その年の終わりには、常磐の里にて故・飛鳥井の女君のための供養を行った。かの女君への真心を、どれほど尽くしても尽くし足りないくらいの想いで盛大に執り行う。経巻や仏像の装飾はもちろんのこと、講師には比叡山延暦寺の首座の僧を招き、当日の法会に招かれた僧は六十数人におよぶ。堂々たる供養を見る人々は、「このような立派な供養をされる女君とは、さぞかしすばらしいお方だったに違いない」「若くしてお亡くなりになられたそうな。あれほどご立派な公達が人目もはばからずお泣きになるなんて」「惜しいお命でございましたのね」などささやきあっていた。法会も無事に終わり、居合わせた人々が退出してしまった後も狭衣はこの常磐にとど…