週刊 奥の院 第85号+1の4

テレーズ

作者不詳 関谷一彦訳 『女哲学者テレーズ』 人文書院 2800円+税 
 フランス国立図書館蔵の発禁本から全訳。訳者は関西学院大学教授、専攻は18世紀フランス文学、エロティシズム。本書の邦訳は、これまで生田耕作・三宅一郎によって一部されている。
 帯から引用。
 

淫らさを何一つ漏らさない描写をあなたはお望みなのですか? ――人は趣味によって逸楽を好み、理性によって哲学を愛する。

 
 本書(原書)の出版経緯。
 1740年代、フランスはオーストリアと王位継承戦争。フランス軍会計監査官モンティニィがリェージュ(ベルギー)で活動中に、兵士に「哲学的作品」を売ることを計画。この「哲学的」とは、猥褻、反宗教、治安撹乱などの意味。3000〜4000冊印刷する準備をする。リェージュの印刷屋ドゥ・ロルムと組んで、パリからボルシュロンを雇う。48年10月完成、これがリュージュ版(挿絵なし)。しかし、戦争は終結し軍は引き上げる。ドゥ・ロルムはパリで販売しようとするがモンティニィは同意せず、ボルシュロンにパリで印刷を指示する。モンティニィは警察に目をつけられ猥褻な版画を発注したことも掴まれていた。販売を依頼した人間がスパイだった。12月完成、『テレーズ』は「みだらな挿絵」で飾られた春本として世に出る。1400部印刷して、1部30リーブル(通常価格の10倍)。49年2月、モンティニィとボルシュロンは逮捕され、このパリ版は当局に押収される。海賊版、偽造版もある。
 原作者は? 哲学者ディドロ説(著作に同じような表現があるそう)、モンティニィ説、アルジャンス侯爵説(かのマルキ・ド・サドの証言あり)、など。

 再び帯より。
 

「淫楽と不敬虔を巧みに結び付けている唯一独自な作品」としてサドに影響を与えた本書は、過激な性描写があるといはいえただのポルノ小説ではなく、当時の哲学的思想を反映した宗教、政治への批判的側面をもつ「リベルタン小説」である。哲学論議を重ねながら、性の秘密を知り官能の頂点へと導かれながら成長を遂げるヒロイン、テレーズ。性描写と哲学的議論が交互にあらわれ、快楽と理性が共存して描かれた18世紀のベストセラーであり、澁澤龍彦の著作等でも知られる。挿絵21葉および詳細な作品解説を付す。

 挿絵の1枚こちらで、 http://bit.ly/gTxvAT 
 そして、「今週のもっと奥まで〜」は本書から。紙版で。
(平野)

週刊 奥の院 第85号+1の4

作者不詳 関谷一彦訳 『女哲学者テレーズ』 人文書院 2800円+税 
 フランス国立図書館蔵の発禁本から全訳。訳者は関西学院大学教授、専攻は18世紀フランス文学、エロティシズム。本書の邦訳は、これまで生田耕作・三宅一郎によって一部されている。
 帯から引用。
 

淫らさを何一つ漏らさない描写をあなたはお望みなのですか? ――人は趣味によって逸楽を好み、理性によって哲学を愛する。

 
 本書(原書)の出版経緯。
 1740年代、フランスはオーストリアと王位継承戦争。フランス軍会計監査官モンティニィがリェージュ(ベルギー)で活動中に、兵士に「哲学的作品」を売ることを計画。この「哲学的」とは、猥褻、反宗教、治安撹乱などの意味。3000〜4000冊印刷する準備をする。リェージュの印刷屋ドゥ・ロルムと組んで、パリからボルシュロンを雇う。48年10月完成、これがリュージュ版(挿絵なし)。しかし、戦争は終結し軍は引き上げる。ドゥ・ロルムはパリで販売しようとするがモンティニィは同意せず、ボルシュロンにパリで印刷を指示する。モンティニィは警察に目をつけられ猥褻な版画を発注したことも掴まれていた。販売を依頼した人間がスパイだった。12月完成、『テレーズ』は「みだらな挿絵」で飾られた春本として世に出る。1400部印刷して、1部30リーブル(通常価格の10倍)。49年2月、モンティニィとボルシュロンは逮捕され、このパリ版は当局に押収される。海賊版、偽造版もある。
 原作者は? 哲学者ディドロ説(著作に同じような表現があるそう)、モンティニィ説、アルジャンス侯爵説(かのマルキ・ド・サドの証言あり)、など。

 再び帯より。
 

「淫楽と不敬虔を巧みに結び付けている唯一独自な作品」としてサドに影響を与えた本書は、過激な性描写があるといはいえただのポルノ小説ではなく、当時の哲学的思想を反映した宗教、政治への批判的側面をもつ「リベルタン小説」である。哲学論議を重ねながら、性の秘密を知り官能の頂点へと導かれながら成長を遂げるヒロイン、テレーズ。性描写と哲学的議論が交互にあらわれ、快楽と理性が共存して描かれた18世紀のベストセラーであり、澁澤龍彦の著作等でも知られる。挿絵21葉および詳細な作品解説を付す。

 挿絵の1枚こちらで、 http://bit.ly/gTxvAT 
 そして、「今週のもっと奥まで〜」は本書から。紙版で。
(平野)