『罪と罰』翻訳比較、オレは江川訳が一番好き


罪と罰〈上〉 (岩波文庫)



170 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 04:06:21.42 ID:?
オレは江川訳が一番好き。しゃべり言葉が独特でうまい。

 亀山郁夫
 スヴィドリガイロフは、すわったまま考えこんでいた。
「でも、もし来世にあるのが蜘昧の巣だけとか、何かそんな類のものだけだとしたら、どうです?」彼はふと口にした。
《こいつめ、くるってやがる》ラスコーリニコフはそう思った。
「われわれはこれまで、永遠というのを、理解できない観念として、何か巨大なもの、大きなものとして想像してるでしょう! 
しかしなぜ、ぜったいに大きなものでなくちゃならないんですか? ひとつ、そんなもんじゃなくて、そこにちっぽけな部屋を想像してみたらどうです。
田舎風の煤けた風呂場みたいなところで、隅から隅まで蜘昧の巣が張っている。で、これこそが永遠っていうふうにね。
わたしはですよ、そんなふうな光景が、ときどき目に浮かぶんです」


171 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 04:08:38.65 ID:?

 江川卓
 スヴィドリガイロフはすわったまま、じっと考えこんでいた。
「でも来世には、蜘株とか、そんなものしかいないとしたら、どうですかね」突然彼が言った。
『この男は気違いだ』とラスコーリニコフは思った。
「たとえば、私たちは永遠というものを理解を絶した観念、なにか途方もなく大きなもの、巨大なものとして考えていますね。
しかし、どうしてそう大きなものと決めこまなくちゃならんのです? それよりひとつ、そんな考えはさっばりと捨ててですな、そこにちっぽけな部屋でも考えてみたらどうです。
田舎の風呂場みたいな煤だらけの部屋で、四方の隅には蜘妹が巣を張っている。で、これこそが永遠だ、というわけです。
私はね、よくそんなものを目にうかべるんですよ」


172 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 04:09:52.06 ID:?

 米川正夫
 スヴィドリガイロフはもの思わしげにじっとすわっていた。
「どうでしょう、もしそこにはくもか何か、そんなものしかいないとしたら?」と彼は出しぬけにこういった。
『こいつは気ちがいだな』とラスコーリニコフは考えた。
「われわれはげんに、いつも永遠なるものを不可解な観念として、何か大きなもののように想像しています! 
が、しかし、なぜ、必ず大きなものでなくちゃならないんでしょう? ところが、あにはからんや、すべてそういったようなものの代りに、
田舎の湯殿みたいな、すすけた小っぼけな部屋があって、そのすみずみにくもが巣を張っている、そして、これがすなわち永遠だと、こう想像してごらんなさい。
じつはね、わたしはどうかすると、そんなふうなものが目先にちらつくことがあるんですよ」


175 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 08:34:27.41 ID:?

 工藤精一郎訳
 スヴィドリガイロフは座ったままじっと考えこんでいた。
「来世には蜘蛛かそんなものしかないとしたら、どうだろう」と彼はとつぜん言った。
《この男は気ちがいだ》とラスコーリニコフは思った。
「われわれはつねに永遠というものを、理解できない観念、何か途方もなく大きなもの、として考えています。
それならなぜどうしても大きなものでなければならないのか? そこでいきなり、そうしたものの代わりに、ちっぽけな一つの部屋を考えてみたらどうでしょう。
田舎の風呂場みたいなすすだらけの小さな部屋で、どこを見ても蜘蛛ばかり、これが永遠だとしたら。
わたしはね、ときどきそんなようなものが目先にちらつくんですよ」


173 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 05:39:28.81 ID:?
意外に漢字が多い亀訳wwww

174 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 07:32:03.59 ID:?
この箇所を比べるなら米川が一番不自然で好きじゃない

176 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 09:41:37.17 ID:?
>>171
「目にうかべる」というのが引っかかるのですが
この場合のうかべるは思い出すという意味なら心に浮かべると言って欲しかったし
目に浮かべるというと表情的な話に感じてしまうので目に浮かぶの方がいいような気がするのですが


180 :吾輩は名無しである:2011/11/04(金) 12:06:14.61 ID:?
>>170-172
亀のが一番良い気がするんだが
ラスコとスヴィドリガイロフの鏡像関係みたいなのが一番わかるような




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