独歩の通夜の日における茅ヶ崎館での田山花袋と小栗風葉・真山青果との騒ぎについては、黒岩比佐子『編集者国木田独歩の時代』(角川選書)317頁に書かれているところである。実は、その翌日にも騒ぎがあったことが、岩野泡鳴の日記に出てくる。
大正2年4月17日 水野氏と前田(晁)氏来たる。どこかで飲んで大分上機嫌であつた。前田氏が国木田氏死去前後に於ける田山氏と真山一派との暗闘もしくはさや当てのことを語り出した。独歩の死ぬ少し前に病院の入り口で数名と一緒に写真を取つた時は僕もゐた。その前日、茅ケ崎でとまるところを、小栗その他の諸氏がゐるのではづしたいと云ふものがあつて、僕等は国府津まで行つて一泊した。正宗、田山、吉江、前田、並に僕であつた。その晩、僕だけ芸者を買つたことは前田氏も詳しくぶちまけた。それから死んだ翌日の晩、茅ケ崎館で底ぬけの大さわぎがあつたさうだが、そのまた翌晩には僕も行き合はせた。真山氏が小栗氏の横つらを『このちんちくりんめ』と云つて投りつけた。小栗氏はそばにゐた僕に何の意味だか分らないが、全体どうしたんだと聴いた。間もなく小栗氏もふんどし一つになり、真山氏と共に踊り出し、鴨居をどりだと云つて、それをつたひなどした。この時のことには、前田氏はゐ合はせなかつたが、蒲原、田山、僕、その他誰れかもゐた。
この発見に関する「古書の森日記」での黒岩さんとのやりとりは、
1. Posted by 神保町のオタ 2007年12月25日 17:55
クリスマスプレゼントになるかわかりませんが、岩野泡鳴の日記(『岩野泡鳴全集』第14巻)大正2年4月17日の条に面白い事が書かれています。
2. Posted by Hisako 2007年12月25日 20:11
「クリスマスプレゼント」といわれると、かなり期待してしまいます。さて、いったい何が書かれているのでしょうか……。
3. Posted by 神保町のオタ 2007年12月25日 20:42
あまり事前に言うと見たときの楽しみを奪ってしまいますが、独歩の死の翌々日の出来事が記されています。
4. Posted by Hisako 2007年12月26日 16:55
岩野泡鳴の日記の大正2年4月17日……あっ、ありました! なるほど、なるほど。独歩の死から5年が過ぎようというのに、まだ友人同士では、当時の出来事をなつかしく思い出して、語り合ったりしていたのでしょうね。クリスマスプレゼント、どうもありがとうございました。この日記、いろいろな意味で面白そうなので、図書館で借りてきてしまいました(読む暇はあるのでしょうか……)。
(参考)「黒岩比佐子『編集者国木田独歩の時代』(角川選書)への補足記事一覧(該当ページ順)」(5月30日)
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