市民裁判員先行記第13回/著作権法違反事件 判決公判

 京都地裁にて、本日は、Winnyによる著作権法違反事件(平成15年(わ)第2018号)の判決公判を傍聴に。せっかく、著作権法違反幇助に係る事件の公判を連続傍聴しているわけですから、その正犯の罪を問われている事件についても、その判決を傍聴しようというわけです。公判は、9時30分からですけど、傍聴券を交付するとのこと。


■傍聴前について

  • 9:00ごろ 他のところに行って、ひとつ用事を済ませてから、京都地裁に到着。
  • 9:05〜 えっ、誰も並んでいないやん。。いや、お一人いらっしゃるようですね。しかし、その他には誰もおらずに、とても傍聴券を交付するような感じはしません。並ぶ必要もないので、玄関ホールをブラブラと。
  • 9:15ごろ 裁判所の職員さんもアレヤコレヤの準備をされていましたので、とりあえず、ここに列をつくってくださいという指定のところに立っておくことに。裁判所の職員さんとも「列じゃあ、ありませんねぇ」などど、少しだけお話を。
  • 9:20〜 入廷開始。この公判においても、カバンを預け、身体検査(ポケットにモノが入ってないかどうか程度)が裁判長の指示で行われました。もう慣れたものでしたので、さっさっと101号法廷に。結局、確認した限りは、列に並んだのは4人ですね。裁判所の職員さんのほうが多いやん!?
  • 9:25ごろ 開廷前に、司法記者(報道関係者)席には、10名ほど着席。一般の傍聴人は12,3人かなぁ。あの方が奥村弁護士ですね。
  • 9:30 裁判官の入廷とともに、裁判所の職員さんが「起立っ」との掛声(←こんな掛声がかかったのは初めてです。)があり、開廷です。


■判決について
 主文は「懲役1年、執行猶予3年」とのこと。この詳細については、京都地裁のサイトに主要判決速報として掲載されるのではないかと思っていますので、それを待つことにしましょう、ね。
【参考】京都地方裁判所/主要判決速報


『◆追記 掲載されました。
著作権法違反被告事件(平成16年11月30日)
 一応、カンタンに断片だけを記すと、「裁判所により、判決において、多岐にわたる弁護側の主張を18項目にまとめ、それぞれについて、ひとつひとつ判断を示したうえで、主文のとおりの判決」となったわけです*1

 なお、次のURLにもあるような「裁判長が被告の弁護人の弁護活動を批判し『強く自戒を求める』と異例の意見」は、最後の量刑の判断理由を述べる前になされたのですが、ホントに異例の感じがしました。いろいろと感じるところはあったのですが、、、ちょっと上手く書けない気がしますので、差し控えさせていただきますね。


『◆追記 ちょっとだけ。裁判所から「弁護人の弁護方針が本当に被告人のためであったか疑問である」という趣旨の発言があったと思うのですが、この点については、被告人本人が「どう理解して、どう思っていたのか、そして結果に対してどう思っているのか」ということこそが大きいはずだよなぁとは感じたのですけどね。そこまで判決で言えること? って、ギモンがあったわけなのです。
京都新聞 電子版】http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2004113000046&genre=D1&area=K10


 しかし、これで、正犯の第1審判決が出たわけで、幇助の公判にも何らかの影響があるのでしょうか? なくはないのでしょうねぇ。
 とりあえずは、第13回の市民裁判員先行記は以上です。

*1:ホントに断片ですね。。。

京都府 山田啓二知事 「鳥インフルエンザ事件から」

 ひさびさの全国知事リレー講座。本日は、地元・京都の山田知事です。SARSに始まり、鳥インフルエンザ、そして先般の台風23号の被害と、いわゆる危機管理に関する案件が、京都では続いたところですが、そのSARS事件における教訓を、鳥インフルエンザ事件で活かしたなどなどのお話を伺いました。【情トラ】は、鳥インフルエンザ感染隠ぺい事件の公判を傍聴してもいますし、いろいろと興味があったので、じっくりしっかり聴いてきました。


(以下、あくまで【情トラ】管理人の個人的なメモです。必ずしも全てが講義に即したモノとは限りません。また、事実誤認等があればゴメンナサイ)

 鳥インフルエンザは、下手すれば京都中の鶏が全滅、それどころか日本全国に広まりかねない病気であるため、その対応は危機管理としてきちんと行う必要があった。
 そのために国によってとられた対策は、以下のとおり。

    • 平成15年9月…外国での鶏大量死をうけて、国が対策マニュアルをつくる。
    • 同年10月、平成16年1月…国から全国に向けて防疫体制の徹底との通知。

 京都府においても、山口県での発生、大分県での発生をうけて、次のような対策。

    • 1,000羽以上の鶏を飼育する養鶏家に聴き取り調査
    • 5,000羽以上の鶏を飼育する養鶏家への立ち入り調査
    • パンフレットを配布するなどして、養鶏家及び職員に対する周知徹底をはかる。

 そうしたところに、京都府においても感染事例が確認されたのであるが、その経緯は次のとおり。

    • 平成16年2月26日午後8時ごろ…保健衛生所等2箇所に、匿名で「京都府丹波町の養鶏場にて、同月20日ごろから感染による大量死が発生している」旨の通報。
    • その通報をうけて、早速、職員が現地に行ったが、すぐには養鶏場の責任者と連絡はとれず。
    • 同日午後11時ごろ…養鶏場責任者から「大量死」を認める旨の証言が得られた。
    • 翌27日午前1時15分…現場に立入検査。検体をとって、2箇所で検査することに。
    • 同日午前5時ごろ…検査結果のひとつが出るが陰性であった。
    • 同日午前6時30分…感染の怖れがある旨の記者発表。
    • 同日午前9時ごろ…もうひとつの検査結果は陽性。
    • 同日…対策本部を設置。本部長は知事。現地対策本部には、副知事、農林水産部長を派遣。
    • 翌28日…知事が現地視察。
    • 3月3日…農林水産大臣が現地視察。

 以上の初動体制は、よかったのではないかと評価しているところである。

  • SARS事件の教訓

 鳥インフルエンザ事件の対応として、重視していたことは、次の4点である。これらは、いずれもSARS事件時の反省をふまえて、徹底しなければならないと考えたものである。

    1. 現地・現場主義
    2. 情報公開の徹底
    3. 府民・市町村・国との協力/協働
    4. 専門家による同時検証

 まず、最初の「現地・現場主義」であるが、何事も現場にいなければわからないことばかりであったし、早急な判断をしなければならないことが目白押しだった。そのため、現地対策本部に権限を与えることこそが、スムーズな意思決定を促したと考えられる。
 次の「情報公開の徹底」に関しては、SARS事件の際に、当初、厚生労働省の要請で患者が宿泊したホテル等を公開しないようにしていたが、これが混乱を招く事態となり、マスコミとの関係も「暴き暴かれ」といったとても良好とはいえないものとなった。さらには、情報公開しなかったため、2次感染の怖れがある人への注意喚起もできないままとなり、果てには風評被害まで生じることとなった。こうした混乱の反省をふまえて、鳥インフルエンザ事件においては、対策サイトを開き、常時の情報提供(結果として60万件のアクセス)を行ったり、土日にも対応できる相談窓口を設置したり、また、対策責任者が集まる対策会議の26回すべてをマスコミにも公開して、徹底した情報公開を行った。
 そして、「府民・市町村・国との協力/協働」に関しては、地元自治体とは、現地対策本部責任者らと地元首長が一緒になって現地視察に出向くなどして、うまく協力できたのであるが、問題は、国との協力関係である。そもそも、知事が事件発生後に最初に見た国の職員は、農林水産大臣であるとのこと。連絡なども全くできなかったし、電話をしたところで、「現在、会議中です」などといって話がつかない。また、○○省に報告した件を、△△省が聴いていないといってくるなど、縦割りが甚だしい。まるで、「中央分権(=縦割り行政)」「地方集権(=総合行政)」そのものを表すような例であった。
 最後の「専門家による同時検証」については、やはり行政職員が俄仕込みで何を言っても信用されないことが、その道の専門家の言葉であると府民の安心感も異なるものである。今回の事件においては、農水省は、1ヶ月間ほど単に「鳥インフルエンザにかかったニワトリが産んだ卵から、人間が感染した例を聞いたことがありません」との説明に終始していたが、これは、お役人言葉の無責任な説明そのものである。3月1日に第三者委員会としての専門家会議を設置し、10回にわたって検討・検証してもらったことが、府民に対しても、行政職員に対しても、大きなバックボーンを得た結果となった。


■【情トラ】まとめ
 本日は、危機管理にしぼった話であったのですけど、具体的な事例をもとにお話があったので、たいへんわかりやすかったですね。
 で、その内容についてなんですけど、危機管理に際して必要なものとして挙げられていた4点を【情トラ】なりに言い換えると次のようになるのかな?

  • 「権限集中」+「専門家活用」

 この「権限集中」とは、「現場に集中する」こと、「情報を細切れにさせない」こと、そして「総合的に対応する」ことを示す言葉と考えてください。こうした「権限集中」が重要であるとすると、やはり「知事」または「市町村長」という大きな権限を有する首長の存在こそが、大切になってくるといえるのでしょう。
 そして、「専門家活用」とは、そのまま「専門家が検証する」ことの必要性ですが、それは単に問題分析だけではなく、「権限集中」の弊害を是正することも求められてよいのではないかと考えられますね。
 これらの2つが、危機という非常事態において、迅速かつ的確に対応する鍵となるといえそうです。ただし、現状においては、この両者ともに、きちんとしたシステム構築がなされていないのではないでしょうか。特に「専門家活用」については、ひとつの自治体でまかなえる専門家の数などたかがしれているでしょうし、国が用意できる専門家も、その現地・現場にすぐに派遣できるのかわかりません。そうしたことを考えると、現時点では、各自治体間の協定などにより対応しているところのようですが、道州制のような枠組みが必要になる気もします。まっ、まずは、そもそも論として「権限集中」できる首長を選出することから始めなければならないトコロもあるのかもしれませんねぇ。