ベルカ、吠えないのか?(古川日出男/文芸春秋)

ベルカ、吠えないのか?
町田康の「告白」に続いて、同じく豊崎由美絶賛の作品に手を出してみる。この人の作品を読むのははじめて。

一九四三年、北洋・アリューシャン列島。
アッツ島の玉砕をうけた日本軍はキスカ島からの全面撤退を敢行、無人の島には四頭の軍用犬「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」が残された。自分たちは捨てられたーその事実を理解するイヌたち。その後島には米軍が上陸、自爆した「勝」以外の三頭は保護される。やがて三頭が島を離れる日がきてーそれは大いなる「イヌによる現代史」の始まりだった!

たくましい生存能力とかしこい頭脳で戦場を生き抜く「イヌ」。戦場に残された三頭の優れた血を受け継ぐ「イヌ」が世代を超えて、やはり戦場を走る。「戦争の世紀」ともいわれる20世紀を「イヌ」視点で描いた、壮大で不思議な物語。「イヌ」視点といっても別にイヌがしゃべるわけじゃないから第三者の目線から描かれてるんだけど、「イヌよ、イヌよ、おまえたちはどこにいる?」という神の視点にあるようなその文章が読むものをぐいぐい引っ張りこむ。そして人間という生物のアホらしさが身にしみます。面白うございました。
これまた豊崎由美が「本の雑誌」で言及してたことだけど、たしかにイヌたちの系譜とかつけてくれるとわかりやすかったかも…。

現代SF1500冊 乱闘編 1975―1995(大森望/太田出版)

現代SF1500冊 乱闘編 1975―1995
SFマニアによるSFファンのためのSF総括本…だろうか。すごいよ、濃いよ…。日本におけるSFの動向から出版業界の内実までぎっしりと詰まった一冊。ていうか『サンリオSF文庫の衝撃、サイバーパンクの高揚から、SF「冬の時代」まで』という帯の言葉の意味すらわかってないSFオンチなわたしが読んでどうするって気がしなくもないが、ぱらぱら読みながらけっこう楽しめました。最近SFに興味がわいてちょこちょこ読んでるってこともあるかもしれないが。最近SFガイド本ばっかり読んでるけど実際にSFは読んでないな…とか、鈴木いづみのエッセイは好きだけど小説は読んだことないから読んでみたいとか、うちに積んであるディックやシモンズはいつになったら制覇できるのかとか、いろんなことが頭を駆け巡る。読みたい本が増えるばかり…。20代のうちにできるだけたくさん読んでおきたいんだよね。母親曰く「年を取ると翻訳モノを読むのがおっくうになる」らしいんで。個人的には後半に収録された「本の雑誌」掲載のガイドより、前半の(本人曰く)「枕が長い」評論のほうが楽しめたな。10月に出るらしい「回天編1996-2005」も楽しみ。

READING BATON

…最近バトン流行ってます? id:jasperさんからまわってきました。
●お気に入りのテキストサイト(ブログ)
未読王購書日記memo」
笑わせてくれます。


●今読んでいる本
「おれの中の殺し屋」(ジム・トンプソン/扶桑社ミステリー)


●好きな作家
山田詠美恩田陸藤野千夜田辺聖子梨木香歩川上弘美舞城王太郎コニー・ウィリスジェフリー・ディーヴァーウィリアム・アイリッシュ…うーん、まだまだいっぱいいます。


●よく読むまたは、思い入れのある本
椎名誠岳物語」、山田詠美「放課後の音符」、沢村貞子「私の浅草」


●この本は手放せません!
きつねものがたり (世界傑作童話シリーズ)
幼稚園のころに買ってもらった本で話も絵もキュート。ま、わたしの名前がサインペンで書いてあるのでブックオフでも引き取ってくれないだろうけど。


●次にバトンを渡すヒト3名
もしお時間あればお願いします。
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