ウォッチメン


愚直なまでに原作そのままのビジュアルに、映画ならではのグッとくる選曲と、セックス&バイオレンスをプラス。膨大かつ深遠な原作コミックの上澄みをすくい取ったプロモーション・フィルムとしてならば、ほぼ文句のない完成度。
しかし、終盤の狂気みなぎる惨劇の情景や事件の真相は、凡庸なまでに矮小化されていて、原作の衝撃には遠く及ばない。
やはり後でも先でもいいから、原作も読む事を前提で、セットとして観るべき映画。


ウォッチメン スペシャル・エディション [DVD] WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books) WATCHMEN ウォッチメン Official Film Guide (ShoPro Books)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生


駄作と傑作を律儀に交互に撮り続けてきたフィンチャー監督。だが、ついにそのサイクルが終結する時が来た。
キテレツな主人公がアメリカ史上の有名人や出来事に関わ「らない」裏『フォレスト・ガンプ』の出来は、ずばり「普通」。あえて「普通」なのは分かるんだけれど、ファンとしてはちょっと寂しい。


ベンジャミン・バトン 数奇な人生 特別版(2枚組) [DVD]

レイ・ハリーハウゼン大全


映画史において「神様」「魔術師」と謳われた特撮マンは何人もいるが、ハリーハウゼンの仕事こそは、まさに「神の御業」であり「魔法」だった。
神というよりガンコ職人が語る苦労&自慢話に満ちた一代記は、「CG?ありゃいかん」という冒頭からもう読んでて嬉しくなる。
奇跡の邦訳に、ただただ感謝。


レイ・ハリーハウゼン大全

2008年度公開映画ベスト10

という訳で、ヒース・レジャーもアカデミー助演男優賞を取っちゃった事ですし、ここもぼちぼちゆるゆる再開しようかと思います。


まずは2008年度公開映画ベスト10、遅れに遅れて今年もシネパカの方で発表させてもらってます。

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

ビューティフル・フリーク


ヘルボーイ ゴールデン・アーミー リミテッド・バージョン [DVD]


大戦中、ナチスの手で地獄から引っ張り出された「悪魔の赤ちゃん」ヘルボーイは、成長して、アメリカ政府直属の妖怪ハンターになりました。
短気で単細胞、だけどちょっぴりセンチで憎めないボーイと、彼に負けず劣らずユニークな仲間達の今回のお仕事は?


パンズ・ラビリンス』の大成功で「俺の進んできた道は間違ってなかった!」と確信したのだろうか。
スペインが生んだ映画界屈指のオタク監督ギレルモ・デル・トロの、魔界への憧憬、異形への愛情は、いよいよもって留まるところを知らず、本作にも全編に溢れかえっている。
何せ恋に悩む傷心の怪人たちを優しく包む歌声が、イールズの大名曲「Beautiful Freak」なのだ。直球すぎる選曲だが、これが泣かずにはいられようか。


シンプルかつドライなマイク・ミニョーラの原作コミックからはずいぶんと作風が離れてきたが、大ファンゆえに遠慮がちで煮えきらない感のあった前作よりも、断然おもしろい傑作に仕上がった。


大ファンといえば、もう1人、今回は敬愛する宮崎駿監督への愛情も大全開。
もののけ姫』『天空の城ラピュタ』『ルパン三世 カリオストロの城』といった名作からの、無邪気な引用の数々もまた微笑ましい。


Hellboy II: The Art of the Movie ビューティフル・フリーク

OO7/慰めの報酬

カジノ・ロワイヤル』の続編というか、後編


007 / 慰めの報酬 (2枚組特別編) 〔初回生産限定〕 [DVD]


前編のラストで最愛の女ヴェスパーに裏切られ、その真意を問い質す間もなく死なせてしまったジェームズ・ボンド。彼女を操っていた謎の組織の正体を探るべく、世界を股にかけた血みどろの復讐行が始まる。


それは、ボンドが少しずつ己の人間味を切り捨てていく旅だ。
友情をゴミ箱に放り込み、ボンド・ガールへの欲情を忘れ、ついには復讐心すらも放棄する。
ラスト、ヴェスパーの想い出を雪上に打ち捨て、冷酷非情で任務に忠実、完璧な諜報マシーンと化したボンドの姿には戦慄を覚えずにいられない。


ここまでシリアスな路線を突き詰められると、次作を観るのがそら恐ろしくなってくる。
いきなり「美女と戯れ、美酒に酔う合間に、秘密兵器で敵組織とじゃれ合うように戦う、お気楽極楽スパイ」になって登場したとしても、それはそれで何もかもフッきれたボンド像として説得力があるように思うんですが、どうでしょうかねえ?