外国でも特許を取ろう

 海外で製品を製造・販売する場合,特許や商標を取得しておくべきでしょう。取得しておかないと,模倣を中止させることができないからです。また,先回りして特許や商標を取得された場合,こちらが製造・販売できなくなるリスクもあります。このように,積極的に独占する意味でも,自社が安全に製造・販売する意味でも,特許や商標を出願しておく必要性は高いです。

 このように,中小企業が海外進出するとき,知的財産権に関する戦略は不可欠です。ただし,よく「世界特許」という言葉を耳にしますが,全世界で通用する特許権や商標権はありません。外国でも特許や商標を取得したければ,国ごとに出願して権利を取得する必要があります。

 具体的には,各国の特許庁等に個別に出願する方法もありますが,日本でも同一内容の出願をしている場合,日本の出願を基礎にして出願すると便利です。特許であれば,例えば特許協力条約(PCT)に基づく出願という方法があります。この方法は,日本の特許庁に国際出願しておくと30か月以内に出願したい国を指定することで,日本に出願したのと同じ日にその国にも出願したとして扱ってもらえます。

 商標はマドリッド議定書に基づく国際登録出願という制度があり,日本の出願を基礎に指定国への商標の出願手続きが可能になります。この制度を利用すれば,日本の特許庁への手続きのみで外国への商標出願が可能になり,また,更新等商標の管理も一括して行える点で,便利です。
 
 

オーストラリアでのビジネス

オーストラリアでのビジネスは,オーストラリア最大の都市シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州か,日本人に人気のゴールド・コーストのあるクィーンズランド州などが始めやすい場所であるといえるでしょう。
オーストラリア人の特徴としては,健康志向が強く,多くの人がスポーツと健康食に興味を持っています。そこで,注目されるのは,スシを始めとする日本食ブームです。最近では,シドニー都心にはイザカヤも出始めているそうです。日本食の輸出を考えられている場合は,オーストラリア(都心部がお勧め!)も考えてみてはいかがでしょうか?
また,オーストラリアはかなりの車社会ですが,2016年にはフォード,2017年にはホールデントヨタがオーストラリアから撤退することを発表しており,今後は輸入車のみが市場に出回ることになりそうです。日本からの中古車輸出なども期待できるかもしれません。
もっとも,オーストラリアでのビジネスには,いくつかのハードルもあります。
まずは,コストが高いことで,オーストラリアの物価・人件費は日本におけるものより高いことが多いです。この点は他の国でのアウトソーシングなどを利用して節約することが必要となるでしょう。
また,食品に関してですが,オーストラリアは検疫が厳しいため,事前の調査は必須となります。
あと,税金についてですが,税率は高いものの日本とオーストラリアの間で租税条約を結んでいますので,これも事前の調査は欠かせません。
それでも,オーストラリアの経済はスピードは落ちたとはいえまだまだ伸びていきそうです。元々日本びいきの文化もありますので,ビジネスの場の一つとしてオーストラリアも検討してみてはいかがでしょうか?

シリコンバレーでのビジネス

 皆さんはシリコンバレーがどこにあるかご存知ですか?ヤフー,アップル,グーグル,オラクル等の名だたるIT企業の本社がたくさんあって名前は有名ですが,意外と知られていないのではないかと思います。

 ご存知の方もいらっしゃるかとは思いますが,カリフォルニア州の中のサンフランシスコの南方約50kmにあるエリア一帯を指します。正式な都市名ではなく,大阪で言えば「キタ」とか「ミナミ」というように漠然としたエリアを指します(もっと広いですが。。。)。あえて言えば,サンノゼ市がエリアの中にある中心都市です。1960年代頃から,シリコンが主原料のIC(集積回路半導体を扱う企業が多く進出してきたことから,シリコンバレーと呼ばれるようになったようです。

 ITバブルの頃にブームになりましたが,今でも多くの企業が起業しており,ある調査によると今でもベンチャーキャピタルの投資額が多いトップ20においてシリコンバレー地域に含まれるサンノゼが2位,1位も近隣に位置するオークランドを含むサンフランシスコ地域となっています。

この地域は,夏は暑すぎず,冬は寒すぎず,雨は少なく,さわやかで,全米で最も理想的な気候であるとも言われています。日本でも,今もジェトロが支援プログラムを用意しています。まだまだ夢を追い求めてこの地に起業しようとする企業も多いようですので,一度,検討してみてはいかがでしょうか?

Business in Texas

ダルビッシュ有のいるテキサス州は日本の大企業も多く進出している州です。

テキサス州は、全米第2位の州内総生産を誇る大規模な州です。
面積は、日本の約1.8倍もあります。

もともと、テキサスはスペイン領に属していましたが、その後メキシコに支配されました。アングロアメリカンとメキシコが、奴隷制をめぐって対立を深めた結果、テキサスは「テキサス共和国」としての独立を宣言し、後に、合衆国28番目の州としてアメリカに併合されました。

今では、豊富な資源に恵まれ、シェールガスの発見以降は製造業が盛り上がりを見せていますが、それでも依然として、金融・保険・不動産業が州内総生産の1位を占めています(2012年時点)。

ほかには、ナノテク、バイオ、航空宇宙等のハイテク分野においても、テキサスは有名です。優秀な研究者を発掘する絶好のロケーションといえます。

テキサス州は、ワシントン州ネバダ州と同じく、州法人所得税が課せられません。ただし、州法人所得税がかからないといっても、他の様々な税金はかかりますし、税率も他の州に比較して高いものもありますから、テキサス州でビジネスを行う場合には、税金の専門家に相談しておく必要があります。
いずれにしても、儲かってなんぼの税金ですから、ビジネスプランをしっかり立てて、利益を出すことを優先させましょう。

ハイテクとローテクを併せ持つ広大な地、テキサスに進出してみませんか。

海外進出セミナーを開催しました

2014年2月24日,奈良県中小企業家同友会の北和支部において,『アメリカ進出のイ・ロ・ハ』と題するセミナーを開催しました。

イロハというだけあって,これからアメリカに進出しようか,どうしようか,と考えている企業の社長や担当者が約20名集まってくれました。

以下,講演内容です。

①基調講演(辻本弁護士):今なぜアメリカか?〜アメリカの現状
②石垣行政書士:進出形態の選び方,ビザの種類,補助金の活用
③檜山弁護士:英文契約書作成の注意点
④高瀬弁護士:アメリカでの債権回収
⑤辻本弁護士:アメリカにおける知的財産権の取扱い
⑥東條社会保険労務士:海外勤務における労務管理
⑦酒匂公認会計士・税理士:アメリカの税務

いずれもとても基本的で重要なトピックでした。
会場からは,時間を忘れて熱心な質問が飛び交いました。
今すぐにでも渡米したい,という熱意が伝わってきました。

アメリカは遠い国だという先入観を払拭できたようです。

懲罰的損害賠償(Punitive Damages)

アメリカでは,補償的損害賠償(compensatory damages)の他,懲罰的損害賠償(Punitive Damages)が認められることがあります。
補償的損害賠償は,日本でも認められる相当因果関係のある損害の賠償のことです。
これに対し,懲罰的損害賠償は,実際の損害とは無関係に,制裁的に多額の賠償を課し,二度とそのようなことをしないように予防するために認められるものです。巨大な企業が,誰かの犠牲の上で大きな利益をあげている時に,懲罰的損害賠償を認めて,そのような営利行為をしても割に合わないことを知らしめるために,認められることが多いようです。

これに対し,日本では,懲罰的損害賠償が認められることはありません。

では,アメリカの会社がアメリカで日本の会社に対して裁判を提起し,懲罰的損害賠償が認められたとき,そのアメリカの会社は,日本にある会社の財産に対して強制執行をすることができるのでしょうか。

これについて,最高裁は,次のように判示しました。

1 民事訴訟法118条は,次のように規定しています。

(外国裁判所の確定判決の効力)
第118条  外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
  一  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
  二  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四  相互の保証があること。

外国判決の日本における執行の要件

外国で出た判決を日本で執行するには,どのような要件が必要でしょうか。
民事訴訟法118条には,要件が定められています。
一  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四  相互の保証があること。

これらの要件をすべて満たした時に,外国判決を日本で執行してもらえます。
つまり,実際の財産が日本国内にある場合に,外国で得た判決を債務名義として,その日本国内にある財産に対して執行することができるのです。

特に問題となるのが,3番目の「公序良俗」と4番目の「相互の保証」です。
公序良俗については,すでに,「懲罰的損害賠償」の項目で説明していますので,ご参照ください。

相互保証については,次回,詳しく検討してみましょう。