渡辺啓助『密林の医師』盛林堂ミステリアス文庫を読了。 昭和19年に春陽文庫として刊行された本の再刊だが、そのオリジナルは戦地の慰問用として刊行され、ほとんどが海外の戦地に送られたため、国内にはほとんど残っていないのだという。ほとんど残っていないどころか、現時点で確認されているのは日下三蔵氏が所蔵する1冊だけであるようだ。 収録されている作品は表題作以下「異境冒険小説 陸鰐島の囚人」「ジャガタラお春」「ビルマの桜吹雪」「冒険小説 チベットの雪豹」「伝記小説 無装荷松前」「沙漠のヨシツネ」「砂底の聖火」の8編。いずれも、東南アジアなどの海外を舞台とした作品で、香山滋の秘境冒険小説に通じる魅力ある作…