文筆家(歴史家・人文学者)。建築史・意匠論から風俗史・風俗評論まで、その射程は広い。常に読者の死角へ回り込み、読者の先読みをはぐらかしつつ進む独特の文体は、デビュー作である『霊柩車の誕生』から一貫している。サントリー学芸賞(1986年度。芸術・文化部門。『つくられた桂離宮神話』を中心とした業績による)受賞に際しての論争は、その後の読書界における氏の評価を先取りしている。
*リスト:リスト::学者:リスト::学者::人文科学
京都の町中には「滋」という字を見て「ゲジゲジ(ゲジ)のようだ」と滋賀の人をおとしめる、困った人たちがいはりますね。かつては京都を日本の真ん中に据えた地理秩序というものがありました。「都の近くにある江(うみ)」=「近江」もそう。今やそうした都を敬う地理感はほぼ無くなったのに、気の毒なことに滋賀の場合、偉そうな京都人の近くにいるせいでいまだに偉そぶられている。 京都市西部の嵯峨で育ち、差別意識など全く無かった私に、より西側の亀岡を見下す意識を植え付けたのも京都の町です。そんな自分が不愉快で嫌で、でもやめられない。四季ごとに京都を案内するテレビ番組で会う滋賀県出身の西川貴教さんは「京都、好きですよ」…
第4章 京都とパリの魅力、都市史パリの不動産は外国人には理解できないくらい複雑。土地と上物である建物と、その建物のフォン・ド・コメルス(商業利用権)が別p152東京では飯田橋と神楽坂が「東京のパリ」と言われている。その理由の一説として、真ん中に、川ではないが旧お堀があり、右岸・左岸というイメージがあるから。p175-176(そういえば、東京で通っていたフランス語学校は飯田橋にありました)日本の建築は、幕府の統制から離れ「表現の自由」を獲得した。ヨーロッパの都市部では、いまだにあり得ない「自由」を。ヨーロッパの建築家を大阪の道頓堀に連れて行くと、みんな感動する。東京の隅田川沿いの金色の変な形のオ…
京都、パリ この美しくもイケズな街 表紙 京都、パリ この美しくもイケズな街鹿島茂 井上章一 著プレジデント社 発行2018年9月28日 第1刷発行鹿島さんと井上さんによる、京都とパリについての対談集です。第1章 京都人パリジャンの気質フランス人の名前の「ドゥ(de)」「帯剣貴族のフィエフ(封地)」を示すための前置詞貴族の印だが、19世紀になると、貴族でもないのに文学者たちのなかには、オノレ・ド・バルザックのように勝手にドゥを付ける人も現れる。法服貴族の方は、ドゥがなくても貴族。p23パリは昔から金融ブルジョワの街だった。徴税請負人などの大金持ちが、外国債とか債券に投資しながら代々生きてきた。…
オタク息子の同級生Aくんが、京都大学に合格しました!地元民でもなかなか行けない京大!でも、Aくんは小学生の頃からずば抜けて賢かっただけに「ああ、やっぱりね」という思いが。 Aくんのお家は創業100年余、知る人ぞ知る某伝統産業のお店(もちろん皇室御用達)。Aくんは次男さんでお兄ちゃんの長男さんは東京の大学へ行ってはります。ん? 京都ネタで本も書いてはる井上章一先生の文章を、東洋経済オンラインで見つけたので転載しておきます。 井上:実を言うと、京都大学の学生に、あんまり京都市民はいないんですよ。多分1割もいないと思います。ましてや、創業寛永何年とかいうようなお家のボンは、数えるほどしかいない。でも…
一条真也です。29日、東京に飛びます。全互協のグリーフケアPT会議や全日本仏教界の新年賀詞交歓会などに参加します。『プロレスまみれ』井上章一著(宝島社新書)を読みました。著者は1955年、京都府生まれ。京都大学人文科学研究所助手、国際日本文化研究センター助教授を経て、同教授。専門の建築史・意匠論のほか、風俗史、美人論、関西文化論など日本文化について広い分野にわたる発言で知られています。『霊柩車の誕生』という名著もあり、わたしは同書の内容をめぐって著者と対談したことがあります。対談集『魂をデザインする』(国書刊行会)に収められています。 本書の帯 本書の帯には著者の写真とともに、「井上式の発想、…
『京都ぎらい』は読んだことがないけど、井上 章一さんはとかくいわゆるほんまもんの京都から差別された京都市の京都じゃないところに生まれたルサンチマンを全力で爆発させている人、というのはなんとなく知っていた。ぼくみたいな大学の頃から外からやってきて左京区でフラフラしている人間からすると、こういう機微とかイケズみたいな感覚はさっぱりわからない。すくなくともぼくが知る範囲の京都という町は、おおらかで流れ者に優しい町だと思っている。それが京都の深淵をのぞいいていないだけなのか、はたまた鈍感さによってイケズに気づいていないのかというのは気になっている。 それでもって、さらにパリまでからめて対談するというの…
©京都新聞 これまたマニアックな内容ですみません。我が家は京都新聞を購読しているのですが、1面に連載されている井上章一さんのコーナーを読んでみると・・・! 仮面洛外者の告白 先日、事情があって自分の戸籍を、チェックした。見ておどろいたのだが、私の出生届は中京区に出されている。生み落とされたのは、中京区の病院であったらしい。私はこれまで、花園生まれの嵯峨育ち、洛外者を自負してきた。このコラムでも、そう公言している。もちろん今でも、その自意識に変わりはない。しかし、嘘をついていたのかもしれないという、かすかな負い目も感じている。連載の最後に、懺悔のつもりで告白する。 京都新聞(3/30)より 井上…
ノスタルジック・アイドル 二宮金次郎―モダン・イコノロジーのレビューです。 ノスタルジック・アイドル 二宮金次郎―モダン・イコノロジー 作者: 井上章一,大木茂 出版社/メーカー: 新宿書房 発売日: 1989/03/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 感想 あの有名人は今? ニノキン現る! アイドルで二宮と言えば今は嵐のニノ。しかし、ノスタルジックが付くと、そうそう金次郎ですよね。と言っても、「金次郎」だと思い浮かべた人はきっと昭和の人。 最近の小学校がどうなっているのか分かりませんが、二宮金次郎像の発注は、ほとんどなくなっているそうです。これが1930年代中ご…
この本が京都だけでなく、全国的なベストセラーになっているようである。NHKラジオの「著者に聞く」コーナーで、 「烏丸三条の大垣書店では、”本当は好きなくせに”というPOPがあると言っていたので、 確かめに出かけてみた。その通りのPOPが貼ってあったので、許可を得て撮影した。後日、偶然京阪電車の駅で著者を見かけたので、サインをお願いした。 唐突だったので相当驚いておられたが、快くサインしていただいた。
詳しくはこちら→京都ぎらい (朝日新書) 少し前から話題になっていましたが、『京都ぎらい*1』をちらっと読んでみましたので感想がてら書いてみます。井上章一さんの本は大昔に読んだ「美人論」以来、久しぶりです。 井上さんは洛星高校→京都大学という京都人のエリートコース(ちょっと古いかな?)を歩んできたお方。現在は国際日本文化研究センターの教授です。テレビにも時々コメンテーターとして出られ、面白い意見を言うてはります! 洛中は偉い?田舎もんとは違いますえ(^_^; 文中では洛中=碁盤の目の中にお住まいの方が洛外の方を見下しているエピソードとして、下のようなやりとりが書かれています。著者が京都の有名町…
【オンライン】4/25(木) 16:00 - 17:30 井上章一×鹿島茂 、井上 章一『ヤマトタケルの日本史』(中央公論社)を読む https://allreviews.jp/news/6549 ヤマトタケルの日本史 女になった英雄たち 作者:井上章一 中央公論新社 Amazon
女装と日本人 (講談社現代新書) 著者 : 三橋順子 講談社 発売日 : 2008-09-19 ブクログでレビューを見る» キワモノ系の本かと思って読んだら、かなりアカデミックな内容で驚いた。著者は、戸籍上は男性で、M t F のトランスジェンダー(性別越境者)で、社会・文化史研究家。日本最初のトランスジェンダーの大学教員となった。 本書は、「古代から近代までの日本の歴史の中の現れる女装に関するさまざまな事象を取り上げ、社会・文化史的に説き明かすとともに、現代における女装コミュニティや性別認識を分析し、さらに世界の女装文化の比較文化論的位置づけにまで及ぶ。日本初の女装に関する専論書として井上章…
書誌情報:大龍堂書店,362頁,本体価格2,000円,2022年11月24日発行京都の歴史と消防:千年都の都市防火性能作者:丸山俊明大龍堂書店Amazon木造建築が主だった平安京の頃から幕末までの京都の消防制度を10章100項目で解説している。地域住民による防火・消防の仕組みが多くの図版や地図などで知ることができる。放火も失火も風上5軒風下5軒は家財持ち出し,残りは桶に水を汲んで火事場へ急行などの町の決まりごとや火事場では所司代・町奉行所体制の指揮権があったことなどにも触れられている。 かつて墓場では多い場合30〜50本の蝋燭を燃やした。これをカラスが取っていき出火原因になることもあったという…
・ ・ ・ 関連ブログを6つ立ち上げる。プロフィールに情報。 ・ ・ {東山道・美濃国・百姓の次男・栗山正博}・ 日本文化には、幾重にも装いを新たに変身・変化する多様性を秘めていた。 ・ ・ ・ エセ保守とリベラル左派には、民族中心神話に根差している日本文化が理解できない。 特に、LGBT理解増進法案を成立させた政治的エリートと賛成したメディアや教育の進歩的インテリにはそれが言える。 その意味で、現代に喧伝されている日本文化は戦後に作られたエセ民族伝統文化、歴史・宗教・自然と切り離された紛い物である。 政治的エリートや進歩的インテリは、武士・サムライでもなければ百姓でもない。 ・ ・ ・ 昔の…
毎週日曜日は、この一週間(4/1~4/7)に週刊誌や新聞などの書評に取り上げられた旬の本を紹介しています。書評内容については各誌・HPなどをご覧ください。 今週の書評本 *表示凡例◆掲載された媒体: 発行号数 掲載冊数書籍タイトル 著者.編者 出版社 税込価格 書評掲載回数(②回以上を表示) ◆サンデー毎日「遠回りの読書」: 4/14 号 2 冊父の革命日誌 チョン・ジア 河出書房新社 2,310キャラメル工場から 佐多稲子傑作短篇集 佐久間文子 ちくま文庫 968 ◆女性自身「今週の本」: 4/16 号 4 冊鼓動 葉真中顕 光文社 1,870ひつじが丘 三浦綾子 講談社文庫 770方舟を燃…
2017年発表の本書は、NHK「いけずな京都旅」のコメンテータである国際日本文化研究センター井上章一教授の京都論。TV番組では軽妙に「いけず」と博識を披露している著者だが、てっきり文系研究者と思っていたら建築学の教授(建築史・意匠論)だった。確かに伏見稲荷大社などの歴史的建造物の紹介は、堂に入っていた。 著者には、2015年の「京都ぎらい」という著書があり、他の著作より多く売れた。烏丸御池の大垣書店には目立つところに平積みになっていたが「ほんとうは好きなくせに」とポップされていて、唖然としたとの記述がある。その「二匹目のどじょう」を狙ったのか、ちょっとエロチックな京都の歴史を紹介しているのが本…
そういえば、ゼミ卒業生ネタでこんなのもあった、あった。皆活躍を祈念。 カンテレ“入社予定”アナウンサー、入社前に異例のレギュラー決定 フット後藤は絶賛「ちゃんとしてるで」 | ORICON NEWS (ポピュラー・カルチャー論講義補遺)「アメリカ」を考える(3)古都・京都も、港町・神戸も。 授業では占領期の大阪についてはふれるので、ここでは京都・神戸についての文献案内など。 まずはベストセラーとなった、井上章一『京都ぎらい』(朝日新書、2015年)から。 100p「京都にも、新しさのかがやきをしめすところが、ないわけではない。たとえば、植物園の北側、北山通りぞいの界隈が、その例にあげられる。……
エイプリルフールにはもってこいの名字だ。これは読めなかった。春になり,四月一日に綿を抜いていたので「わたぬき」というのだそうだ。宮崎県日南市や熊本県八代市にごく少数いらっしゃるとのこと。 -関連エントリー--難読名字(その162):男乕→https://akamac.hatenablog.com/entry/2024/01/15/171153--難読名字(その161):二反長→https://akamac.hatenablog.com/entry/2024/01/13/183642--難読名字(その160):2023年全国名字ランキング(希少TOP30)→https://akamac.hate…
アカデミー賞の発表を前に日本からノミネートされるだけで大騒ぎ。ノーベル賞や映画祭、ピアノコンクールでもだけど、どうして外国の評価に一喜一憂するのか? そんな日本の姿が、井上章一の「つくられた桂離宮神話」で読み解ける。 圧倒的な欧米に文化面でも対応しようとした明治の艱難辛苦から、昭和になると海外の評価に依存、ひいてはそれを利用するようになる。 現代になって、周辺状況は全世界の画一化で特に日本人を打ち出す必要や意識が無くなっているのに、マスコミ(大衆)はその自覚もなく、依然として自身の基準を築けないままだ。 その背後には「みんな一緒に」を是として独自を許容できない文化がある。 若い音楽家の活躍を追…
昭和天皇・マッカーサー会見 (岩波現代文庫 学術 193) 作者:豊下 楢彦 岩波書店 Amazon 読了日2023/09/03。昭和天皇とマッカーサーの会談をめぐっては、『マッカーサー回想記』(1964)に記された有名な“美談”がある(以下は豊下著による)。つまり、天皇は自分の免罪を懇請するどころか、国民の行った戦争責任の全てを自分が取ると自ら言い出し、マッカーサーを感動させたというのである。 歴史学者の筆者は、この場面が「虚実ないまぜ」で到底史実と見なし得ないと指摘し、では実際にこの会談の真意はどこにあったのかを、限られた史料から明らかにしようとしたものである。 敗戦から米軍による占領とい…
書誌情報:中公新書(2721),246頁,本体価格880円,2022年10月25日発行京都の食文化-歴史と風土がはぐくんだ「美味しい街」 (中公新書 2721)作者:佐藤 洋一郎中央公論新社Amazon京都の風土と歴史とフィールドワークによって京都の食文化を論じていて,美味しい新書だった。精進料理や懐石料理だけでなく和菓子,コーヒーやパン,最近ではラーメンでも京都の名前が結びついている。 下手な観光案内より面白く,さながら食から見た京都案内だ。 関連エントリー 生八ッ橋か焼八ッ橋か→https://akamac.hatenablog.com/entry/2023/06/28/233000 京都…
『お帰りやす、天皇陛下。』は、京都の深い歴史と皇室との関わりを掘り下げた一冊。国際日本文化研究センターの井上章一所長と皇室に精通する作家工藤美代子氏の対談形式で綴られている。この作品は、井上所長の『京都ぎらい』の成功に続く鑑賞作であり、読者に京都と皇室の1000年にわたる関係性を示すことを目的としている。 中心となる考察は、歴史的背景と文化的影響を駆使して「京の都」がどう形成されてきたか、そしてその過程で皇室がいかに関与してきたかという点に焦点が当てられる。井上氏の深い洞察によれば、戦国時代以前における皇室の権威は、美しい女性との関係性ー具体的には、朝廷の女房を介した美人力ーにその起源を持つ部…