楊令伝九 遥光の章

偉大なる元帥に敬礼…


楊令対童貫。その瞬間が遂に訪れる。が、幕切れは実にあっさりとしたものだった。


北方水滸伝や楊令伝の登場人物は、死ぬ瞬間に眩く輝くことがある。しかし、童貫元帥の死の瞬間は特に華やかでもなく、特に輝いてもいなかった。しかし、それでよいのかもしれない。童貫元帥は、死ぬその瞬間まで常に輝いていたのだから…


禁軍を下し、梁山泊の領地を確固たるものにした楊令。しかし、今度は「国を造る」という仕事が待っている。帝のいない、「民の為の国」を建てようとする楊令。そのために、西方や日本との交易によって国を潤そうとする。梁山泊の領地自体はそれほど広くはないが、梁山泊を維持する為に守らねばならない地域は非常に大きい。日本の国土自体はそれほど広くはなくても、日本を維持する為に守らなければならない地域、海域は非常に広いのと同じである。


一方、童貫を守りきれなかった岳飛は、隆徳府に拠り岳家軍を編成する。


梁山泊にとって、永遠の宿敵である青蓮寺。その総帥たる李富もまた動き出す。禁軍が維持してきたと言っても過言ではない宋の国体だが、その禁軍が敗北した為、まさに崩壊寸前となる。金軍により包囲された開放府を抜け出し、新たな形で新たな野望に挑まんとする李富と李師師。彼らの陰謀の芽は目立たないように、だが着実に植えられていく。


第十巻は3月発売予定。楽しみである。