市民創作 函館野外劇 最終日のもよう(2006年8月5日)


函館野外劇とは、史跡五稜郭跡の特設ステージで、函館のダイナミックな歴史を、市民のボランティアによって作り上げる劇です。市内で福祉施設の理事長を務めるフィリップ・グロード神父の提唱を受けて1988年から始まり、今年で19回目となります。
チケットをたまたま知人から譲り受けることができたので今回初めて、しかも最終日に見に行ってきました。会場の席に余裕があるかと思いきや、超満員の状態でした。好天、最終日、夏休み、港まつりなど、複数の要因が重なってのことなのかもしれません。


実を言うと、過去に何度か職場の関係で出演した(というか、させられた)経験から、今までは野外劇に対してあまり良いイメージは持っていませんでした(念のため断っておきますが、非常に目立たない、簡単にできる役です。重要な役が割り当てられるはずのないことは分かっていただけるでしょう)。市民のボランティアというと表向きは素晴らしいのですが、真にボランタリーな人たちが必ずしも100パーセントではないと思ってしまうと、どこかしらけてしまうのだろうと思います。


それが、今回初めて観て、だいぶ印象が変わりましたね。
まず、演技、演出ともになかなかのレベルであり、作品として素晴らしいと感じました。光線による演出、観客の間近で炸裂する大砲や原子爆弾の熱い炎、目の前で繰り広げられる斬り合いのシーン、劇中の所々で見られるダンス(市内のいくつかのダンススクールの人たち、子供たちが参加しているのでしょうか)、語り、特に、弁士(昔の無声映画の語り役)による明治維新の動乱期についての語りは素晴らしかったです(なお、公式サイトには「出演者は事務局の一部パートを除き、すべてボランティア」と記述されていることから、一部にプロと呼ばれる人がいるのでしょう)。
また、函館の歴史がよく分かる内容となっており、他の地域の人に対しても十分アピールできるものだと感じました。
函館市民が観ても、自分の街の歴史を振り返り、将来を見据えていく上で良い作品だと思いました。


内容はおおむね以下のようなものでした(一部順番がおかしいかもしれません)。
アイヌ倭人
・高田屋嘉平と北前船
五稜郭築城
・箱舘開港と国際化
旧幕府軍と新政府軍の戦い、土方歳三らの最後の抵抗
・度重なる大火、第二次世界大戦
・最後に、幾多の困難を乗り越えて函館の街が歩んできたことを再確認し、未来へ向かって進んでいこうと訴えるような構成となっていました。
特に、土方歳三が昇天するシーンは、かなり重点的に演出されていました。
所々でテーマソングの「星のまち Hakodate」が流れるんですが、最後はなかなか感動的でした(個人的には、24時間テレビサライのようなイメージです)。
最終日のためか、公演終了後にフィリップ・グロード神父のあいさつもありました。見た目にもかなりご高齢なのですが、「私は19年間歳をとりすぎました。(若い出演者に対して)みなさんは歳をとらないでください。」などとジョークも言っていました。


気付いたのは、意外と客席がなごやかで、反応が良く、一体感があるように感じられたことです。イメージとしては、地方球場にプロ野球の試合が来たような感じです。


この函館野外劇、今年の入場者数は10日間の開催で1万人を超えたということです。大手旅行代理店による観光ツアーが企画されたり、初めて修学旅行で鑑賞に訪れた学校があったようです。


市民創作 函館野外劇 -- 75分の大スペクタクル(公式サイト)
http://www.yagaigeki.com/