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サイバーカスケード

(ウェブ)
さいばーかすけーど

(「サイバー・カスケード」とも)
 

説明

isedによる説明

  アメリカの憲法学者、キャス・サンスティーンの『インターネットは民主主義の敵か』(石川幸憲 訳、毎日新聞社、2003年。原題は"Republic.com")の中で、インターネットが民主主義を脅かす可能性として語られるキーワード。「集団分極化 group polarization」ともいう。
  インターネットで直接民主制が可能になるという素朴なアイデアはよくいわれるが、もし実現するとどうなるか。インターネットでは、付和雷同的に自分と同じ考えの反響を見つけ、同調しあうことがごく容易に可能となる。そして個々人がそのように振る舞うことで、もともと人々が抱いていた主義主張の極端な純化・先鋭化へと、全体的な議論の収束先は向かってしまう。一方、自分たちとは反対側の立場を無視・排除する傾向が強化され、極端な意見が幅を効かせる、ポピュリズム的事態を招いてしまうという危険がある。こうしてインターネット上には、極端化し閉鎖化してしまったグループ(「エンクレーブ ecvlave(「飛び地」の意)」と呼ぶ)が無数に散らばる、きわめて流動的で不安定な状態となってしまう可能性がある。[後略]

 

もっと詳しい説明

サンスティンは、集団分極化の現象は、社会的カスケードと呼ばれる現象と密接に関係しているという。
私たちは、通常、生活や政治、環境、法、経済などあらゆる情報について、本当に確かな情報を持ち合わせていないことが圧倒的に多い。例えば、地球環境問題は本当に深刻か?といった事柄に正確な答えを出せる市民はいない。
情報の不確実性を補うのは他者の言論や行動である。
 
サンスティンは、前掲書第三章において、次のような事例を挙げている。

ジョアンは有害廃棄物のごみ捨て場を怖がって当然と考えれば、カールも、逆が真理であるとの独自の情報がなければ、結局同じように考えるだろう。ジョアン、メリー、そしてカールが有害廃棄物のごみ捨て場は危険だと信じれば、ドンが三人の結論に異議を唱えるには相当の自信がなければならない。そしてジョアン、メリー、カール、ドンがこの問題で団結すれば、他の人たちが後を追う可能性が出て来る。

 
サンスティンはこの事例を以下のように解説する。

この例は、情報がたとえ完全に誤っていても、どのように伝播して受け入れられるかを示すものだ。

 
このようなカスケード(段階的伝達)の出現確率は、インターネットという情報技術においては格段に高まる。
誤った情報にもとづいて延々と議論を重ねたり、存在しないウイルスにおびえたりする人が出て来る。
 
インターネットの特徴は、このようなカスケード(雪だるま効果)によってニセの情報をばら撒くことができる一方、偽善を暴くことも出来るところにある。
 
しかし、カスケード的なインセンティブによって、不確実性をもつ情報が多くのひとに伝達されれば、恐怖や誤解、混乱の元凶となり、熟慮民主主義の目標を脅かすことになる。
 
このように、情報の信頼性そのものが毀損する状況においては、これに対する矯正策をインターネットに求めても効果がない可能性が高いとC・サンスティンは論じている。

インターネットは民主主義の敵か

インターネットは民主主義の敵か

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