文筆家(歴史家・人文学者)。建築史・意匠論から風俗史・風俗評論まで、その射程は広い。常に読者の死角へ回り込み、読者の先読みをはぐらかしつつ進む独特の文体は、デビュー作である『霊柩車の誕生』から一貫している。サントリー学芸賞(1986年度。芸術・文化部門。『つくられた桂離宮神話』を中心とした業績による)受賞に際しての論争は、その後の読書界における氏の評価を先取りしている。
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朝お出かけすると、たまに日文研へ出勤途上と思われる井上章一所長とすれ違うことがある。その井上先生が、講談社選書メチエ創刊30周年記念の冊子『執筆者150人が選んだ524+冊:1994~2024年ベストセレクション』(講談社)の「私が選ぶ選書メチエの『この一冊』」に寄稿していた。選んだ講談社選書メチエは、京谷啓徳『凱旋門と活人画の風俗史:儚きスペクタクルの力』(平成29年9月)であった。同書は私も「跡見花蹊が観た明治20年の工科大学校における活人画ーー京谷啓徳『凱旋門と活人画の風俗史』(講談社選書メチエ)への補足ーー - 神保町系オタオタ日記」で言及していて、明治20年3月工科大学校で開催された…
甲辰年五月三日。気温摂氏14.9/25.8度。晴。 水戸桜川千本桜プロジェクト主宰されてゐる稲葉寿郎氏の「桜川・千三百年の桜文化史」の講演を聞く(水戸市国際交流センター)。古へには常陸國風土記に筑波の花見についての記述あり。吉野より昔からの桜の名所。そして謡曲にもある櫻川。紀貫之も さくら河といふ所ありとききて常よりも春へになればさくら河波の花こそまなくよすらめ (後撰和歌集) と詠んでゐるが櫻川を訪れたこともない貫之がなぜ櫻川を知りえたか。祖父・紀本道は下野守で叔父からの嫡系は土着(後の益子氏)。万葉集にも筑波山頻繁に登場。古今集の仮名序にも(貫之)。和歌での筑波と櫻川の定着。連歌(二条良基…
京都の町中には「滋」という字を見て「ゲジゲジ(ゲジ)のようだ」と滋賀の人をおとしめる、困った人たちがいはりますね。かつては京都を日本の真ん中に据えた地理秩序というものがありました。「都の近くにある江(うみ)」=「近江」もそう。今やそうした都を敬う地理感はほぼ無くなったのに、気の毒なことに滋賀の場合、偉そうな京都人の近くにいるせいでいまだに偉そぶられている。 京都市西部の嵯峨で育ち、差別意識など全く無かった私に、より西側の亀岡を見下す意識を植え付けたのも京都の町です。そんな自分が不愉快で嫌で、でもやめられない。四季ごとに京都を案内するテレビ番組で会う滋賀県出身の西川貴教さんは「京都、好きですよ」…
第4章 京都とパリの魅力、都市史パリの不動産は外国人には理解できないくらい複雑。土地と上物である建物と、その建物のフォン・ド・コメルス(商業利用権)が別p152東京では飯田橋と神楽坂が「東京のパリ」と言われている。その理由の一説として、真ん中に、川ではないが旧お堀があり、右岸・左岸というイメージがあるから。p175-176(そういえば、東京で通っていたフランス語学校は飯田橋にありました)日本の建築は、幕府の統制から離れ「表現の自由」を獲得した。ヨーロッパの都市部では、いまだにあり得ない「自由」を。ヨーロッパの建築家を大阪の道頓堀に連れて行くと、みんな感動する。東京の隅田川沿いの金色の変な形のオ…
京都、パリ この美しくもイケズな街 表紙 京都、パリ この美しくもイケズな街鹿島茂 井上章一 著プレジデント社 発行2018年9月28日 第1刷発行鹿島さんと井上さんによる、京都とパリについての対談集です。第1章 京都人パリジャンの気質フランス人の名前の「ドゥ(de)」「帯剣貴族のフィエフ(封地)」を示すための前置詞貴族の印だが、19世紀になると、貴族でもないのに文学者たちのなかには、オノレ・ド・バルザックのように勝手にドゥを付ける人も現れる。法服貴族の方は、ドゥがなくても貴族。p23パリは昔から金融ブルジョワの街だった。徴税請負人などの大金持ちが、外国債とか債券に投資しながら代々生きてきた。…
オタク息子の同級生Aくんが、京都大学に合格しました!地元民でもなかなか行けない京大!でも、Aくんは小学生の頃からずば抜けて賢かっただけに「ああ、やっぱりね」という思いが。 Aくんのお家は創業100年余、知る人ぞ知る某伝統産業のお店(もちろん皇室御用達)。Aくんは次男さんでお兄ちゃんの長男さんは東京の大学へ行ってはります。ん? 京都ネタで本も書いてはる井上章一先生の文章を、東洋経済オンラインで見つけたので転載しておきます。 井上:実を言うと、京都大学の学生に、あんまり京都市民はいないんですよ。多分1割もいないと思います。ましてや、創業寛永何年とかいうようなお家のボンは、数えるほどしかいない。でも…
一条真也です。29日、東京に飛びます。全互協のグリーフケアPT会議や全日本仏教界の新年賀詞交歓会などに参加します。『プロレスまみれ』井上章一著(宝島社新書)を読みました。著者は1955年、京都府生まれ。京都大学人文科学研究所助手、国際日本文化研究センター助教授を経て、同教授。専門の建築史・意匠論のほか、風俗史、美人論、関西文化論など日本文化について広い分野にわたる発言で知られています。『霊柩車の誕生』という名著もあり、わたしは同書の内容をめぐって著者と対談したことがあります。対談集『魂をデザインする』(国書刊行会)に収められています。 本書の帯 本書の帯には著者の写真とともに、「井上式の発想、…
『京都ぎらい』は読んだことがないけど、井上 章一さんはとかくいわゆるほんまもんの京都から差別された京都市の京都じゃないところに生まれたルサンチマンを全力で爆発させている人、というのはなんとなく知っていた。ぼくみたいな大学の頃から外からやってきて左京区でフラフラしている人間からすると、こういう機微とかイケズみたいな感覚はさっぱりわからない。すくなくともぼくが知る範囲の京都という町は、おおらかで流れ者に優しい町だと思っている。それが京都の深淵をのぞいいていないだけなのか、はたまた鈍感さによってイケズに気づいていないのかというのは気になっている。 それでもって、さらにパリまでからめて対談するというの…
京都、パリ ―この美しくもイケズな街 :井上章一、鹿島茂著のレビューです。 京都、パリ ―この美しくもイケズな街 作者: 鹿島茂,井上章一 出版社/メーカー: プレジデント社 発売日: 2018/09/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ◆話は脱線、脱線を繰り返し・・・・ 京都のマニアックな本と言えば井上さん、パリは鹿島さんといったイメージは結構あったわけだが、このお二人がこんな形で本を出すとは思ってもみなかったので、これはと思い手にした次第です。 対談形式で京都、パリ各々の気質や食、美人や娼婦に至るまで話が飛び交う。奥深い情報があちこちから、まさに掘れば掘るほどザクザク情報…
©京都新聞 これまたマニアックな内容ですみません。我が家は京都新聞を購読しているのですが、1面に連載されている井上章一さんのコーナーを読んでみると・・・! 仮面洛外者の告白 先日、事情があって自分の戸籍を、チェックした。見ておどろいたのだが、私の出生届は中京区に出されている。生み落とされたのは、中京区の病院であったらしい。私はこれまで、花園生まれの嵯峨育ち、洛外者を自負してきた。このコラムでも、そう公言している。もちろん今でも、その自意識に変わりはない。しかし、嘘をついていたのかもしれないという、かすかな負い目も感じている。連載の最後に、懺悔のつもりで告白する。 京都新聞(3/30)より 井上…