フランス・スピリチュアリスムのこと。英語読みだとスピリチュアリズム。
簡にして要を得た定義が、増永洋三氏によって与えられている。
「「スピリチュアリスム」とは、人間的経験を、その根本において精神的なる経験として捉え、「精神性」の最も純粋なる本質を解明することを目指す哲学的立場である」(増永洋三, 『フランス・スピリチュアリスムの哲学』, 創文社, 1984, p. i)
あまりに多彩な人物が関与しているため、それらを貫徹する一つの定義を与える事は困難であるが、メーヌ・ド・ビランの影響下に生じた思想と解しておく点に於いては、諸説共通するところのものである。この思想運動には、ビランをはじめ、ラヴェソン、ラシュリエ、ベルクソン、ブロンデル、リクールらが関わっているが、彼らの中には自身がスピリチュアリストであることを否定するものもいた。それはビランの功績が、クーザンの影響で、正当に評価されなかった事に一因があるといわれている。詳細は岩田文昭『フランス・スピリチュアリスムの宗教哲学』(創文社)に詳しい。同書によるとその単語の起源は、以下のようであるという。
「ブロンデルの指摘によれば、スピリチュアリスムという単語そのものは十七世紀の神学者のテキストに登場する。しかしそこでは否定的な意味で用いられているに過ぎない。……(中略)……しかし十八世紀の後半には、スピリチュアリスムの後半には、スピリチュアリスムが形而上学の実体に関わる言葉として、「唯物論」(materialisme)と対比される仕方で用いられるようになった指摘である。」
余談ではあるが、スピリチュアリズムという呼び方をした場合、唯心論から超越的唯心論、すなわち心霊科学などを指す場合がある。前掲著によると、フランス・スピリチュアリストの中にも、こうした思想的背景を持つものがいたという。