ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

演奏会の感想 (その2)

さて、忘れないうちに、先月26日のシンフォニー・ホールでの演奏会の感想を書き留めておきましょう。
今回は、リゲティの協奏曲を事前に購入してHDDで何度も予習しておいたので、庄司紗矢香さんの演奏を余裕をもって聞けました。曲を知っている観客がほとんどだったようで、変なところで拍手する人もいなかったし、最終音が響き終わるのを待ってからの拍手という、基本中の基本である重要なルールが守れていて、気分がよかったです。
珍しく楽譜立てが2本、ソリスト用に準備され、3種類ぐらいの楽譜が並べられました。そこへ、初めて見る右肩を大胆に出した真っ赤なドレス姿で、余裕たっぷりに舞台へと登場した庄司さん。調弦音出しもなく、いきなり細かく散らばる音を丁寧に紡ぎ出すような演奏。しかし、有名なコンチェルトの時とは違い、眉間にしわを寄せて、厳しく真剣な怖い顔つき。時折、指揮者をにらむようにテンポを確認していたり....。
2楽章の冒頭で、のびのびと響かせるフレーズの音色が、他のヴァイオリンと全く異なって聞こえました。まるでギターかマンドリンのような複雑なピッチカートも含めて、激しさと抑鬱の間を往復する広い音色の振幅。身じろぎもせずに舞台を見つめていましたが、あっという間に終わってしまった30分間でした。しかし、この30分のために、2年前から楽譜を準備し、演奏会が実現することを祈りながら一人で練習されたとのこと。
しかも、オーケストラ編成が、非常に小さい規模であることにびっくり。予習していた時には、楽譜なしだったので、そこまでは気がつきませんでした。作曲者によれば、忙しい現代では大編成のオーケストラが集合して充分に練習する時間の確保が難しくなっているので、ということらしいです。
オカリナの4名が、最後に立ち上がって拍手を受けました。紗矢香さんも、オケに向かって拍手とお辞儀を繰り返していました。
大阪は二日間同じプログラムが続き、その後は東京で演奏会ですが、結局のところ、演奏家にとっては、ほんのわずかの回数と時間。それですべて評価されてしまう恐ろしい体験。私にとっては僥倖ともいえる貴重な時間でした。
初日はアンコールなし。CDも、既に自宅にあるものと、大阪フィルだから故朝比奈隆氏指揮のものしか販売されていませんでした。
話題の画展ですが、ヴァイオリンを始めた5歳頃から、お母様と一緒に絵も描き始めたとのこと。そして、ヴァイオリンだけの人ではなく、演奏旅行の合間に、あちらこちらの美術館へ立ち寄っていたようです。もちろん、本を鞄に入れて...。キラリと光る人は、ここが違うんですね。
それにしても、体が小さく、音楽家の家庭に育ったわけでもないのに、ここまで極めることができるなんて、時代の流れや師との巡り合わせも幸運だったのでしょうが、何よりも努力、努力の人でもありますね。そして度胸のよさ。今後がますます楽しみです。

リゲティの協奏曲の前、つまり一曲目は、コダーイのガランタ舞曲でした。15分ぐらいの短めの曲ですが、オープニングにしては集中力を要する、東欧の色濃き音色でした。多分、初めて聴く曲だったと思います。コダーイなんて、本当に久しぶりです。懐かしいぐらい...なぜか、黒沼ユリ子さんを思い出しました。もちろん、羽仁協子さんのことも。
そして最終曲はラフマニノフ交響曲第3番。これは42分ほどの大曲で、大阪フィルの持ち味と初来日だという指揮者ヨナス・アルバー氏の本領が発揮されました。アルバー氏の指揮ぶりが、どこかシャルル・デュトワ氏に似ているのではないか、とメモ書きしておいたところ、なぜか偶然にも同じことをブログに書いている人を後で見つけました。時々、片足をピコンと跳ねるようにして、優雅さの中にも大振りな華やかさを感じさせるところがありました。プログラムを読むまで、まさかドイツ出身だとは気がつきませんでした。

最近、CDではなく、HDDに購入した曲を聴いています。ショスタコーヴィチピアノ曲エルガーのヴァイオリン協奏曲など、聴くレパートリーが増えてうれしい限りです。
と思ったら、リゲティが流れてきました。偶然にしては出来過ぎたタイミングです。演奏会の状況が彷彿としてきます。