Indo‐European
語族の一。インドからヨーロッパまで*1、多数の言語が含まれる世界最大の語族。言語学上の概念の一。印欧語族とも。
インド駐留のイギリス人、サー・ウィリアム・ジョーンズが、インドの古代語であるサンスクリット語がギリシア語やラテン語と共通の源から発していることを発見し、この共通の言語が派生した言語族をインド・ヨーロッパ語と名付けた。また共通の源の言語をインド・ヨーロッパ祖語と言う。この「祖語」は、現在、残存している諸語(碑文などで残存している死語も含む)を比較することで、かなりの程度まで「再建」されている。
紀元前約6000年〜4500前後にコーカサス周辺から中央ヨーロッパに居住していたグループから現在のヨーロッパ諸言語を話す民族が派生。南部に移動したグループから、インド・サンスクリット語族やイラン語族が生まれた。この起源については、19世紀から20世紀にかけて、さまざまな説が出され、論争が展開された。
ケントム(ケントゥム)語群とサテム(サタム)語群は、「百」にあたることばの最初の音をk系の音で発音する(または、かつてしていた)か、s系の音で発音するかによる分類で、「祖語」からの音韻の変化に規則的な違いがある。おおざっぱに言うとケントム語群が西(ヨーロッパ側。小アジアのヒッタイト語より西)、サテム(サタム)語群が東(スラヴ語・バルト語よりアジア側)だが、かつて中央アジアのオアシスで話されていたトカラ語は、インド・ヨーロッパ語族の中で最も東で話されていたことばであるにもかかわらず、ケントム語群に属する。
その共通の特徴は、
1.名詞には以下の8つの格がある(主格−主として「〜が」,属格−主として「〜の」,与格−主として「〜に(方向を表す)、〜へ」,対格−主として「〜を」,奪格−主として「〜から(起点を表す。「奪う」という「動き」にはあまり重点はない)」,位格(地格・於格とも)−「〜に(動きではなく、存在する場所を示す)」,具格−「〜によって(道具を示す)」,呼格−呼び掛けるときに使う)。もっとも、現在はもちろん、古典時代にも、多くの言語でこれらの格のなかには、統合されたり、使われなくなったりしたものがあり、実際の言語で8つの格がすべて揃っているものはそれほど多くない。
2.名詞に単数、双数(二つでペアのものに用いる)、複数の数がある(実際には双数が欠けている言語も多い)。
3.名詞に男性・女性・中性の三つの文法性がある(男性・女性のみに統合されている言語もある。また、生物・無生物の二つの文法性のもの、文法性のないものもある)。
4.動詞は現在、アオリスト(普通の過去形)、完了の三つの基本形を持つ。これもどれかの形を欠いているものもある。
5.共通祖語に由来する単語を、借用ではなく、本来の語として持つ。
6.動詞からの派生の際に、最初の音節を重ねる「畳音」という方法が使われる。
などである。
※この系統図は以下のサイトを参照して作成したものです。
インド・ヨーロッパ語族
*1:本当はもっと広いですが