エトランゼ

わたくしがこれまでで最も好きなテレビ・ドラマといえば、NHKで1980年代に放映された『川の流れはバイオリンの音』である。
概説はwikiに詳しい。

川の流れはバイオリンの音(かわのながれはバイオリンのおと) は、NHKが制作した、音楽を題材としたテレビドラマの一つである。正式には「NHK特集 川の流れはバイオリンの音 ?イタリア・ポー川?」。
作・演出は佐々木昭一郎。主演は中尾幸世。芸術祭大賞受賞。初出はNHK総合テレビNHK特集」で、1981年5月1日19:30?20:50。1982年には海外版も制作された。何度か再放送され、他の佐々木作品と並んでDVD化の要望も高い。
佐々木作品『夢の島少女』(1974)でデビューした中尾が、同じく佐々木作品『四季・ユートピアノ』(1980) に続いて調律師「栄子(A子)」に扮し主演した。妹のヴァイオリンを壊してしまったA子はクレモナのヴァイオリン工房を訪れる。そこで出会うのは、イタリア・ポー川の人々である。白馬のルイジ、漁師マリオ、アントニオ、ルーカ少年… 歌声、楽器の音、自然の音、町の音と共にA子は彼等と出会い別れていく。
A子の独白によって進行するドキュメンタリー風の作品で、あえて配役に現地の素人を起用した点も作風を支えている。作中A音の特異性には言及があるが、『四季…』でピアノ調律師として独立した榮子と本作の栄子とが同一人物であるかは明示されていない。ヴィヴァルディ「四季」第四楽章・第二主題「暖炉の火」が頻用される。
佐々木はこのシリーズを更に続け、後の二作を含め、
「川の流れはバイオリンの音?イタリア・ポー川?」 (1981年)
「アンダルシアの虹  川(リバー) スペイン編」 (1983年)
「春・音の光  川(リバー) スロバキア編」 (1984年)
を総称して「川3部作」と呼ぶ。

この概説の中にもあるように、NHKからは未だDVD化されていない。著作権の関係が拗れているのかもしれないが、是非とも再販を望みたい。


上記作品に見られるような「放浪」あるいは「ドキュメンタリータッチ」といった作風は当時からわたくしの嗜好に合致し、そういった主人公の人生に自分を重ね合わせて(流離う姿に)夢見心地で憧れていたりした。「地球の歩き方」が人口に膾炙する以前は、こうした映像で旅を予習(?)し、夢見ていたのである。


当時好きだった作品として、例えば、『フルーツ・バスケット』は自主制作映画であったと思うが(監督はあの事件後の音沙汰を訊かないが…)、やはり同じような「放浪」のコンセプトを持った作品ではある。
知る人ぞ知る人達の間の話題作であったとは言え、立派な映画館で放映する作品でもなかったことから、どこかの会議室で小さなスクリーンを立てて、パイプ椅子に座って見た思い出がある。今思えば、よくぞ田舎町くんだりで上映してくれたわ、という気持ち。


そうした放浪癖への憧れは、どうやらわたくし自身の中では、「旅の重さ」(素九鬼子)が原点になっているらしい。


本日の音楽♪
「糸」(BANK BAND