Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国は人選を誤った

今更ながらの内容で恐縮ではあるが、、、、
鳩山元首相が訪中 領土問題の存在認めるべきと主張 (http://www.nikkei.com/article/DGXNASDE15004_V10C13A1PP8000/
かわいそうなことを…南京大虐殺記念館で鳩山氏(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130117-00001055-yom-pol

懸念されていた通り、鳩山元総理が周囲の反対を押し切り訪中した上で見事に言質を与えてしまっている。予想通りと言えばその通りではあり、その上で日本国内での批判が大きく巻き起こっている。ただ、敢えて言うならば世界的にもそのとんでもぶりを知らしめている鳩山氏であるから、広がりとしては効果は非常に限定的だと私は思う。
もちろん、それでもこの時期に行くべきではないのは間違いないし、元総理という肩書きを考えれば議員を辞した今でも自重しなければならないのは当然である。中国としては彼の言葉を最大限利用してくるであろうが、その効果は結局のところ日本に対する圧力としてだから、日本が徹底無視すれば鬱陶しいもののそれ以上ではない。では、中国がこの結果を日本以外に対して効果的に使えるかと問われれば、彼の今までの言動がその効果を大きく打ち消してくれているのが助かるところではないだろうか。日本としては、彼の言動は常軌を逸しているとして説明しなければならないのが面倒ではあるが。

まず今回の件、事実としての領土を巡る紛争があるのは確かだが、それと尖閣諸島が日本の領土であるというのは関係ない。それを言い出せば、極論ではかつて中国がアメリカに言ったようにハワイも中国領土だと言い出して領土紛争化させることも形の上では不可能ではないのである。だから、日本側とすれば中国からの侵略的行為は存在するが、これは不当な侵略であって領土紛争ではないというのが立場でなければならない。
確かに、田中−周恩来による棚上げの約束があったのは事実だろうが、それを利用して日本は尖閣を日本の実効支配下に置いた。田中−周恩来会談の時点でも、国際法的には日本の領土として主張することには不都合はないと私としては思うが、当時は日中国交正常化の折りであったこともあり益無き論争は先送りしようとしたものだろう(http://www25.big.jp/~yabuki/2012/senkaku.pdf)。

この点について、外務省OBで防衛大学校長も務めた孫崎氏のように係争地として認めるべきという意見もある(http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20121030/zsp1210301129005-n1.htm)。確かに個々の状況分析としては正しい面もあるだろうが、そもそも論として中国側から尖閣を核心的利益として位置づけるというちょっかいを出されたことであるという流れを無視した意見ではないかと思う。カイロ宣言を履行しても中国が国際法上で尖閣を領土としていた事実がなければ、それを紛争地扱いするのは問題が多い。
わざわざ日本側から焚きつける問題ではなかったが、中国側が領土的野心によりいろいろと難癖をつけ始めているのだから、日本側としても現状維持としての先送りではなくきちんとした対応をすべきなのは間違いない。
領土問題は、どんな場合であっても歴史的な問題を含めて感情と利害が絡むために解決は容易ではなく、おそらく根本的な解決はできないと考えた方が良い。現在中国が強気になっているのは経済力が向上したことが理由なのは間違いないし、領土問題は経済的視点を切り離すことはできない(チベットウイグルもそれ故に中国は何があっても手放そうとしない)のだからその意味でも根本的解決はできないと私も思う。だからこそ、最大限の自己主張をすることがまず必要である。

さて、鳩山元総理の後にも村山元総理や加藤紘一氏などを招待するという報道もあるが、両者共に日本社会に対する波及効果はもはや低く、現状において中国側としても実質的なメリットは薄いと思う。
無能なもの(あるいは自国に都合の良いもの)を歓待するのは中国の歴史的な方法論ではあるが、それはあくまで相手国内でそのものの地位を向上させるという効果がなければ意味がない。果たして、鳩山元総理を含めてそうした効果がどの程度あるかと言えば無いであろう。国際的なアピールとしては確かに使えなくはないものの、これも世界に冠たるルーピー氏のことだから効果は限定的であると思う。
だとすれば、中国が鳩山元総理を呼んだのは国内向けのパフォーマンスであると考えるのが最も妥当かも知れない(もちろん、日本向け、世界向けの効果も期待はしているであろうが)。ただ中国政府としては期待はずれであったろうが、中国国内ですらあまり好意的には捉えられていないようだ。

逆に、日本国内では中国にむしろ甘かった民主党でさえ今回の結果を経て態度を硬化せざるを得なくなり、損得を考えれば中国側も決して得をしたとは言い切れない(もちろん、日本は鳩山元総理に余分な仕事を押しつけられる分だけ損しているが)。少なくとも、中国政府が期待しているような効果は出ていないと考えて良いと思う。それは、鳩山元総理という人選だからこそという面もあり、日本国民全体にも不信感を植え付けることとなっている。今回の件を受けて、日本の世論はますます反中的な態度を強くする可能性も高い。
中国としては、今にも戦争をふっかけるような威勢の良い声を上げながらも、実のところ日本の世論を大変気にしているのは日々の報道でも感じている。鳩山元総理は中国としても利用しやすい人材ではあるが、それ以上に日本国民から既に見限られていると言うことを甘く見ていたと思う。楽な人選を行った分、効果が小さいというだけでだ。
どうもここのところの中国政府の動きは短絡的すぎて、何が歯車を狂わせているのか興味深く見させてもらっている。おそらくは、反日が制御しづらくなったことで実質的な日本とのパイプが痩せてしまったことがあるのではないだろうか。だとすれば、今後も威勢の良い言葉は出てきたとしても、それは手詰まり故の反応と考えても良いかもしれない。