでの経営における気づきは、

1.伝統とはあらゆる面でストックがある、ということ。新規事業を行うにしても、新しいマーケットに新しいサービスを提供するのではなく、伝統=ストックを活用し、既存マーケットに新サービスを提供するか、既存サービスで新マーケットを活用したほうが有効であることがわかる。

2.自前で海軍を持たないことで、必要なときだけ必要な戦力を投入し、コスト削減を実現すること。

3.がんばれば成功するという手本をつくりやる気を起こさせるというマネージメント手法。



塩野七生さんの本は経営者や指導者にとり大変勉強になります。

同様に「ローマ人の物語」からの気づきもローマ人の物語に見るリーダーシップという題名でYahoo!ブログで更新中ですので興味のある方はご覧ください。



気づきを実践に移す例:

我が社においては、19年間の伝統がある無線事業で、既存マーケットに対し新サービス中古無線機買取販売を行う、既存のトランシーバーレンタルサービスでデジタル簡易無線登録局を機に新しいマーケットを開拓する、などで「1」を具体的に実践しています。

「2」「3」についても社員一人当たり付加価値額を経営指標にしたことや幹部育成などに活きています。